87話 2000日後のオタクへ
目覚ましのアラームが聞こえて目が覚めた。
「ん、んーー」
知っているような知らない部屋が広がる。
あれ? ここは?
俺の部屋とは信じられないくらい、綺麗に整頓されていて、フィギュアもタペストリーもない。
あ、でもユリユリ系のグッズはあるな。
しかし、オタク文化のものが全然ない。その代わりに洒落たインテリア雑貨が置かれている。
こうまで自分の部屋とは違うのに、なぜだろう。
これは"俺の部屋"だと脳が認識している。
「うーん」
疑問に思いながらも俺は当たり前のようにスマホのアラームをきり起き上がった。
「ひとまず朝ごはん食べなきゃ」
そう言い、部屋を出ようとしたその時!
ガチャと扉が開き、小さな女の子が現れた。
「へ……?」
ボーと女の子を見ていると、
「パパーー!」
「グフッ!」
いきなり女の子が突進してきた。
「いてぇ……ん? パパ!?」
待て待て待て待て待て待て!!
パパ? パパだと!! まさかこの子、俺の娘?
………………という設定の夢か。
そうか。これは夢なんだ。
童貞の俺に子供がいるわけがない。
うんうん。夢だ夢だ。
しかし、夢にしては妙に鮮明で、それでいて意識がはっきりしている。
本当に夢か?
「パパ?」
頭を抱えて考えていると女の子が俺を見つめる。
白い肌に透き通った瞳。
はっきりと顔を見るとこの子、めちゃくちゃ可愛いな。とてつもなく元気だし。
ロリコンではないが、すげぇーかわいいと思う。服とか色々買ってあげたい。
それに着ているパジャマのセンスもいい。
うさぎの着ぐるみで最高にかわええ! 最近のJKのパジャマみたいだ。
あと抱っことかしたい。
ロリコンではないが。
そう思い俺は娘(暫定)を抱き抱えた。
「ほれぇーーー」
「うわーー!」
やっぱり喜んでくれたみたいだ。
この子は高い高いとか好きだからな。
……あれ? どうして俺そんなこと知っているんだっけ?
「あ、そうだ! パパ、ママがあさごはんできたって!」
「ママ!?」
「ん? ママがどうしたの?」
「あ、いや」
そりゃあそうだよな。娘がいるってことは母親もいるよな。
しかし、母親ってだれだろう。
俺からしたら嫁か。
うわーー! めちゃくちゃ気になるな〜〜。
小学生の時とかめちゃくちゃ知りたかったな。
将来自分の結婚する人。
まあ、歳を重ねるたびに結婚は無理だと諦めて夢を見なくなったけど。
「はやくいこ!」
「あ、ああ」
娘に手を引っ張られ部屋を出る。
すると、小綺麗なリビングキッチンが広がっていた。
どうやらマンションに住んでいるらしい。
俺、出世でもしたのかな。
「ママ! パパおこしてきたよ!」
「ありがとう……」
娘がキッチンに立つ妻に声をかける。
とうとう、俺の奥さんが明らかになる!
一体どんな人なんだろう。
俺もキッチンの方へ足を運んだ。
「お、おはよう」
緊張しながら後ろ姿の妻に声をかける。
そして、
「"あなた"おはよう——」
そう言い振り向いた……。
一体誰なんだ……。
俺は一体……誰と……。
—————————
——————
———
「——くん!」
「——くん」
「——ちゃん!」
「——くん……」
「——輩!」
声が聞こえた。
「ん……んーー」
再び目を醒めるとそこには今にも泣きそうな5人の女性がいた。
「あ、あれ?」
「あ! ゆうくん!!」
「先輩! 大丈夫ですか!?」
「え……あ?」
息がしづらくてうまくしゃべれない。
「私、お医者さん呼んでくる……」
「よかった……ゆーくん」
「せ、先輩……お、俺は……」
「ゆうちゃん!!」
「うぐっデジャヴ!!」
香乃に思いっきり抱きつかれる。
「ありがとう……ありがとう」
泣きながら香乃は言った。
「お前は無事か?」
「うん」
よかった。
あ、そういえば俺香乃を助けようと思って溺れたのか。
そんでライフセイバーの人に助けられてこの海の家の医務室まで運ばれた……らしい。
やれやれ、助けに行って溺れるなんて情け無いな。
にしても……さっきの夢は何だったのだろう。
本当に夢だったのかな。
もしかしたら俺の本当の未来……?
「なんてな」
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