無限熱海編
57話 夢の話って自分でする分にはいいけど逆に他人の夢の話は聞くとクソほどつまらない
夢を見た。
よくある過去の出来事の夢だ。
俺が大学生だった頃の夢———。
大学の図書館で本を読んでいる。
そうだそうだ、俺は授業と授業の空き時間に図書館に行って本を読んでいたんだ。
大学の図書館というのはすごくて多種多様の分野の書籍が置かれていて、よく利用してたな。特にこの時、俺がハマって読んでいたのは、そう……SF作品の金字塔……。
"AKIRA"だった。
懐かしいな。堅苦しい文献や有名な小説が置かれているすぐ隣に置いてあったんだよな。
大学の先生のオススメコーナーって感じで置かれていた気がする。
何にせよ、その先生には頭が上がらない。
確か、結構大きなサイズでそれが目に入って読みはじめたんだ…懐かしいぜ。
でも毎週一巻ずつしか読まなかった。
確か、続きを読もうと思っても次巻が別の奴に読まれていて読めなかったんだよな。
だから図書館に寄る火曜日をこの時は毎週楽しみにしていた。
だがそんなある日、五巻読み終えた瞬間、俺はモーレツに続きが気になった。
来週なんて待ってられない、早く最終巻が読みたい! そんな気持ちが溢れていた。
買えばいいじゃんと人は言うが、AKIRAは今でこそ流通しているが当時は再版が少なく近くの書店でも置いていなかった。
どうすれば……。
その時に頭に思ったのは俺より先にAKIRAを借りて読んでいた奴の存在。
そいつに出会うことができればAKIRAのラストを拝める。
そう思い、図書館にいるAKIRAの読者を探した。
AKIRAは外出し厳禁だったからきっと俺と同じ時間にAKIRAを読んでいる奴がいるはず!! さあ出てこい! サブカル男子! もしくは女子!!
そして……見つけた……。
図書館の窓際で一人黄昏ながらAKIRAを読む……真っ黒で綺麗なお嬢様結びの……綺麗な女性を———。
「あ……あの……」
……………………………
……………………
……………
………
…
「やめろォォォォォォォォォォ!!」
そう言って勢いよく起き上がった。
「うるせぇぇぇーー!」
隣に住むオヤジに怒られたが頭に入らなかった。
どうして……今更……"あの人"のことを……。
……………
嫌なことを思い出してしまった。
スマホを確認するともうすでに昼の12時。
休みとはいえど寝すぎたな。
ん? なんか京也から電話きてる。なんだろう。
京也に電話をかけると3コールで出た。
「何だよ、京也」
『おい! ゆう! ようやく起きたか、お前そういえば来月、三日間休みもらったって言ってたよな』
「ああ、よく覚えているな。珍しく三連休もらったから積みゲーと積みプラ消費しようと思っている」
『そんな冴えないことするよりも、旅行行かないか?』
「旅行?」
嫌な予感がした。
『職場で熱海のペア宿泊券、3組もらったんだよ。行こうぜ!』
「2人じゃないのかよ!」
『なんでおめぇーと2人きりで旅行行かなきゃならはいんだよ!』
「え? じゃあ誰と……」
3組って6人か……まさか……。
『俺と友達の男女2人! そして、西園寺さんと春野さん!! お前をダシにして誘ってある。だから来い』
「おい待て待て! 嫌だぞ俺! みんなで旅行なんて!」
『じゃあ、来週空けといてくれよ、ばーい』
「おい!!」
電話が切れた。
まじかよ……。
みんなで旅行なんて……嫌な予感しかしないんだが……。
ということで熱海へ三日間旅行に行くことになった。
ラブコメによくある展開に俺はため息をこぼした。
「面倒なことがなければいいけど」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます