第四章 「八百万」

「ここはねみんな魔界って呼んでるけど、本当は八百万通りっていってね、

神様の通り道なんだよ。」

少女はそう言った。


「神様の通り道?」


「うん!いつもはね静かで何もないんだけど、今日はお祭りなの!

だから出店があったり、神様じゃない人達もたっくさんいるの!

悪い人も、良い人も!

知ってた?3丁目のおじさんは人攫いなんだよ!高い値段で人を売るの!

だから悪い人!

菊乃家の女将さんはね、いっつもおいしいジュースくれるからいい人なの!」


少女から見た私は一体悪い人と良い人、どちらなのだろうか。

最近はそんな事もどうでもいいと思うほど疲れていたのかな。

私は人にどう思われようと関係ないと思っていた。

誰かにジュースを買ってやれば少しは良い人になれただろうか。

そんな些細なことで何か変わっただろうか。


そしてそうこう話を聞いている内に私は神様の通り道に迷い込んだのだと知った。

縁日の日にだけ現世と浮世が混じり、そこにたまたま私が来たのか。

少女は続けて、

「お兄さんの事はずっとここから見てたの!」


私はまた少し怖くなり少女に聞いた。

「どうしたら元に戻れるの?」

すると少女は少し寂しそうな顔をして、

「もう帰っちゃうの?」と聞いてきた。

少し心苦しかったが私は、

「うん、帰りたいな」と答えた。


「そっか~もうちょっとお兄さんと遊びたかったな!

あのね、ここの屋上に行くと小さな祠があってね、そこにお願いするの!」


私はようやく呼び方が鬼さんではなく、お兄さんになっていることに気づいた。

「わかった、ありがとうね。」

そう言い残し少女と別れ、私は屋上へ向かった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る