なでなでスキルでもふもふ無双!?

猫野 伽羅

第1話 聖女召喚

 私は今年から社会人として働いている宮本 彩乃(20歳)、慣れないお仕事はちょっと大変だけれど、新しい事を知っていくのはとても楽しい。

 

 会社のお仕事が終わって帰る途中、足元が突然光った。足元を見てみると、光っている魔法陣が見える。


「なに、これっ!?」



 強い光で目を開けている事が出来ない……ぎゅっと目を瞑っていると、何か声が聞こえる。



『召喚成功にゃっ!』


(にゃっ? えっ、それよりも召喚?)


 そーっと目を開けてみると……私は会社帰りの道ではなく、どこかの建物の中にいた。


「ここ……どこ?」


『聖女様。ここは、ねここ王国ですにゃ』


(ね、猫がしゃべったー!?)


「え……えっと……」


(頭の整理が出来ないよ!? ちょっと待ってー!!)


 深呼吸を1つして、辺りをきょろきょろ見回してみると……確かに猫だらけだ。でも、2本足で立っている子が沢山いる。

 今話をしてくれたのが、黒猫さんだ。その後ろにはロシアンブルーの猫さんがいる。


(いやいやいや……猫が2本足で立ってるのはたまに動画とかで見るけど、どういう事!?)


 ダメだ、理解が追い付かない……。


「確かに猫がいっぱい……私はなぜこんな所に居るのでしょうか?」


『私から説明させて頂くにゃ』


 あっ、さっきも答えてくれた黒猫さんが教えてくれるみたいだ。


『私は賢者のハンナにゃ。よろしくお願いするにゃ』


(賢者? 猫なのに賢者ってどういうこと!?)


「えっと……宮本 彩乃です。よろしくお願いします」



『今、このねここ王国は絶滅の危機なのにゃ。そこで、私が聖女様を召喚させて頂きましたにゃ。我々の勝手なお願いに巻き込んでしまい、大変申し訳ありませんのにゃ』


「どうして絶滅の危機に?」


『それは、犬王ワオウの襲撃によるものなのにゃ~……』


「わおう?」


『そうにゃ。犬族の王が治める犬王ワオウが、このねここ王国の地を自分の物にしようとしているのにゃ』


(犬が敵なんだね……なるほど)


『強大な強さに我々にはどうして良いのか……聖女様、お助け下さいにゃ!』


 というか、さっきからちらほらと聖女様って言われているけれど、聖女って何!?


「あの、私は普通の一般人なのですが……聖女様って言うのは一体?」


『聖女召喚の魔法を使ったので、アヤノ様は聖女でございますにゃ!』


「聖女ってどんな力があるのですか?」



 そう聞くと、鑑定魔法を掛けて教えてくれるみたいだ。ハンナさんが鑑定魔法を唱えると、私の目の前に半透明のスクリーンが出て鑑定結果を教えてくれる。


 名 前:宮本 彩乃

 スキル:神の手

 称 号:異世界の聖女



(何これ? 異世界の聖女って書いてある……でもこのスキルの神の手ってなんだろう?)


「聖女とは書いてますけど、この神の手って何ですか?」


『アヤノ様の手で撫でると、アヤノ様が思ったように出来るみたいにゃ』


「思ったように……ですか……なんだか難しいですね」


 ハンナさんとお話をしていると、ハンナさんの後ろにいたロシアンブルーの猫さんがこちらに来た。


『聖女様、私はこのねここ王国の国王のレオンハルトと申しますにゃ』


(おおう、まさかのロシアンブルーの猫さんが国王様でした! 素敵すぎます!)



 でもこの国王様は、なんだか疲れた表情をしている気がする。うーん、神の手スキルで癒してあげられるだろうか?

 さっきハンナさんが、神の手のスキルで私が撫でると思ったように出来るって教えてくれた……だったらきっと出来るんだろう。


「あの、国王様。出来たら手を貸して頂けますか?」


『アヤノ様、普通にお話してくださって大丈夫ですにゃ。手ですにゃ?』


 不思議そうにしつつ、手を貸してくれた。私はその手を取ると、もう片方の手で優しく包み込み、疲れが取れるように、癒されるように思いながら手をなでなでする。


『ふ、ふにゃ~……ア、アヤノ様……うにゃぁ~』


 国王様はぺたりと座り込んでしまった。や、やりすぎた!?


「あ、あの、大丈夫ですか!?」


『ふにゃぁ~……あ、ありがとうございますにゃ……』


 国王様はペタリと座っているだけなのに、なんだか誘惑されている気分……。


(目の前にロシアンブルー……撫でたい……でも、国王様……不敬だよね? でも、もふもふにゃんこー!)


 うずうずする手を抑えきれなくて、ついつい撫でてしまった。


『あっ……アヤノ様、そこは……うにゃ~……ゴロゴロゴロ……』


(いや、かわいい~!! アッシュブルーの毛がすべすべと気持ち良くて、可愛すぎるっ!!)


