第2話 街を見てみよう

 気が付くと、もう朝になっていた。


「あっ、遅刻っ!! ってここどこ!?」


 飛び起きたけれど、家じゃなかった……びっくりしてきょろきょろしていたら、現状を思い出した。

 しかし……いくら何でも寝すぎじゃない!? あっ、でも昨日会社の帰りからだったから、さすがに疲れてたのね。


(夢じゃ……なかったんだね)


 犬の王様を倒すのはどうしたら良いんだろう……あっ、でもその前に四天王がいるんだよね。なんだか考えようとしても全然考えられない。


『アヤノ様、今大丈夫ですにゃ?』


「はい、大丈夫ですよ」


 そういうと、ハンナさんがご飯を持ってきてくれた。


「わぁ、ありがとうございます!」


『食べたら、これからの事を考えようにゃ』


「そうですね、お願いします! 頂きます!」


 ハンナさんと一緒にご飯を食べると、お茶も入れてくれた。お茶を飲みながら今後の方針を決めて行こう。


『今日は、まずはのんびり街を見て回りませんにゃ?』


「えっ? 犬王ワオウを倒しに行かなくてはいけないのでは?」


『いきなり召喚されて、何のために倒しに行くのか分からないと困ると思うですのにゃ』


 言われてみれば確かに……何のために倒しに行くのか分からなかったら、身動き取れなくなってしまうかもしれない。

 街を見て、本当に犬王ワオウを倒さなきゃいけないのか、正しい判断をしなきゃいけないよね。


『それと、犬王ワオウの手下の四天王は、魔法よりも剣の使い手で凄く強いのですにゃ』


「うわぁ……それは厳しいですね。私は剣も扱えないですし……本当にどうやって戦ったら良いんでしょうね……」


『困りましたにゃ……私の魔法でも倒せないのですにゃ』


「そ、そうなのですね」


 私の家を一瞬で作っちゃうほど魔法が使えるのに、犬王ワオウの四天王にも勝てないらしい……。まぁ、とりあえず今日は、街の中を見て回ろうかな。

 私はハンナさんと一緒にお家を出て、街をのんびり見に行こう。


 お家を出ると、街の中心に向かっていこう。ハンナさんはやっぱり2足歩行で、てくてく一緒に歩いている。お家を出てすぐ側に畑があって、そこでは色々な種類の猫さん達が畑の世話をしている。


 やっぱり聞いていたみたいに魔法でお世話をしている。雑草を抜いたり、収穫も魔法で出来るんだって

 なんだかいつまででも見ていられるくらい、わくわくして眺めちゃった。だって、手で持ってないのに収穫出来るんだよ、凄くない!?

 畑を耕している所もみたけれど、これも凄かった。地面がぐるぐるって混ざっていく感じで、見ていてとても楽しかった。


『にゃにゃ。アヤノ様は畑が楽しいですか?』


「ううん。魔法を使っている所が見ていて楽しくて。私がいた所では魔法がなかったから、初めて見る事ばかりで、とっても楽しいです」


『にゃるほど。でも、畑の野菜もなかなか育たないのですよね』


「そうなんですか?」


 収穫された野菜を見ると、どれもやっぱり小さい感じだね。


(あっ、そうだ! 神の手でなんとかならないかな?)


 元気に育ちますようにってお願いをしながら、畑をなでなでする。


(ん? なんか手に当たるこの感じはなんだろう?)


「えぇぇ!?」


 さっき種を植えていた所を撫でただけなのに、私の手に元気な蕪の葉っぱが当たっている。しかも蕪も生ってる。


(いやいやいや……おかしいよね!? さっき種を植えたのに、もう収穫出来るよ!?)


『アヤノ様、凄いですにゃ!』


『い、今何をしたのにゃ?』


 畑に居た三毛猫さんもびっくりしている。そりゃそうですよね、今、種蒔いたのにね。


「えっと、元気に育ってねってお願いしたら、実っちゃいました」


『アヤノ様、これで犬王ワオウ城へ行く時も食材の種を持って行けば良いにゃ!』


「あっ、そうですね!」


 食は大事ですからね。これでご飯の心配はないですね!


