第3話 四天王ローラント

 朝起きて準備をすると、ハンナさんが朝ごはんを持ってきてくれた。魔法でお料理をするのも、なんだか新鮮で楽しいよね。


 朝ごはんを食べ終わったら、ハンナさんと一緒にお家を出て犬王ワオウ城へ向かおう。街の北の門から出て、さらに北に歩いて行く。


 北に向かうと、森に入る。森を抜けたら橋があるんだって。当分は森の中みたいだから、のんびり進もう。

 足が多少疲れても、なでなでってすると治るので、これはとっても助かります! もちろん、私を治す前にハンナさんをなでなでしますけどね~。


『にゃうぅ……アヤノ様のなでなでは気持ち良すぎてふにゃ~ってなっちゃいますにゃ~』


「ふふっ、疲れを取らないとまだまだ先は長そうですからね~」


 ふふっ、私の癒しですから、なでなでは絶対にするのです! だって、ハンナさんをなでなでするのも、とっても気持ちが良いのですもの。



 途中でお昼ごはんを食べてさらに進んで行くと、森を抜けた。森を抜けた先に橋が見えた。


「橋の手前に誰かいますね」


『あれは……四天王のうちの1人ローラントですにゃ』


 なんかハンナさんに名前を言われたけれど、頭に入らない。だって……どっからどうみてもセントバーナードなんだもん!


(えっ、ちょ、ちょっと撫でたい! 撫でて良い?)


 思わずセントバーナードを見つめてしまう……可愛い、かっこいい、もふもふ……。


「えっと……四天王?」


『そうですにゃ。四天王の1人ローラントですにゃ!』


 そう話している間も目が離せない……。


『お前は誰わんっ!』


(やっぱり語尾はわんなのか! 話す犬とか素敵すぎる!)


「私は彩乃です。犬王ワオウ様とお話をしに来ました」


『がうっ!? 話をしに来たわん? 我は四天王の1人として、そんな怪しいやつを通すと思うのわんっ?』


 そういうと、シャキンッ! と剣を構えるローラント。


「おぉ! かっこいいっ!」


 でも、どうやってあの剣持ってるんだろう……?


『褒めたって無駄わんっ!』


(あっ、しっぽがぶんぶん振られてる! ふふっ、可愛いっ!)


「ふふっ、そんな事言って嬉しいんでしょう? 剣を持ったローラント様はとってもかっこいいですもの!」


 ぶんぶんぶんぶんっ!!


 さっきよりさらに凄い勢いでしっぽが振られている。可愛すぎる、顔はつん! としているのに、しっぽが素直過ぎる。


(ふふっ、可愛いっ! なでなでしたい!)


 私はちらっと下を見ると、木の棒を見つけた。あっ、これ投げたら取ってくるかな?


 ローラントから目を離さないまま、ゆっくりとしゃがむと木の棒を取って見様見真似で構えてみる。よく注意を惹き付けないとね。


『がう!? 我と戦うわん?』


 ローラントと対峙して、いつなら行けるか考える……あっ、今っ!


「取ってこーいっ!」


 ぽーんっ! と木の棒を投げると走っていくローラント。


『がうっ!? わんわんっ!』


(やっぱり行ってくれるんだ……さすがかっこかわいいわんこです!)


『わんわんっ!』


 しかも、取ってきてちゃんと持ってきてくれた。ふふっ、この近さならもふもふなでなで出来ちゃう!


「よしよし、偉かったね。いっぱいなでなでしてあげるよ~」


(うふふ、可愛いっ! もふもふっ! むしろ抱き着きたいっ!)


 なでなでなで……。


『が、がうっ!? あっ、ずるっ……そこはっ……わふん』


(ふふっ、服従のポーズまでしちゃいましたね。もふもふ~!)


『うぅ……屈辱!』


「あら、まだ抵抗しちゃうんですね~。いいですよ、いっぱいなでなでしてあげます!」


 なでなでなで……。


(えぇ、私にはご褒美ですからね! うふふふふ~)


『さすが聖女様にゃ! 戦わないで勝っちゃうなんて凄いにゃっ!』


『せ、聖女様わんっ!?』


「そうみたいですよ。聖女召喚で呼ばれたんです。犬王ワオウ様にお会いしたいんです」


『わ、我は聖女様に従いますわん』


「良いのですか?」


『我は負けたのわん。負けたからには聖女様に従いますわん』


(まさかの……なでなでだけで勝っちゃったよ!?)


「そ、そうですか。では犬王ワオウ様に会いに行きましょう」


『お供致しますわん!』


 四天王の1人、セントバーナードのローラントを仲間にした。さっきローラントに投げた木の枝は持って行く事にしよう。

 後はバッグの中にあったタオルを丸めてボール状にしておこうかな。きっとこれも使える気がする。


 しかし、ローラントの毛並みも素敵だったなぁ……次はどんな子が出てくるのか、ちょっと楽しみになってきちゃったよ。


「さて、橋を渡りましょうか。結構長い橋ですね~」


『そうなのですにゃ』


『アヤノ様。この橋の先には同じく四天王のランベルトがいるので、お気を付けくださいわんっ!』


「分かったよ、ありがとうね」


 この橋も魔法で作ったのかな? 魔法でなんでも出来て凄いね。


「そういえば、どうして犬王ワオウはねここ王国を自分の物にしようとしているの?」


『それは、この犬王ワオウ城のある地域は植物がほとんど育たないのわん。だからねここ王国を襲って食料を奪っていたのわん』


『でも、ねここ王国もそれほど豊じゃないのにゃ』


『それと、犬族は魔法が使える者があんまりいないのわん。狩りは出来ますが、獲物もこちら側にはあまりいないのわんっ』


「なるほど。色々理由があったのですね。ねここ王国では狩猟はどうしてるの?」


『ねここ王国では狩猟もしますが、それよりも畑を作ったりする方が多いですにゃ』



 それってもしかしたら、協力出来たら特に争いにならないのでは? 畑は私ががんばってなでなでして作物を育つようにすればいいし、狩猟は犬族に任せちゃえば肉も野菜も採れるよね。


「ん~……協力出来たら肉も野菜も食べられるよね?」


『アヤノ様!?』


『わんっ!?』


「だって、肉と作物って交換したら良いと思わない? 奪おうとするから問題になるのであって、交易したら良いと思うんだよ?」


『なるほどにゃ……』


『確かにそうわん』


 まぁ、まずは犬王ワオウに会わなくては何も話しは進まないけれど、提案してみる価値はありそうだよね。

 そんな事を話しながら歩いて行くと、やっと橋を渡り終えた。


 渡り終えた所に次の四天王がいるかと思ったら、周りを見てもいなかったので少し休憩してお昼ごはんを食べよう。


 ハンナさんが魔法でお料理をしてくれるので、今日は持ってきたお野菜を出してハンナさんにお願いする。


『わふぅ~……魔法で料理とは凄いわん』


「犬族のご飯はどうしてるのですか?」


『焼くくらいしか出来ないのわん。魔法を使える者は犬族の1割くらいしかいないので、その者達が火を起こしたりしてくれているわん』


「それは、結構大変なんだね」


『だから、料理に魔法を使っているのが凄くびっくりするわん』


 私がローラントと話しをしている間に、ハンナさんがお料理を作ってくれたので、3人でご飯を食べよう。


「ハンナさん、ありがとうね」


『ふふっ、美味しく食べてくれたら嬉しいのにゃ』


『感謝するわん』


 みんなでご飯を食べたら、お片付けをしてまた犬王ワオウ城へ向かおう。

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