6話 ギャルのパンティよりも健全なトランクスをおくれ

 オッス、オラ神原 由。


 ごくごく普通のどこにでもいる青年だ。


 オタク。童貞。彼女いない歴=年齢。

 というこの世の三大不名誉を持つ、ありふれた男だ。

 

 そんなオラがなんの因果か、モデルの女の子の部屋に泊まることになっちまったんだ。


 それにその女の子、こんなオラと友達になりてぇーとか言ってんだ。


 おでれぇーたぞ。


 こんな展開てんけぇ、他の奴ならワクワクするところだが。

 

 オラは全然ワクワクしねぇー。


 はぁーー。早く家に帰ってエロゲェやりてぇーぞ。


 そんな悟空口調で今の心情を整理する。

 いや整理にはなってないか。


「まあ、じゃあお世話になります」


「うん。てきとうにくつろいでよ。あと私、明日休みだから起きるの遅くてもいいよ」


 彼女は先程まで俺が寝ていたソファーに座りスマホをいじりだす。


「あ、あとシャワー入ってきてね。今の君、相当臭うから」


 そう鼻をつまみ臭いというジェスチャーをする。

 まあさっきリバースしたしな。

 

「あ、はい」


 言われるがまま浴室へ向かった。


 お風呂場も髪の毛一本も落ちてない。まるで高級ホテルの浴槽のようだった。

 それにさっきまで西園寺さんが入っていたせいかシャンプーの良い匂いがする。


 さっきまで入っていた!?


 とんでもない事実を前に俺は狼狽する。


 てことはほんの数分前、西園寺さんがここでシャワーを浴びていた。

 =全裸=さっき全裸だった所にいる。


 これ相当まずいのでは……こんなこと"ツイッタ"に呟いたら間違いなく俺は彼女のファンに殺される。

 

 それに実際こういうシュチュエーション、興奮するものかと思ったが、ムラムラよりも気まずさの方が勝っている……。

 さっき知り合った人、それに女性の家に厄介になるってなんか息苦しいな。

 それにあんな失態まで見せてしまったし……。

 自分の生きている空間が違うすぎるからか。


「タオルと着替え置いておくね」


 脱衣所から西園寺さんが言う。


「あ、ありがとう」


 着替えまで用意してくれるなんて、本当に申し訳なくなるな。

 

 早々にシャワーから出て渡された着替えを見る。

 ユニクロとかで売ってそうな上下セットのストレッチウェア。


 こういうのあるってことは彼氏とかいるのかな。それとも夜な夜な男を泊めているのか……詮索はよそう。

 あとでこの服代と宿代を含めた謝礼金を渡そう。


「ん?」


 服を広げると一枚の布が落ちる。

 手に取り広げると。


「こ、これは……」


 ピンク色の……おパンティ。


 待って待って待って。

 もしかして着替えってこれも?????


 嘘やろ……俺にこれを着ろと? 

 この可愛らしい布切れを纏えと? 


 変態じゃねぇーか!!!!


 待て! 落ち着け! もしかしてこれ今の世の中では普通のことじゃないか? 

 確か一時前、男性用のブラジャーが話題になっていたが、今や男性用女性パンツというのも出ていてもおかしくはない。

 それにこれ、よく見たらブリーフと形状似てね?


 よくパンツを見つめる。


 そして理解する。


 四捨五入したらブリーフだ、これ。


 そっか、巷ではこういうのが流行っているんだな。

 では早速…………。

 

「あ、ごめん、下着置いてきちゃったから取らせて」


 そう言いながら西園寺さんが入ってきた。


「え?」


 場が固まる。


 全裸でパンツをジッと眺めている俺。

 そんな俺を見て西園寺さんは、


「きゃーーーーー!!!」


 当然の如く悲鳴を上げた。

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