「よし、収穫した物にも効くのか試してみましょうか」


『アヤノ様?』


「みんなが食べられないと元気になれませんからね~。今日はまだまだ時間がありますし、やってみましょうよ」


『ありがとうございますにゃ!』


 収穫してある蕪とかじゃがいもの所に行って、大きくなりますようにとなでなでしてみると、みるみる大きくなって、立派な蕪とじゃがいもになりました。


 神の手さん凄いです!


 お野菜も土も良くし終わったら、畑で作業している三毛猫さんを元気にしてあげよう。


(決して私がもふもふしたいからでは……ウソデス、もふもふしたいですっ!)


 三毛猫さんの手を取ると、元気になってとなでなで。


『にゃ? ふにゃ~……なんにゃ……ゴロゴロゴロ』


「ふふっ、畑仕事頑張って下さいね」


(三毛猫さん、可愛かった~!!)


 土で汚れた所は、ハンナさんがクリーン魔法を掛けてくれて綺麗になった。よし、街へ向かおう。


 街へ行くと、子供達はお昼寝をしていたり、遊んだりして元気があるけれど、大人の猫さん達は、やっぱりちょっと元気がない。

 さっき大きくしたお野菜を食べて、早く元気になって貰いたいね。


 怪我をしている猫さん達も沢山いた。足を怪我していたり、片目を怪我していたりする子までいる。魔法で怪我はほとんど治せないんだそうだ。病気は少し治せるくらいだそうだ。

 怪我とか病気をしている猫さん達を集めた場所があるので、そこに向かおう。みんなを治してあげたい。


「ハンナさん、みんなを治したいです」


『アヤノ様、ありがとうございますにゃ』


 診療所に着くと、怪我や病気の猫さん達を次々になでなでして治療をしていく。なでなでするだけで治っていくので、周りの猫さん達はみんなびっくりしてる。


「ふぅ……みんな治って良かったですね~」


『アヤノ様、お疲れではないですかにゃ?』


「大丈夫ですよ~。そろそろ暗くなりそうだし、お家に帰りましょうか」


『そうですにゃね~』


 ハンナさんと一緒に診療所を後にして、お家に帰ろう。

 お家に帰ると、植物の種が色々と届いていた。倒し方とか何も浮かばないけれど、明日から犬王ワオウ城へ向かおうかな。


 そう考えていると、ハンナさんがお夕飯を持ってきてくれた。お礼を言って受け取ると、一緒にお夕飯を食べる事にした。


「ハンナさん、明日から犬王ワオウ城へ行こうと思います。まずは向こうの話も聞いてみて、それから考えようと思います」


『分かりましたにゃ。私もお供致しますにゃ!』


「ありがとうございます。危なかったら逃げて下さいね」


『そんにゃっ! アヤノ様を置いて逃げるなんて出来ないですにゃ!』


「ふふっ、ありがとうございます。あっ、そういえば聞くのがちょっと怖くて、まだ聞けてなかった事があって……」


『何ですにゃ?』


「あ……あの……、私は帰れるんですか?」


『あっ……それが、私は呼べるけれど帰せなくて……ごめんなさいにゃ……』


「そう……ですか」


『あっ、でも犬王ワオウが帰せるって聞いてるにゃ!』


「そうなんですか?」


『はい、犬王ワオウはこの世界で一番魔力があるらしいのにゃ!』


「わかりました。じゃぁ、帰るためにも明日から頑張りますね!」


『本当に申し訳ありませんにゃ。よろしくお願いしますにゃ』



 本当に犬王ワオウが帰せるのか分からないけれど、まずは話をしない事にはどうしようもないもんね。


 ハンナさんも家に帰った事だし、明日は朝早くから家を出るので、今日はゆっくり休もう。

 ベッドに入り、明日からの事を考えるとドキドキするけれど、出来る事を頑張るしかないよね。



 今日は街を見ていたら、色々な種類の猫さん達がいたなぁ……。可愛くて可愛くて、何度なでなでしたいと思ったか! まあ、治療で沢山なでなでしてきたんですけどね!

 あのふわっふわの毛皮の猫さんはなんだったかなぁ……。


「あっ、ラグドールだ!」


 あのふわっふわの毛皮の猫さんはラグドールだったね。もふっもふで本当に気持ち良かったんだよね。もっとなでなでしたかったなぁ。


 そんな事を考えていたら、眠くなってきた。今日はお野菜を大きくしたり、みんなを癒したりなんだか大忙しだったね。

 明日からまた大変だろうけれど、頑張ろう!

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