第4話 異常
「……そうですね、ホルマリンによって死後変化は起きなくなります。ただ、これは死後使用すればその時点で死後変化が停止するということで、生体に使用すれば多臓器不全に繋がるほどのひどい炎症を起こすはずです。ご遺体は現時点でも、まさに今亡くなったかのような状態、それもついさっきまで何の問題もなく健康体であったかのような状態を保っています。――生きている人体をそのままの状態で死なせ、死後も生きていた時そのままの状態を持続させることは、現代の科学、医学では不可能です」
「死因となる異常はなく、死体としては異常、ってところですかね」
一先ず伊崎と別れ捜査に向かうなか、安東がお手上げだと言うように溢す。何もわからないということがわかっただけだ。
おかしな点は遺体の状態以外にもあった。
失踪当日、会社の最寄り駅の防犯カメラを最後に、清水早雨の姿を確認できるものは何一つなかった。また、携帯電話の電源も駅周辺で切られており、以降の位置情報の取得は不可能であった。
どうやって消えたのか。
一ヶ月の間どこで何をしていたのか。
どうやって死んだのか。
舟はどこから来たのか。
「……舟、ね」
溜め息交じりに吐き出すと、安東が困り顔のままこちらを見てきた。
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