90話 告白
「お隣さんで面識はあったけど、でも、同じアニメを見ていることは知ってたからどんな人なのかなとずっと思ってた。そしたら予想以上にオタクでビックリしたな〜〜」
「ハハハ、まあオタク歴は長いっすからね」
「それに思っていた以上に優しくて、それでいて誠実で、何より……笑った顔が"なっくん"にすごく似ていた……」
「え……」
そんな似ているのか。
そこまで言われると見てみたいな。
あと俺は誠実ではなくチキンなだけだ。
「だからかな。初めて会ったあの日から毎日、神原くんのことをいつも考えていた……いつも何をしているんだろう。他にどんなアニメを見ているんだろう。何が好きなんだろう……って。それを考えている時だけ、私は自分自身の後悔を忘れられたの」
なんか照れるな……。
「それで色々考えている時にまた渋谷で出会ってさ。あの時は驚いたな……まさか神原くん、あんなモテモテだなんて」
「それは俺が一番ビックリしてます」
「だけど、神原くんあの時、誰も選ばず逃げ出したよね。その時、私ちょっとホッとしたんだよ」
「ホッツ??」
な、何で……?
「あの後、どうしても理由を聞きたくて神原くんの家に行ったの。そして、あんな理由を聞いて驚いたなーー」
ギャルゲーに没頭して3次元がどうでもよかなったことか。
我ながら気持ち悪いエピソードだ。
にしても、今更こんな話をして一体俺に何を伝えたいのだろう。
姫咲さんの意図が読めない……一体彼女は何が目的なんだ……。
「だけど、それでも私といる時はドキドキしている……って言ってくれて嬉しかったな……」
「え、え……?」
姫咲さんが少しずつ距離を縮めてきている。
「そこから酔っ払って私の弟として振る舞っていたよね。最初は確かになっくんみたいに接していたけど、でも酔いが覚めて一緒に寝ている時……私はもう君をなっくんの代わりとして見れなくなっていたの……」
「え……?」
「弟というより……異性として君を見ていた……だからものすごくドキドキしたの……」
「ど、ドキドキ!?」
「うん……今思えば初めて会った時から私は君のことを意識していた。話があって、それでいて面白くて、そして……なっくんと同じくらい優しくて、私が傷つかないようにしてくれている。今回の旅行だって誘ってくれた時、すっごく嬉しかったんだよ……」
「姫咲さん……」
「那奈……って呼んで欲しい……」
「ウェイっ!?」
「ダメ……かな?」
急な姫咲さんの要望に俺は固まった。
ここまで積極的な姫咲さんを前に正直俺の心拍数は上昇していた。
「えと、"那奈"さん……」
口にした時めちゃくちゃ"ドキのムネムネ"が止まらなかった。
な、何なんだよこのもにゅっとした気持ち。
昼間の時も思ったが、姫咲さん……いや、那奈さんを見ると心が締め付けられる……うう、一体何なんだ!!
俺が名前を呼ぶと那奈さんは照れたように顔を赤くした。
「ねぇ、神原くん……私、家族以外でこんなに気にかけてくれた人初めてだったんだよ……」
「は、はい」
「そんな君に私の気持ちを伝えるね……」
那奈さんは真っ直ぐと澄んだ瞳を俺に向けた。
また心がドキッとする。
もしかして、俺は……俺は……!
自分の気持ちを見つける前に那奈さんが告げた……。
「好きだよ……神原くん」
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