58話 旅行前に牡蠣は絶対食うな
京也の提案で来月、2泊3日の熱海旅行に行くことになった。
メンバーは俺、京也、西園寺さん、香乃、さらに京也の知り合いの男女2名だ。
このメンツについて京也に言及すると、
「いやー今回はただの旅行じゃない。カップル誕生のための旅行だ! 俺はもちろん西園寺さんと! 俺の男友達は春野さんと! 春野さんの話したらぜひ、紹介してほしいなと言われてな、いいだろ?」
「別にいいが……」
これは自信とかではないが、西園寺さんも香乃も、君達2人とくっつかない気がする。
既に負け戦くさいな、この旅行。
「そしてお前は———」
「おいおい、なんで俺もその"人類リア充化計画"に組み込まれているんだよ」
「は? お前言ってたやん。2人を諦めさせるため彼女欲しいって」
「あーー」
そういえばそんなこと言っていたな。
「だからさ、お前にピッタリな人を今回呼んだ、会ったら驚くぞ」
「へ、へー」
…………………
てな感じな魂胆があり、旅行の計画を立てていた京也。ノリノリでLINEグループまで作って"毎日旅行楽しみだね"と言っていた彼だったが、その旅行の数日前……悲劇が……。
「わ、悪い……由、牡蠣にあたった……うう」
と京也から悲痛な連絡が来た。
「まじかよ」
「あ、ああ。一緒に旅行に行く田辺と昨日牡蠣バーに行ってな。それで思わず生牡蠣を爆食いして……うう! 今ちょっと入院してんだ……田辺も……」
電話越しだが、近くにいる田辺さんの苦しむ声も聞こえた。まあ牡蠣は美味しいもんな。気持ちはわかるが、あれは言わば制約と誓約。美味しいけどリスクが高すぎる。
あれ、ちょっと待て
「それじゃあお前旅行どうすんだよ!」
「悪い、俺と田辺はリタイアだ……チケットはもう一人の子に託したから……癪だがお前は熱海旅行を漫喫するといい」
「待て待て! お前と田辺さん行かなくなったらチケット2枚余るじゃん! どうすんの?」
「お前が……あと二人誘えばいいじゃん……」
「いや、そんな相手いねぇーよ。それにそのお前の女友達も一人で可哀想だろ!」
「その辺は大丈夫……ううっ! もう腹が限界だから……切るぞ」
そう言い京也は電話を切った。
「まじかよ……」
旅行に行く前からトラブル発生してんじゃん。
どうしよう……あと二人……あと二人
大学の友人、職場の人……いやいやだめだ、だめだ。誘えるほど仲が良いやつはいない。高校の友達はみんな地元だしな……それに連絡もとってないからいきなり旅行はリスクが高い。
あれ……俺ってひょっとして友達少ない?
変なところで嫌な部分に気付いてしまった。
しかし、参ったな……。
「あ!」
一人は思いついた……思いついたのだが……。
…………………
「いいですよ。私、その日空いているので」
仕事中、星川がいきなり話しかけてきた。
「おい、俺まだ何も言ってないぞ」
「友達と熱海行く予定がその友達が来れなくなってチケット余っているんですよね? いいですよ、仕方ないので私が代わりに行ってあげます」
「何でお前が知ってんだよ……ニュータイプか?」
「休憩中、先輩が電話していたの聞きました」
それにしても何で細かな内容まで知ってんだよ……。
しかし、どうしたものか。新宿の一件からこいつは特に変わった様子を見せない。それが逆に怖かった。
"私は先輩のことが好きです"
あの告白はやっぱり嘘だったのか。
「どうしたんですか?」
「い、いや別に」
でも、まあこの前の件は流石に俺が悪かったし、その謝罪もしたいからいい機会か。
「わかった、ならよろしく頼むわ」
「はい、先輩」
少し嬉しそうな感じで星川が頷く。
やはりこいつ、まだ俺のこと……。
「あ、もちろん旅費は全部先輩もちですよね!」
「なんやて!?」
「タダで熱海旅行なんて、私ついてる〜〜!」
それが狙いだったか……。
とまあ、星川を誘ってチケット1枚は消費できたが、もう一枚はどうしよう。
仕事が終わり、家に帰りながら考えていると、
「あ……」
「あ……」
アパートの前で偶然、姫咲さんとばったり出会した。
「「…………」」
新宿の一件の後、ろくに連絡とってなかったから気まずい。
「あ、えーーと……」
「ご、ごめんなさい……」
逃げるように立ち去る姫咲さん。
そんな彼女を俺は、
「ちょ、ちょっと待って!」
呼び止めた。
このままギクシャクしたままは嫌だったから。
しかし、この後どうしよう。なんて言えば彼女と仲直りできる……?
あ……!!
「えと……突然ですけど、来週、熱海行きませんか?」
「え……?」
驚く姫咲さん。
それは当然か、流石に急すぎた。
しかし。
「うん……いいよ……」
そう一言姫咲さんは答えた。
「あ、ありがとうございます!!!」
俺は思いっきり頭を下げた。
よし、これでメンバーは決まったな。
西園寺さん、香乃、星川、姫咲さんに謎の女性Xそして俺……。
……おいちょっと待てこれ……!!
「男俺一人じゃねぇーかぁぁぁぁぁ!!!」
こうしてハーレム旅行が始まろうとしていた!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます