第5話 小さな舟

 舟が発見されたのは四月二十日早朝。前日の夜までは、辺りには何もなかったそうだ。

 海岸付近にあるガソリンスタンドの防犯カメラに、舟らしきものが映り込んでいるのが辛うじて確認できた。映像では確かに、舟は沖の方から流れ着いていた。

 動力を持たない小さな舟は、風と潮流によって動くしかない。


「つまり、四月二十日から風向き、風速、潮流を逆算していけば、舟がどうやって海岸へ辿り着いたのか――どこから来たのかわかるはず……」

 署に戻り、遅い夕食を摂りながら今日得た情報をまとめる。

「なるほど」

 頷きつつ頭を抱える安東を横目に、モニターに映る地図をなぞる。

「――解析はもうしてもらってある。伊豆半島の南、緯度は三宅島の少し南にある御蔵島と同じくらいで……みつ、しま」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る