12話 昨日出会った女vs6年ぶりに再開した幼馴染みvsほのかちゃん
「な、なぜ……西園寺さんがここに?」
ファミレスで香乃と話していたら急に西園寺さんが現れて驚く。
「ついてきたの」
「え?」
ついてきたって……あとを? いや、西園寺さんが寝ている時にひっそり帰ったから、俺のあとをついてくるなんてそんなこと、できるわけがない。
だとしたらどうして俺の居場所を……?
ふと西園寺さんがスマホを片手に握っているのを見る。
そう言えば寝る前に……。
昨夜。
「ねぇ……ゆうくん、明日仕事休み?」
「え、あ、うん」
「だったら明日、その……二人でどっか行かない?」
そう彼女に誘われたが。
「悪い、明日はちと用事があるんだ」
断った。
どうしてもほのかちゃんを手に入れたかったから。
「ふーん」
意外にも西園寺さんは簡単に納得してくれた。
今までの彼女を見ていると無理矢理でもついて来ると思っていたけど。
「あ、そうだスマホ充電する? コードこっちにあるからよかったら貸して」
「おう、助かる」
……………………
「まさか!!!」
自分のスマホを見ると、位置情報を共有するアプリが知らないまま入っていた。
こいつ俺が寝ている隙にこんなことを……普段パスワードをかけていなかったのが裏目に出た。
「それで、君はこんな可愛い彼女がいるのに私に色目を使って口説いてきたのかな?」
「ちょっと待て!」
色々な誤解と勘違いがフュージョンしている。
俺別にあんたに色目を使ってないし、口説いてもない。ただリバースしただけだ。
「ねぇ……ゆうちゃん、この人がさっき言ってたモデルの人?」
小声で香乃が言う。
「ああ、まあそうなんだけど……」
「ねぇ、相席してもいいかな?」
「え、ええ」
西園寺さんが俺の隣に座る。
「それで、ゆうくん、"ほのかさん"とはどういう関係なの? やっぱり付き合っているの?」
自己紹介すっ飛ばして西園寺さんが尋ねる。
「え、別に今はいいだろ、ほのかちゃんのことは」
「いいから!」
「はい!」
威圧に負けて俺は綺麗な返事をした。
「まあ……なんつーか。出会ってからずっと俺の心の中にいる存在だな。彼女の笑顔を見ればすごく元気になるし、生きる糧になる……大袈裟かもしれないが俺にとっての大切な推しであり、嫁だ!」
「嫁って……あなた達、結婚してるの?」
何故か香乃を見ながら言う西園寺さん。
香乃はジュースを飲みながら、首をかしげ不思議そうにする。
「結婚……まあできるものならしたいと思っているよ」
そう言うと西園寺さんはひどく落胆する。
「そう、そんな仲だったんだ…………」
そんな落ち込んでいる西園寺さんに香乃が。
「あの! は、はじめまして! ゆうちゃんの幼馴染みの春野 香乃っていいます! 」
「え?」
「え?」
香乃の自己紹介を聞き、西園寺さんが顔を覗く。香乃も香乃で西園寺さんを見つめる。
この反応を見て俺は西園寺さんが誤解していることに気づき、彼女に説明した。
・・・・・・
「なーんだ。ほのかってアニメのキャラクターだったんだ。私ったらてっきり香乃ちゃんのことだと、ふふふ」
「ふふふじゃないよ。ったく」
やっぱりこの女の言動は読めないな。
西園寺さんもカフェラテを頼み、本格的に
謎の3人でのお茶会が始まろうとしていた。
「自己紹介が遅れてごめんなさい。私は西園寺 エレナ。ゆうくんの友達です。よろしくね香乃ちゃん」
あれ? いつの間に友達になった?
「はい! よろしくお願いします!」
目をキラキラさせながら西園寺さんを見る香乃。
「すっごーい。モデルって聞いていたからすごいめんこいと思っていたけどまさかここまでめんこいなんて……都会の人ってやっぱりすごいね! ゆうちゃん!」
「そだねーー」
何だ。この空間。
昨日出会って告られた女性にさっき久しぶりに再会した幼馴染み。
その3人とこうして話し合うなんてまるで夢のようだな。
あ、寝てみる方の夢ね。
「…………………」
沈黙。
そりゃーーこうなるよな。さっきまで赤毛のアンだった香乃も突然の客人を前に黙り込んじゃったし、勘違いして出てきた西園寺さんも何話していいかわからなくなっている。
とにかくすげぇー居心地が悪いな。
「あの……!」
沈黙を破ったのは香乃だった。
「西園寺さんは……ゆうちゃんのどこに惚れたんですか?」
予想外の発言。
西園寺さんも驚いている。
でもまあそれは俺も気になっていたことだった。
昨日も何度か聞いたけど、どれもパッとしない回答で、まるで俺をおちょくっている様だった。
だが香乃が聞けば回答が変わるかもしれない。
黙って西園寺さんの答え待つ。
すると。
「全部聞いたんだね。そうだね……」
うーんと、軽く考えながら西園寺さんは答える。
「この人なら私の全てを受け入れてくれそうだったからかな」
「は?」
意味のわからないセリフに俺は思わず声を出した。
だけど香乃は何だか納得しているようで。
「そうですか」
と笑みを浮かべていた。
自分の話をしているのに、自分が理解しないまま勝手に話を進められている……。新感覚な疎外感を体験しているようだ。
そんな疎外感に襲われた時はアプリゲームに限るぜ。
俺は無言でスマホを開き、ほのかちゃんが活躍するアプリゲームを始めた。
その時———。
「西園寺さんは本当にゆうちゃんのことが好きなんですね。だけど———」
おいおいまじか!!
「ゆうちゃんは私と結婚しますから」
新衣装のほのかちゃんの期間限定ガチャきてる! キタコレ!!!!!!
心の中で喜びを叫んだ。
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