62話 旅先でやるゲームは普段やるよりも一段と楽しい


 男女女女女女の熱海旅行が始まった。

 

 まずは熱海駅からバスとめちゃくちゃ短いロープウェイに乗り、熱海城に来た。


「城だーーー!」


 年甲斐もなくはしゃぐ香乃。しかし、こういうテンション高い奴が一人でもいる旅行はなんやかんや楽しい。

 

「みんな、城の中に足湯あるよ。すごいね」


「うん、そうだねエレナちゃん……最後に入ろうかみんなで……」


「あ、それ私も賛成です」


 星川が賛同する。

 また入るのかよ。

 心の中でツッコみ、城の最上階まで登った。


「うわーーーー景色がすごーーい」


 語彙力のない感想を漏らす香乃。相変わらず、すごーいときれーいしか言葉がないな。

 

「潮風が気持ちいい……晴れててよかったーー」


 そう言い長い髪を靡かせる姫咲さん。その立ち姿に思わず、


「萌」


 感情をこぼした。

 俺も香乃と変わらないな。

 にしても……。

 

「ここから、落ちたら死ぬかな〜〜」


「海に落ちればワンチャン助かるかもしれません」


「いやでも、海に落ちても波に攫われたらおしまいじゃない? そもそも海でも落ちた衝撃半端なさそう」


「確かにそうですね……」


 景色ではなく下を見て話す西園寺さんと星川。

 いるよな。高い所来たらこういう会話する奴。気持ちはわからなくもないが、モデルと本屋のアイドルがする会話じゃねぇーよ。


「海がきれいだね。ゆーくん」


「え、あ、そうっすね」


 隣にいた朱音先輩がひょっと話しかけてきて、びくついてしまった。


「まさか、こうしてまたゆーくんと遊べるなんて思わなかったよ」


「そう……っすね」


 今こうして朱音先輩といるのが夢に思える。それもこのメンツと共に。


 いや、夢というより……なんかこう因縁めいたことすら感じる。


 恐らくこれは偶然ではないんだ……。


「朱音先輩は京也に誘われてきたんですよね? 俺がいるってこと知らされてましたか?」


「うん、それはもちろん」


「じゃあ……じゃあどうして俺がいるのに参加したんですか?」


 聞いた直後に後悔が押し寄せる。

 なかなか情けない問いかけだ。

 それを聞いたところで何になる?

 しかし、それでも俺は知りたかった。

 今の先輩は俺のことをどう思っているのか……。


「うーん」


 首を傾げて考える朱音先輩。

 数秒悩んだ後、お得意の笑顔を浮かべて答える。


「ひ・み・つ」


「えぇ?」


 口に指を添えて言った。


「秘密ってどういう———ん」


 今度はその指で俺の口を閉じさせた。


「そんなことよりも、旅行を楽しもう〜〜ね?」


「朱音先輩……」


「神原くんと霧宮さん、そろそろ行くよ」


「あ、はーい」


 そう言い、姫咲さん達の方へ行ってしまった。


 うまくはぐらかされた。まあでも旅行は長い、気長に先輩の思惑を探るか。


 その後も俺たちは熱海城の観光を続けた。


「城の中にゲーセンあるってすげぇーな……」


「あ、太鼓の達人あるよ! ゆうちゃんやらない?」


「ああいいぜ! 負けたらジュース奢りな、もちろん、鬼でさいたま2000で!」


 香乃のやつ、マイナーな音ゲーでは勝てないと思い俺がやらなさそうなメジャーなゲームで勝負を仕掛けてきまな。バカめ。俺は本当の太鼓の達人なんだよ。

 格の違いを見せてやる!


 しかし、負けた。


「やったーー! フルコンボ!! 」


「粉バナナァァァ(こんなバカな)」




「あ、"イニシャルC"ある……」


「那奈さん知ってるんですか?」


「うん……少し……」


「それなら私達も勝負しません? 負けたら同じくジュース奢るって感じで」


「え、でも……」


「いいからいいから、ほらほら〜(ふふ。上手い感じで勝負にもっていった。これでも私は"イニシャルC"でゲーセンランキングトップを取ったことがある実力者! 那奈さんに負けるわけがない!)」


 5分後


「あ、勝っちゃった……」


「嘘ーーーーー!」


 星川は圧倒的実力差を見せられて大敗していた。


「ど、どうして……まさか那奈さん! このゲームやりこんでいた?」


「10代で極めた……!」


「がくっ……」



 その後、城の前で行っていた猿回しを見る。


「お猿さん、すごいね」


「はい、ゆうくんも頑張ればできるかな」


「どうだろう、ゆーくん意外と不器用だからな。お猿さんのようにうまく竹馬とかできないと思う」


「ゆうくんにはまだ早いか……あ、でもゆうくん、猿さんより、優れていることが一つあるんです」


「え、なになに?」


「性欲です。家にものすごくエッチな本とかDVDがあるんですよ。それに1人用の道具とか色々」


「大学の頃からそうだったよ。お猿さんより一人遊びは上手いみたいだね」


「猿の話からなんで俺の性事情になるんだよ。あと俺も動物とかと同じ括りで会話進めるのやめてもらっていいすか?」


 その後もトリックアート展では。


「うわ、すげぇー」


「すごいね」


「すごーい!」


「す、すごい……」


「すごいです」


「すごい」


 すごいという単語を発しながらめちゃくちゃ写真を撮った。


「いやー色々あって楽しかったね。那奈さん、次はどこに行きますか?」


「えと、待ってねエレナちゃん。次は……」


「なあ、みんな! ここを離れる前に寄りたい所があるんだが!」


 次の目的地を決める皆に俺は呼びかけた。


「え、どこか行きたい所あるのゆうちゃん」


「ああ、ロープウェイ乗り場あったろ。あそこに寄りたい」


「ロープウェイ乗り場……もしや……」


 星川が勘づいた。


「ああ! みんな! 秘宝館行こうぜ!!」

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