オタクに恋は無理らしい

28話 バイキングって好きなものとかよりも元を取ろうと高そうなものいっぱい食べちゃうよね！

「それで行きたかった所ってどこだよ」

「ここです！」

　そう言い案内された場所はなんとスイーツバイキング。

「え、ここが俺とじゃないと来られなかった場所なのか？」

　別に一人でも行けそうに思えるが。

「ええ、今日だけね」

「今日だけ？」

「あれ見て」

　星川があるポスターを指差す。

　そこには"本日カップル様限定　特製高級スイーツ食べ放題実施中"と書かれていた。

「カップル限定とか、えらく挑戦的だな」

「普通だったら高級ホテルのバイキングとかでしか味わえないものばかり……このチャンス逃したくなかったんです！　さあ行きましょう」

「へいへい」

　どうして女性というものは甘いものに弱いんだろうな。

　テーブルにつき、早速スイーツを選びにいく。

　さて、せっかく来たことだし、久しぶりに甘いものでも沢山食べるか。

　お互い、別れてスイーツを取って帰ってくる。

　星川は高級スイーツばかりを選んで皿に乗せてきた。　

　一方俺は高級スイーツよりも普通のチョコケーキやイチゴのショートケーキを皿に乗せてきた。それに加えて……もう一品。

「先輩……スイーツバイキングに来て、カレーって……」

　引いた表情で星川が言う。

「いや、甘いもの中に辛いものがあったら自然と目がいくじゃん」

「だからって、スイーツバイキングにまで来て、カレーを食べるなんて勿体ないですよ」

「これだから損得感情で動く人間は……。いいか、元を取るとか取らないとかそんなことを考えて食べるよりも、食べたい時に食べたいものを食べた方が絶対幸せだろ」

　そう彼女に説きながらカレーを食う。

「でも、そんなの食べてたらすぐお腹いっぱいになりますよ」

　しかし、彼女はそんな俺を無視して目の前の高級スイーツを食べる。

「うーん。美味しい！！　やっぱり一流ホテルのスイーツだけあってすごく美味しい！！」

　俺に見せつけるように食べる。

　負けじと俺も、

「このカレー意外と美味いぞ。スイーツ店のカレーということであまり期待していなかったが、有名チェーン店"ゴゴイチ"と良い勝負するぜ。これ」

　カレーをアピールする。

「ゴクリ……」

　星川が俺のカレーをジッと見る。

「どうしたんだ？」

「いえ、別に」

　トレイを持ち、スイーツを取りにいった。

　何だったんだろう。

　まあいいや。それにしても本当に美味しいなこのカレー。

　おかわりしてこようかな。

　そんな呑気なことを思っていると星川が帰ってきた。

　そのトレイの上を見て俺は驚いた。

「お前……それ！」

「うう……」

　星川の目の前に俺が食べていたのと同じカレーが置かれていた。

「即落ち2コマかよ」

「良いでしょ、別に！　私もちょうど甘いもの意外を食べたいと思ったんですから！」

　こいつ……人が食べているものを見て食べたくなるワンパクボウズタイプの人間だったのか。

　気持ちは分からんでもないが。

「あ、確かに美味しい！！」

　一口食して星川が呟く。

「だろ！！」

「まあ、先輩が言うこともたまには間違ってはなかったでしたね」

「そのツンデレはわざとやってんのか？　それとも素か？」

「は！？///」

　思わず突っ込むと星川が顔を赤くする。

「ツンデレじゃないし！　ったくオタクはすぐそうやってキャラ付けをする……」

「それはわるぅございました」

　そんな感じでお互いカレーとスイーツを食べていく。

「うーん！　美味しいーー」

　ニコニコと食べ物を食べている時は天使でも小悪魔でもない、素の星川なんだろうな。

　こうやって見ると普通の素直なJKなんだが……。

　ジッと眺めていると星川と目が合う。

　その瞬間、星川はニヤリと何かを企んでいるかのような笑みを浮かべる。

「そう言えば、私達カップルなんですよね。だったら———」

　目の前に置かれたケーキから一口サイズをフォークで掬う。

　そして俺の前に向けた。

「先輩、あーんしてあげますよ」

「あ？」

　小悪魔的な誘いだった。