第9話 魚怪探索
警察とのやりとりがあった翌日、俺とエリは授業が終わるとその足で件の小学校へと向かった。
魚怪の犠牲となったショウタくんも行方不明となったレイくんも同じ小学校に通っていた。この地域の小学校は俺たちも通った母校でもある。小学校は山に面しており、校門は山へと続く坂を登る途中にある。山から続く川が学校の前の坂の横を流れており、魚っぽい見た目から水のあるその川に潜んでいるのではないだろうかと俺は考えている。川の横幅はそれほど広くはないが、意外と水深はある。あの魚怪がもぐれるくらいはあるだろう。
見知った道中を進む中、エリはずっと警察への文句を言っていたのだった。
「あんなに本気で伝えたのに信じてくれないなんてありえない!」
「廃教会まではついてきてくれたじゃん。俺だって実際に見ていなければ信じられないって。」
「そうかもしれないけど......。タイミング良く証拠隠滅したローブの連中が許せないわね!」
怒りの方向がローブの集団へと移ったようだ。
そうこうしているうちに小学校の近くまでやってきた。道中で巡回中の警察官とすれちがった。行方不明事件があったので当然パトロールをしているのだろう。ちなみに小学生達は俺たちが授業終わった頃にはすでに下校している。聞いた話によると今日から集団下校のようだ。
「この辺にくるのは久しぶりだな。」
「そうね。あ、校門のほう補修工事してるみたいよ。今日は工事の人いないみたいだけど。」
「まぁこの学校も結構古いしなぁ。」
「さて、どうするの?どこから見てまわる?」
「とりあえず川を見てみよう。やっぱりあの見た目だし、川の底に潜んでるんじゃないかって思う。」
俺たちは小学校の前を流れている川沿いを歩きながら水面にあの魚怪の影がないかを見てまわった。二手に分かれて探そうかとおも考えたが万が一魚怪に遭遇してしまった時に1人だと危険すぎると思い、一緒にまわることにしたのだった。結果として、川で魚怪を見つけることはできなかった。
「いないわね。」
「まぁそう簡単に見つかるとは思ってないけどさ。」
「次はどこを探す?」
「いや、そろそろ暗くなってきたし帰った方がいい。」
魚怪の目撃情報は無いため、おそらく日中はどこかに隠れていると考えている。逆に言えば、日が沈んであたりが暗くなれば自由に活動するということだ。小学校の周辺はまだまだ整備が進んでないあたりで街灯が少なく、日が沈むと完全に真っ暗になってしまう場所も多い。そんな暗闇で急に魚怪に襲われてはひとたまりもない。魚怪探索はできるだけ安全に行いたい。
時刻も19時前となり、夏とはいえあたりも暗くなる頃となった。俺たちは家の方角へと向かおうとしていたら、エリが急に呼び止めた。
「ちょっと待って。ねぇ、あれ。」
「あれ......?」
エリが指さす方向に子供が1人歩いていた。どう見ても小学生くらいの子供だった。その子供は真っすぐ小学校の校門の方角へと歩いているのだった。
「こんな時間に学校に向かってるのっておかしくない?」
「ちょっと声かけてみるか。」
俺は校門の方へと歩いていく子供に声をかけた。
「おーい。そんなところでなにをしてるんだー?もう遅い時間だし危ないぞー?」
だが子供からの返答はなかった。一瞬こちらを見ただけでまたすぐ校門の方へと歩いて行った。
「様子がおかしいな。」
「追いかけましょ。」
俺たちは来た道を戻り、子供を追いかけた。
「おい待て、なにしに学校に向かってるんだ。」
子供に追いついた俺はそう問いただした。子供はあきらかに様子がおかしく、虚ろな目をしていた。そして子供は小さな声でつぶやくように答えた。
「ショウタが......呼んでいるんだ......。」
ショウタといえば廃教会で魚怪の犠牲となったと思われるあのショウタくんのことだろうか。あきらかにおかしなことを言っている。返答を終えた子供は再び歩を進めようとする。そんな中、エリがその進行方向を指さして叫んだ。
「カイ!あれ!」
俺はエリが指をさした先を見た。小学校の校門の少し先、山の入口のところにそれはいた。
「魚怪だ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます