33話 新宿事変 その2

 ど、どうして……西園寺さんと香乃がここに……!! 

 まさか!!!


 位置情報のアプリか!

 クッソ! 消すの忘れていた。


 面倒くさい場に来やがって。

 それになぜかしれっと2人ともコーヒー持ってテーブルについてるし。


「一人で原宿に行くから可笑しいと思ったのよ」


「ゆうちゃん……私……」


 香乃が心配そうに俺の前に立つ。


「"パパ活"は良くないと思う!」


「は?」


 俺と星川がポカンとする。


「そうよ。てか私達というものがありながら年下の子とパパ活って……もしかしてゆうくんってロリコンなの?」


「待て待て待て!」


 勘違いが勘違いを孕んできたので、無理矢理話を止める。


「確かに、星川はパパ活するような女に見えるけども!」


「あん?」


 隣で星川が睨み付けるが俺は弁解を続けた。


「俺とこいつはそんな関係じゃない! 俺とこいつはただの———」


「ちょ、先輩!」


「痛たた!」


 耳を思いっきり引っ張られる。


「先輩の話本当だったんですね」


 耳元でコソコソと星川が言う。

 それに合わせて小声で話す。


「ああ、まあな」


「エレナともう一人の方が幼馴染みですか。本当に羨ましいこと山の如しですね」


「はは……」


「でも今がチャンスじゃないですか?」


「チャンス?」


「私達が"付き合っている"って言ってアピールするチャンスですよ」


「おお! 確かに!!」


「なーに、2人でコソコソ話してるの?」


 西園寺さんが怪しむように俺達を見る。


「い、いや、別に」


「それでゆうちゃん、その人は誰なの?」


 香乃が尋ねる。

 よ、よし!


「お、お、俺の彼女だ」


「「え!!」」


 西園寺さんと香乃の驚きの声が店内に響く。


「う、嘘でしょ……ゆうちゃん」


 震えた声で俺に尋ねる香乃。


「う、嘘じゃないよな。なあー星川」


 星川に目をやると彼女もそれに答えて、


「え、えーもちろん」


 話を合わせる。

 しかし、西園寺さんはジーと疑いの眼で俺達を見ていた。


「本当かなぁ〜〜なんか怪しいな」


 ギクッ。

 

「ゆうくん、嘘ついてない? 私達二人を遠ざけようとするために」


 こいつ鋭過ぎだろ。

 人の心読む天才か。

 しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。


「ち、ちげぇーよ! な?」


「え、ええ」


「俺達は健在なお付き合いをしている」


「そ、そうよ」


「でも、確かに! キモオタのゆうちゃんがこんな可愛い子と付き合えるわけがない! 部屋に女児アニメのポスターがあるゆうちゃんに彼女なんてできるわけないよ!」


 黙れよ。

 別にそこまで詳細に言う必要はなかっただろ。


「うわっ先輩……引くわ……」


 星川が俺に冷たい視線を送る。

 どうしてこんな所で俺にダメージが来るんだよ。


「付き合っているなら。証拠見せてよ!」


 西園寺さんが勢い良く言う。


「証拠と言われてもそんなの……」


「なら今ここで証明して見せます」


 星川が突然、隣にいた俺の顔を向けさせる。


「え、なに?」


「先輩……」


 星川と見つめ合う。

 おいおいおい、まさか……。


「え、ちょ、ちょ待って!」


 西園寺さんが焦ったような声を出す。

 それでも星川は止まらず口を近づける。


「先輩、失礼します……」


 え、ちょ、え、ちょ……えーー。




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