第4話 四天王ランベルト

 お昼ごはんを食べ終わった私達は、犬王ワオウ城へまた歩き始める。少し進むと、森が見えて来た。


『アヤノ様。いるわんっ!』


「うん、分かった!」


 私は木の棒を出して構える。


『ランベルト、出てこいわんっ!』


『ローラント、見損なったわんっ!!』


『我はアヤノ様に敗北したのわん。強い者に従うのは仕方ないのわんっ!』



 うん、言い争っているけれども……私が気になるのは、このランベルトというのがゴールデンレトリバーという事だ!


(どうしよう、めっちゃ可愛いっ!! えっ、この子ももふもふして良いの!? やるやるっ、絶対もふるんだ!)


「ローラント、下がっていて下さいね」


『がうっ!』


『アヤノ様、大丈夫にゃ!?』


「うん、やってみるよ!」


 そういうと、木の棒を構えてランベルトの注意を引き付ける。よく見てくれなきゃ、取りに行ってくれないからね!


『覚悟するわんっ!!』


 ランベルトはそう言うと、私に向かってきた。私は木の棒をゆらっと揺らすと、ランベルトの視線も揺れる。


(これはいける!)


 ゆらゆらっと揺らして、視線が追いかけてくるのを確認してから放り投げる。


「取ってこーいっ!」


『な、なんだとっ!? わんわんっ!!』


 一瞬我慢しようとしたけれど、本能には勝てなかったみたいで木の棒を取りに走って行った。

 木の棒を口で咥えると、私の所へ持ってくる可愛いレトリバー君です。


「ふふっ、偉いね~。よしよし」


 そういうと、ゴールデンレトリバーのランベルトをなでなでする。


『わ、わんっ!? あっ……ダメわんっ……わふぅ~……』


「ふふっ、よしよし。たっくさんなでなでしてあげるからね~」


(きゃー、もっふもふだよ! 素敵だよ!)


 なでなでしていると、そのうちゴロンとお腹を見せてなでなでされるランベルト。よし、勝った!


『がうぅぅ……ま、負けたわん……』


「うふふっ、可愛いっ。ランベルト、お手っ!」


『わんっ!』


「よしよし、良く出来ましたね~」


『わうっ!? な、なぜそんなっ!?』


(本能って怖いわ~。というか教えてないのにお手出来たよ、この子)


『あっ、撫でちゃ……わふん』


「よしよし、仲間になる……よね?」


『わんっ、アヤノ様の仲間になるわん』


「よし、じゃぁ先に進もう~! さて、次は誰かな~」


(待っててね、私のもふもふわんこちゃん!)


 無事にランベルトも仲間に引き入れたので、そのまま森の中に入って進もう。まだ日は高いからもう少し進めそうだ。だけどこれは、森の中で夜を明かす事になりそうだ。

 とはいえ、四天王が2人もいる今の状況を考えたら、何が出て来ても大丈夫な気がする。


『アヤノ様はさすがなのにゃ~』


「なんとかうまくいって良かったわ。次も上手くいけば良いけれど……」


『次の四天王の1人はヴァルターですわん』


(ローラント、名前よりも犬種が大事なのよ!?)


「次はどこら辺で会う事になるの?」


『ヴァルターは犬王ワオウの街の入り口辺りなのわん』


「ランベルト、ありがとうね」


 まだまだ、森を抜けるまでは四天王に会わなそうだ。のんびり森を歩いていると、少し日が傾いてきた頃、ローラントが立ち止まる。


『がうぅ……ランベルト、アヤノ様を頼むわんっ!』


『わんっ!』


 そういうと、ローラントは森の中に凄い速さで駆けて行った。何があったんだろう?


「ランベルト、どうしたの?」


『狼が出たわん。ローラントが倒しに行ったので問題ないわん』


「お、狼!?」


『にゃにゃ!? 狼は怖いのにゃ』


『野営場所を決めるわん』


『にゃ! アヤノ様、簡単な家を作りますにゃ』


「えっ、でもハンナさん。それじゃ疲れちゃうよ? 何もなくても大丈夫だよ?」


『家を作った方が、みんな安全に休めるのにゃ』


「そっか。大丈夫だったら、お願い」


『お任せくださいにゃ』


 ハンナさんが魔法でお家を建ててくれた。一部屋だけの小さなお家だ。今日は眠れればいいし、ハンナさんの魔法が必要になったら困るから、魔力を温存して貰ったんだよね。


 それでも、一瞬にしてお家が出来るからやっぱり凄いよね。お家に入ると、ハンナさんはお夕飯を作ってくれる。私は蕪とじゃがいもを神の手のスキルで育てて、材料に使って貰おう。


『アヤノ様、凄いですわんっ!!』


「私の聖女としてのスキルなんだよ~。一緒にご飯を食べようね」


『がうっ!? わ、私にもご飯を頂けるのですか!?』


「当たり前でしょう! ご飯なしだなんて酷い事言わないよ~」


『ハンナ様も、いいのわん?』


『もちろんにゃっ!』


『あ、ありがとうわんっ!』 


 ランベルトはとっても嬉しそうだ。確かに、今まで敵対していたのにご飯だしね。なかなか理解しにくいんだろうな。


 お料理が出来る頃、外で音がした。ランベルトが外に出ると、ローラントが戻って来た。そして、手にはお肉を持っていた。


(それはまたなんとも刺激が強い感じですけど!?)


『アヤノ様、これは食べられるわんっ!』


『にゃ! お肉にゃ~。お料理していいにゃ?』


『ハンナ様、お願いしますわんっ!』


 急遽、スープだけじゃなくお肉も焼く事になった。ハンナさんは嬉しそうにしっぽを振っている。

 ローラントを見ると、なんだか期待した目をしている? しっぽを見るとぶんぶん振られている……これは褒めないと!?


「ローラント、ありがとうね」


『アヤノ様の為に取って来たわんっ!』


「ふふっ、よしよし」


『わふん』


 そんなにかっこいいのに、撫でて良いのですね! そんなんだったら早く言ってくれたらよかったのに~。いくらでも撫でちゃいますよ?


(かわいい、気持ちいい! そしてランベルトのしっぽも揺れてる!)


「ランベルトも守ってくれてありがとうね。おいでおいで」


『わうんっ』


(やだもう、なにこの可愛い四天王の2人! ギャップが激しくて、やばいわっ!)


 ローラントが取ってきてくれたお肉と、ハンナさんが作ってくれたスープで美味しくご飯を食べた。


「ハンナさん、美味しかった。ありがとうね」


『ふふっ、どういたしましてにゃ~』


 その後は、神の手スキルでみんなの癒しと言いつつ、私がもふもふしたかったんです。みんなをなでなでして、癒してあげてから自分もなでなでして元気にしておく。

 明日は犬王ワオウ城へ着くだろうから、万全の状態で挑まないと何があるか分からないからね。


 そして、ランベルトとローラントの大きい2人に挟まれて、もふもふでおやすみなさい。


(ふふっ、幸せなもふもふ~……)

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