第6話 手がかり
日曜日の昼,魚怪がいるかもしれない道中に細心の注意を払いながら俺たちは再び廃教会へと訪れた。中に人の気配はなさそうだったため,破壊されたままとなっている入口から入っていく。エリは男の死体を見たくないと目を閉じて俺の後ろについてくる。しかしその心配とは裏腹に男の死体はもう無かった。
「エリ,大丈夫だ。多分ローブの奴等が回収したんだろう。」
「本当!?本当にない!?」
「ないからもう目をあけろって。」
死体はなかったけど血痕は普通に残っていた。証拠隠滅するならもっとしっかりやってほしい。礼拝堂を一通り見たが血痕以外見つけることはできなかった。
「となると後は......。」
魚怪が出てきた右側の部屋だ。こちらの扉も魚怪によって破壊されており,中を覗くことができたが少なくとも魚怪がまだいるなんてことはなかった。中は魚怪が暴れたのか元々経年劣化で廃れていたのかボロボロだった。
「なんかいろんな物が転がってるわね。」
「本もあるけど......ここがまだ教会として機能してた頃の聖書かな。」
聖書は謎の言語で書いてあるなんてことはなく,英語や日本語で書いてあるごく普通のものだった。怪しい書物などはなかったが,ひときわ異彩を放つものが落ちていた。
「ランドセル......?」
黒いランドセルが落ちていた。ほこりもかぶっておらず,廃教会が教会としての機能を保っていた頃からあったものとは思えない。ごく最近置かれたものだ。
「もしかして小学生があの魚怪の生贄にされたの!?」
「でも血痕はないな。」
「あの男だって上半身まるまる食べられたのよ!小学生だったら丸呑みだってあり得るわ!。」
「たしかに......。」
俺たちが廃教会に侵入して男の呪文を唱える姿を見ている時,右隣の部屋では小学生が丸呑みにされていたのかもしれない。そう考えると背筋が凍る想いだった。
「ランドセルを調べたら身元がわかるのかしら。」
「気は進まないけど一応唯一の手掛かりかもしれないもんな......。」
後々警察がきて調べた際に俺の指紋が残ってるのはまずいと思ったので念のためハンカチ越しにランドセルを開けていく。すると中には教科書やノートが入っていた。
「名前は......,『京堂ショウタ』くんか。学年は3年3組って書いてあるな。」
「この辺の小学校となると,私たちの母校でもあるわよね。なんだかすごく嫌な気分。」
その後も廃教会を調べたが,他に怪しいものは見つからなかった。もしかしなくても,あのローブの奴等が魚怪に直接関係のあるものは回収していったのだろう。俺たちは廃教会を後にした。
家に帰ってすぐにエリから電話がかかってきた。
「テレビつけてチャンネル5のニュースを今すぐ見て!」
俺は言われた通りにテレビをつけてチャンネル5のニュースを見た。それは行方不明事件のニュースだった。行方不明になったのは父子家庭の親子2人。テレビの画面に2人の顔写真が表示されている。その片方は見覚えのある顔だった。あの廃教会で呪文を唱えていた男だ。そして表示されていた名前を読んでみると,男のほうが『京堂ジュンジロウ』で子どものほうが『京堂ショウタ』であった。
あの男は実の息子を生贄に捧げていたのだった。
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