74話 ドキがムネムネ


 ホテルの人に通報されそうになったが、西園寺さん達が俺の連れだと言ってくれたおかげで事なきを得た。

 しかし……。


「もぉ〜〜いくら私達が魅力的だからって覗きはダメだよ、ゆうくん」


「そうだよ! 見たかったら素直に言えばいいのに!」


「はっきり言って最低ですね……」


「神原くん、覗きはちょっと……」


 なんか覗きをしたことになってしまった。

 ここは我慢だ。

 変に弁解しようとするとさらに墓穴を掘るような気がするし。


「ふふ。まあまあ、ここは多めに見てあげよう。別に減るモンじゃないんだし」


 と朱音先輩がみんなを宥める。

 元はと言えばあなたのせいで俺はこうなったというのに。

 ったく……。


 ひとまずこの件は終わった。


「それじゃあ……明日は10時にロビー集合で……ホテルの朝食、9時までだからそれまでに食べていてね」


「わかりました!」


「それじゃあ皆さん、おやすみなさい」


「ゆうくんは朱音さんに変なことしないでね」


「しないよ! 俺を誰だと思っているんだよ」


「まあ、する度胸ないか」


「「「確かに」」」


 西園寺さんの言葉に朱音先輩以外が頷く。

 確かにそうだけども……!!


「それじゃあ、みんな、おやすみ」


 各々部屋に戻っていった。

 そして、俺と朱音先輩も。


「はぁーー」


 部屋に戻ってすぐ俺はベッドに倒れた。

 飯を食べた後、歯も磨いたしあとはもう寝るだけ。

 今日は最後まで色々あって疲れた。

 朱音先輩と話したいこともあるが、また明日も明後日もあるし、今日はもう寝よう。


「すいません、もう疲れたんで俺寝ますね。テレビとか電気はつけたままでいいんで……」


「いや、もう私も寝ようと思っているから……電気消すね」


「え、あ、はい」


 まあ、朱音先輩も色々あって疲れたか。

 

「そうですか、それならおやすみな———え?」


 目を閉じようと思った瞬間、朱音先輩が俺のベッドに入ってきた。


 おいおいおいおいおい。

 どういうことだよ……。


「先輩のベッドは隣ですよ」


「知ってる」


「これは俺のベッドです」


「いや、これはホテルのベッドだよ」


「いや、そういうことではなくて、どうして先輩が俺が寝てるベッドに入ってきているんですか?」


「眠いから?」


「だったら隣の空いているベッドに行ってください」


「こっちの方があったかいからさ。ダメ?」


「ダメです」


「なんで?」


「なんでもです」


「具体的にお願い」


「モラル的に……」


「どうしてモラル的にダメなの?」


「いや、付き合ってもない男女が同じベッドに寝てるのは流石にダメでしょ」


「どうして?」


「どうしてってそれは……もうとにかくダメなものはダメです!」


「理由が納得できないから、拒否するね」


「ぐぬぬ……」


 一体先輩は何を考えているんだよ……!!

 眠気が一気に消えてしまった。


 と、とにかく平常心だ。

 一昔前の俺だったら動揺していたが、今は色々経験してこういうことに慣れた。童貞だけど。


 先輩に説得は難しい。

 ここは無の意識を持って乗り切ろう。


 先輩に背を向けて俺は再び眠りにつこうとした。


 しかし……。


 ぎゅっ


 な、な、何ぃぃぃぃ!

 朱音先輩が後ろから俺に抱きついてきているぅぅぅぅぅ!!

 正気の沙汰じゃあ〜〜ない!

 

 朱音先輩、一体何を考えてているんだ……!


「せ、先輩……これはどういう?」


「ふふ。どういうことでしょう〜〜」


 さらに強く抱きしめる。

 やばい、背中越しでも朱音先輩の胸の感触がわかる。

 それとさっき温泉に入っていたからか、すごくいい匂いがする。

 色々とやばい……!


「こ、これは流石に度が過ぎてますよ」


「そうかな? ならもっと度を超えたことをする?」


「え……?」


 それってどういうことなのか、聞こうと振り返った瞬間———。


「ん……」


「ん!!」


 唇を奪われた……。

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