第8話 警察

 俺は朝の衝撃的なニュースを見た直後にすぐエリに連絡をした。どうやらちょうどエリも同じニュースを見ていたようで、動揺した様子だった。もしかしたら偶然の行方不明事件かもしれない。しかし同じ小学校の同じクラスの子だ。魚怪に襲われたのかはまだ分からないが、無関係ではないと思える。あの怪しいローブの集団に誘拐されたって線もあり得る。


「警察にあの魚怪のことを伝えたほうがいいんじゃないかな。」


 エリがそう提案をしてきた。たしかに警察も関連性を疑って動き出し、新たな犠牲者が今後も出てくる可能性を考えるとこのまま黙ってもいられない。俺もそう考えた。俺たちは近くの警察署へと向かったのだった。しかし......。


「あのねぇ......。君たち、子供が1人行方不明になっているんだよ?それをそんな怪物だのローブの怪しげな集団だのなんだのって空想の話で遊ぶのは不謹慎だとは思わないのか?」


 案の定、信じてはもらえなかった。急に魚怪の話をされても何も知らなければ俺だって空想の産物だと思っただろう。よく言う『漫画の見過ぎだ』という文言を突き付けられても文句は言えない内容だ。


「嘘じゃないんです!廃教会には血痕もショウタくんのランドセルも置いてあったんです!」


 それでもエリは食い下がった。そうだった。その2つの証拠があの廃教会にはあるのだった。たしかに、その魚怪やローブの集団が本当かどうかを信じてもらえなかったとしても、その2つの証拠を事件に関連性のあるものとして調べてもらえるだけでも進展があるハズだ。エリの必死さに根負けした警察官は、廃教会へとついてきてくれることとなった。だが、結果として俺たちは警察官に怒られることとなった。


「そんな......。」


 廃教会には血痕もランドセルも残ってはいなかったのだった。おそらくニュースになった時点であのローブの集団が改めてしっかりと証拠隠滅を行ったのだろう。何故最初からそうしなかったのかと思うほど綺麗さっぱり証拠は無くなっていた。証拠が嘘だと思った警察官は散々俺たちを叱りつけた後、激怒したまま警察署へと帰っていった。俺たちも廃教会をあとにし、帰路につくこととした。


「どうしよう......これから......。」


そう、このままではきっとさらなる被害者が出る。俺もエリもそう思った。警察にも信じてはもらえなかった以上、もう自分たちで動くしかないのだ。


「探そう。あの魚怪を。」


俺たちは魚怪を探し出すことにしたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る