45話 わたしの恋心

 はじめの彼の印象は、自己紹介で変なこと言って滑った痛い奴だった。

 

 いるのよね。

 合コンで受けを取ろうと必死で空回っちゃうタイプの男。

 そういう奴に限って妙にカッコつけようとして面倒くさい絡みをしてくるのよね。

 だけどパッとしない見た目と雰囲気を見るにあまり合コンにはいかない感じなのかな?

 

 どこか元彼と似ていたことから、私はこの時点で少しだけ、彼のことが気になり横目で様子を見ていた。


『あ、あと俺も少女漫画ではないけどレディコミとか見たりする。あれ地味にエロくて度肝抜かれることあるんだよね。でもエロというよりもストーリー性とかが重視されてて面白いやつは面白い』


 女性と話す彼を見ていて、私は思った。 

 この人……。


『清楚系ビッチってのは一見清楚に見えるけど実は淫乱な女性のことだな』


 自分取り繕ってない。

 自分をよく見せようと思ってないんだ。

 嘘がつけないタイプ……。


 彼の変な話についていけずみんな彼から距離を置く。

 それでも彼は動こうとしない。

 なんで……?


「ねぇ」


 ちょうど私の隣に彼の友達がいたから聞いてみた。


「彼って———」


「ああ、神原すか。あいつ面白いでしょ? あいつ今まで彼女がいたことないので無理矢理連れてきたんですよ。いい出会いがあるかもって。まああれでも俺の"ダチ"なんでね。ほっとけないんすよ」


 カッコつけながら言う。

 それはどうでもいい。

 ってことは彼は恋愛に興味はないの? 

 現に参加している男性で唯一、モデルである私に話しかけてきていない……。

 私に興味がないってこと……?


 またしばらく様子を見ていると、彼がひっそりと店を出て行った。


 まさか帰るの?

 そのまま?


 私に興味を持たなかったことでさらに彼に興味を抱いた。


 もしかしたら、彼ならきっと———。

 

 私もトイレに行くフリをして店を飛び出した。


〜〜〜〜


「私、君に興味持っちゃった」


 公園のベンチで座る彼に言った。

 本心だったけど、今思うと彼を試すための口説き文句だった。


 そこからさらにお酒に酔った彼を家に招き、彼の本性を見ようとした。


 こんな彼も元彼のように私の体目当てなのかなと思って。


 でも、彼は全然そんな気はなく、むしろ状況に流されず、自分を貫いていた。


『できれば本心を聞かせて欲しい』


 さらに、私の本心を聞こうとした。


 それならと私は彼に抱きつき、自ら直接、彼を誘った。

 普段の自分なら到底しない行為。お酒が入っていなかったら絶対しなかった。

 そんな淫らな誘いをしても、彼は———。


『自分の童貞はもっとロマンチックに捨てたいと思っているから。こんな勢いだけで捨てたくない!』


 私を突き放した。

 その言葉を聞いて確信する。


 この人は元彼や今まで出会ってきた男の人とは違う。

 きっと、人を見た目や肩書きで判断しない人なんだって。


 この人ならきっと本当の私を見てくれる……。


 本当の私を見つけてくれる……。


 この人といれば……本当の"好き"がわかるかもしれない……!!


 だから———。


「私と"付き合って"下さい」


 その日はじめて出会った彼に告白した。


 

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