第3話 開けてしまった扉
「エリ、どうやら噂は本当だったみたいだぞ。」
噂を流しているのが1階のおばちゃんだったり、目撃者が疲労困憊したサラリーマンだったりで信憑性が薄かった話だから正直暇つぶし感覚だったのだけど、どうやら真実だったらしい。
俺たちは念のためまわりに誰もいないことを確認し、廃教会へと近づく。扉に耳をすますと、なにやら男の声がボソボソと聴こえた。内容までは聴き取れなかったが会話をしている感じではなく、独り言のようだった。
「他に誰かいるわけではなさそうだけど、なにか呟いてるみたいだな。」
「なにをしているのかしら。」
「声は聴こえるけど小声で何を言ってるかまではわからないな。ちょっとだけ覗いてみるか。」
俺は少しだけ扉を開き、中の様子を伺った。扉の向こう側は礼拝堂で、長い期間放置されていた割には形を保っていた。かつては信者たちが座っていたであろう長い椅子がずらりと並び、礼拝堂の右側には扉がひとつあった。中は男がつけたであろうろうそくの火が明るさを保っていた。男は礼拝堂の奥でなにやら知らない言語を発しながらこちらに背を向けている状態だった。
「なんかの儀式でもしてるのか?」
「もう少しよく見える位置に行きたいわね。中に入ってみる?」
「そっと入って椅子の背に隠れるか。」
俺たちは音をたてないように気をつけながら礼拝堂の中へと入り、椅子の背の裏へと隠れて様子を伺った。この位置からなら男の様子がよく見える。
男は身長180cmくらいで、見た目からして年齢は30代くらいだった。俺たちが侵入したことにも気づかず何かを唱え続けている。
「少なくとも英語ではないな。どこかの国の言葉だったりするのか?」
「わたしも知らない言葉ね。」
俺たちは男に気づかれないように小声で会話をする。そんな時、右側の扉の向こうから『ガタガタッ』と物音がしたような気がした。
「今なにか物音がしなかったか?あの扉のほうから。」
「そう?わたしは聴こえなかったけど。」
「あれ、気のせいかな。」
しかし次の瞬間、激しく扉を叩く音が『ガンガンガンガンガン』と響き、俺が聴こえた音が気のせいじゃなかったことを知らせた。その音に男も反応した。
「おぉ、ついに!」
男は歓喜の声を上げ、音がしている右側の扉に注目していた。その異様な雰囲気にとてつもない嫌な予感を感じた。
「これマジでやばい現場かもしれないぞ。それこそ警察沙汰の案件かも。あの扉の向こうに他に人がいて襲ってきたら逃げきれないかもしれない。」
「たしかに......。今のうちに逃げよっか。」
だがその瞬間、扉は勢いよく吹き飛び中から何かが出てきた。男は言葉にもならないような声を上げ喜びに打ちひしがれていた。
「なによ......あれ......。」
俺とエリは見てしまった。破壊され吹き飛ばされた扉の向こうから歩み出たそれは人ではなく、魚のような頭をしたバケモノだった。
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