59話 旅先で知っている人に会うとなんか気まずい

「うわーー着いたね!」


 熱海!!!!!


 とうとう始まってしまった2泊3日の熱海旅行。俺以外全員女性といういかにも俺得な旅行なのだが。


 実際の俺の気持ちは———。


「海はどこかな! どこかな! 私熱海初めてだからめちゃくちゃ楽しみ!」


「ちょ、ちょっとテンション高すぎだよ……香乃ちゃん。あ、足湯、足湯……」


「あ、ほんとだー!! 入りましょうよーー那奈さん!」


「うん……」


 香乃に連れられ、姫咲さんは駅前の足湯へ行った。


「あ、あのエレナさん……」


「ん、どうしたの? 湊ちゃん?」


「駅前で写真撮りませんか?」


「いいよー!」


「やったーー! 友達に自慢できる! あ、先輩それじゃあ撮って下さい」


「あ、ああ」


 写真加工アプリが表示されたスマホを渡される。

 これ、備え付きのカメラアプリと何が違うんだよ。


 そう思いながら駅をバッグに二人を何枚か撮った。

 すると、


「先輩、写真撮るの下手すぎでしょ! ピント全然あってないし! 全然盛れてない!! もういいです! 自撮りしますから!!」


 怒りながらスマホを取った。

 なら最初から撮らせるなよ……。


 みんな妙にテンション高いなーー。

 女性って旅行好きだもんな。そう言えば修学旅行の時もこういう風に馬鹿みたいにはしゃいだり無駄に写真撮ってる女子いたな……。


「はぁ……」


 帰りたい……。


 その一言に尽きていた。


「楽しい旅行が始まったばかりに溜息つくなんてどうしたの?」


 星川に開放された西園寺さんが問いかける。


「別に……よくもまあみんなあんだけはしゃげるなと思っただけ」


「一番はしゃいでいるのはゆうくんじゃないの?」


「は?」


「だって、美女数人と2泊3日も共にできるんだよ? 男性からしてみたら羨ましこと山の如しじゃない?」


「そいつはどうかな……」


 まあ確かに普通の男性からしたらその通りだと思う。しかし、それはあくまで表面だけで判断した場合に尽きる。

 実際、女性5.男性1のグループを想像して欲しい。気まずいし、周りからもなんか変な目で見られる。これが純粋に恋愛感情なしのグループならいいが、内の4名は俺に対し特別な感情を抱いているし、いろいろもうしちゃってる(デート、キス、朝チュン)。新宿の時のようにギスギスしないか不安だぜ……。

 バッグれるという選択肢もあったが、後が怖かったしこうして来てみたが、楽しい旅行になるのだろうが……。


「あ、そう言えば、ゆうくん。私達の他にもう一人旅行に参加する人がいるって言ってたけどその人はどうしたの?」


「あーー"AKIRI"さんね。あの人電車じゃなくてバイクで行くって言ってたから現地で待ち合わせしてるんだよ」

 

 彼女のLINEの名前がAKIRIだったからそう呼んでいる。それにしても"あきり"って変わった名前だ。本名なのかな。


「ふーん。ゆうくんの知り合いなの?」


「いや全然知らない。なんで?」


「いや、京也くん達来ないのに、それでも来るなんてすごいなと思って」


「温泉が好きなんだろ。それに京也曰く、誰とでも打ち解けられる人らしい。まあそういうことだから仲良くしてあげろよ」


「わかってるよ。ゆうくんもいつも私達にしている気持ち悪い発言や行動は抑えるようにね」


 そう言い、西園寺さんも、足湯の方へ向かった。


 俺っていつも西園寺さん達に気持ち悪いこと言っているのか……。


 少し凹んでいるとAKIRIさんからLINEが入る。


『すいません、駅着いたのですが、どこにいますか? ちなみに私は駅前の平和通りの入り口にいます』


 もう駅着いてたのか。


『わかりました。出迎えに行きますので待っててください』


 そうLINEを返した。


「みんな、ちょっとAKIRIさん出迎えに行くからここで待ってて」


 と言ったが、みんな足湯に浸かりながら雑談に花を咲かしていて、俺の言葉を聞いていないようだった。


 あいつらマジかよ……。


 怒りと悲しみを宿しながらも俺は駅前のすぐ近くある平和通りへ向かった。 




 やば、AKIRIさんがどういう人なのか聞くの忘れてた。

 平和通り観光客が多いから見分けがつかないぞ


『ちなみにどういう服装ですか?』

 

 LINEをし、辺りを見渡した瞬間———。


「え…………」


 俺は言葉を失った。


 その俺の視線の先には、


『えと、服装は真っ白なワンピース。髪型はハーフアップで、それで———』


 AKIRAが好きな女性がいた。


「まさか、"AKIRI"って"朱音先輩"のことだったんですか……!!」


「ふふ、久しぶりだね……」


"ゆーくん"

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