26話 四人目の適格者《ヒロイン》
「はぁ……すごいベタベタ触られた。手洗ってこよう」
星川 湊は外面はいいのだが、身内には毒を吐く。典型的な小悪魔キャラだ。
俺は正直この星川が苦手だ。
店長とか他のスタッフ、客には天使モード(外面が良い時)を使うのに俺にだけはこの小悪魔モードを使う。
俺にも優しくしろっての。
シフトが被れば色々と毒を吐かれる。周りにちくろうにもこの職場には俺の味方はない。
自他共に認める美少女……その自分自身を武器にしてるんだから俺に勝ち目はない。
本来、
髪も長くクルンとウェーブがかかっているし、ネイルもバリバリしている。今時のJKって感じだ。
そんな奴だ、きっと裏でパパ活とかしてんだろうな。
「あ、そういえば先輩」
「あ?」
「昨日なんか綺麗な女性といる所を見ましたけどあれ彼女さんですか?」
予想外の問いに心臓が止まりそうになった。
まさか、姫咲さんといる所をこいつに見られていたのか。
「いや、ただの友達」
「ふーん。オタクの先輩にあんな綺麗な友達がいたなんて意外です。私てっきりレンタル彼女かと」
「レンタル彼女って」
「まあ、そうですよね。先輩みたいな人に彼女なんているわけないですよね! この歳にもなってアニメ雑誌を見てニヤニヤしている先輩なんかに彼女なんて」
カッチーン。
すごいバカにされて俺のプライドに火がつく。
「確かに俺は彼女がいたことがない。だけど彼女がいない事とモテない事はイコールじゃない。バカにされる言われはないよ」
普段なら軽く流すのに、言ってしまった。
俺が必死になると彼女は悪そうな笑みを浮かべて、
「へーー。それじゃあ先輩モテたことあるんだーー」
さらに煽る。
見栄を張ってると思われているな。ここまでバカにするなら、いいだろう。その証拠を見せてやる。
俺はスマホを取り出し、西園寺さんと香乃と三人で撮った写真を見せる。
二人の間に挟まれて無理矢理撮られた一枚だったが、これで証明になるはず。
「どうや」
ドヤ顔で見せると、余裕そうな表情を浮かべていた星川の顔が崩れる。
「嘘! どうして先輩みたいな人がモデルの"エレナ"と!! それにもう一人の人もすごく可愛い……」
「ほら言っただろ」
あまりこういうことはやりたくなかったんだが。
「いくら払ったんですか?」
「え?」
「すごくくっついてる……これほどのサービス100万円近くの代償がないとあり得ない……先輩、それほどまでに女に飢えていたなんて……私だったら10万円で手ぐらい握ってあげたのに」
どうやらまだ信じてもらえないようだった。
しかも割に合わない金額を提示するな。
「いや、俺も信じられないんだけど事実なんだよ。この前無理矢理参加させられたら合コンで西園寺さんに出会って急に言い寄られた。もう一人のこの人、俺の幼馴染みなんだが久しぶりに会って急に求婚された。結構大変なんだよ」
「嘘でしょ……」
まだ信じない……それならこの言い寄られてるSNSのやり取りを見せるか。
「ほら、見ろ」
「うわっ……まじのやつじゃん……」
ようやく事実を受け入れる星川。
「でも、どうして先輩なんかに!?」
「俺が聞きたいよ……」
「え、なんかその反応、嬉しそうにないですね。先輩みたいなオタクがこんなモテるなんてそうそうないですよ。宝くじで一億円当たる以上のラッキーですよ」
いちいち、癪に触る言い方するな。
まあいいや。
「嬉しいもんかよ。結構の頻度で俺の家に来てゲームしてくるし、勝手に人の部屋を掃除するし」
「掃除するならいいんじゃないですか?」
「いいもんかよ。同年代の女の子に俺の秘蔵コレクションを見られる気持ちが俺にわかるか?」
嘆く俺を見て呆れる星川。
「とにかく俺を諦めさせる為、色々したが全部ダメで、それで彼女を作ろうと街コンに参加したが何も成果はなかった……」
思わず街コン行ったことも言ってしまった。
「ふーん。そういうこと」
「は?」
星川が小さく呟く。
勝手に納得してどうしたんだ?
「そういうことなら私、力を貸しましょうか?」
星川がニヤリと笑い、そう提案してきた。
「え……?」
戸惑う俺を見て星川が告げる。
「私が彼女の振りをしてあげます」
「…………は?」
彼女の意外の提案に俺は驚きを隠せなかった。
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