『ふにゃぁ……』


 国王様は床にごろりとして、されるがままに撫でられている。

 ついつい誘惑に負けて、ひたすらもふもふしてしまった。無心でなでなでしたら、私の心も少し落ち着いてきた。


 周りにも沢山のもふもふにゃんこが……もしかして、なでなでし放題!? 


「ふふっ、猫さん達可愛いっ! ハンナさんもなでなでさせてー!」


『にゃにゃっ!? そ、そんな、アヤノ様っ!?』


 なでなでなで……黒猫のハンナさんも可愛い、ステキ!


『うにゃぁ~……ゴロゴロゴロ……』


 ハンナさんもごろりとされるがままに……ここはもふもふ天国ですかね?


 他の猫さんを見ると、アメリカンショートヘア、マンチカン、ラグドールとか素敵猫さんが沢山です。思わず、周りに居た猫さん達を全員、ひたすらなでなでしちゃいました。

 みんなペタリと座り込んでされるがままです。やらないけれど、ねここ王国の天下が取れそうですね。


 ふふっ、もちろん全員なでなでさせて貰いましたわ!


(はぁ……幸せすぎる)


 そういえば、日本にいた時も私が撫でるとすぐにゴロンってしてたけど、もしかしてその時から持っていたのかな?

 親戚の赤ちゃんも抱っこしてなでなですると、すぐに寝ちゃったりしてたなぁ……。



 よし、大分落ち着いた所で、私はこれからどうしたら良いのかな。


「私はこれからどうしたら良いのでしょうか?」


『アヤノ様には犬王ワオウのヴェンデルを倒していただきたいのですにゃ!』


 なんだか強そうな名前なんだけど!?

 そう国王様は言うけれど、私スキルって神の手しかなかったよね!? それに特に強いわけでもないんだけど、どうしたらいいの!?


「でも、私は特に強いわけでも、何が出来るわけでもないのに……どうしたら?」


『アヤノ様、私もご一緒させていただきますにゃ』


 そう黒猫のハンナさんが言ってくれた。そうは言っても、ハンナさんで倒せるんだったら……私を召喚して無いよね?

 そう思っていると、国王様が犬王ワオウの場所を教えてくれる。


犬王ワオウヴェンデルは北の橋を渡って、森を抜けた所にある城に住んでいるのにゃ。ただ、このヴェンデルには四天王と言われる強敵がいるのにゃ。この4人を倒さない事には、ヴェンデルの場所には行けないのにゃ』


(どうやって犬王ワオウヴェンデルを倒したらいいんだろう?)


 国王のレオンハルト様は倒して欲しいと言うけれど、特に強いわけでも、何が出来るわけでもないのに……どうやって倒したら良いんだろう。困ったなぁ……。


『アヤノ様、まずは今日泊まるアヤノ様の場所を作りますにゃ』


「場所を……作る?」


『にゃ。まずはゆっくり休んで、それから考えますにゃ』


 ハンナさんについて、さっきの部屋を出て外に出ると……お家が沢山並んでいた。広い畑もあって、食べ物を植えているみたいだ。


 でも、みんな猫なのに……どうやっているのだろう?


『アヤノ様?』


「あっ、ごめんなさい。つい、色々気になってしまって……」


『なんでも聞いて下さいにゃ』


「どうやって畑のお世話をしたりしてるのですか?」


『にゃにゃ。ねここ王国の住人はみんな魔法が使えるのですにゃ。だから、畑の世話もお家を建てるのも、お料理をするのも魔法なのにゃ』


「ふわぁ……そうなのですね」


 まさか全部を魔法でやっているとは思わなかった。確かに、みんな普通に猫だもんね。2足歩行はするけれど、基本は猫だ。

 だから、畑の世話もお家も全部魔法なんだって。なんだかびっくりな世界だね。


 私もせっかく来たのだから、魔法を使ってみたかったなぁ……残念。


 ここの街の中に私の家を作ってくれるんだって。でも、私の大きさでお家を建てたら大変な事になりそうなんだけど、どうしよう?


 そう思っていたら、ハンナさんが立ち止まった。ハンナさんの目の前には空き地が広がっていた。


『アヤノ様のお家はここに作りますにゃ』


「は、はい……でも、良いのですか?」


『もちろんですにゃ!』


 そう言うと、ハンナさんは両手を目の前に出すと、目を瞑って集中する。私はハンナさんの邪魔をしないように、黙ってじっとしていよう。


 次の瞬間、地面からゴゴゴ……と音がすると、家が地面から出て来た。


(えぇぇぇぇ!?)


 思わず声が出そうになったけれど、口を押えて心の中で盛大に驚く。

 地面から家が生えてきたよ!? ま、魔法ってすごい……。


『アヤノ様、出来ましたにゃ』


「は……はい。あ、ありがとうございます!」


 家の中に入ってみると、テーブルや椅子、ベッドもあってすぐに住む事が出来る程完璧な家だった。


「ハンナさん、凄いです!!」


『にゃにゃん。喜んで貰えて良かったですにゃ。お夕飯まで、少しお休みになって下さいにゃ』


「はい、ありがとうございます」


 とりあえず、落ち着くためにも一度ベッドに横になってみると、疲れていたのかすぐに眠ってしまった。

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