第2話 作戦会議

 放課後、俺たちは2人とも部活に参加していない所謂帰宅部なので帰りのホームルームが終わり次第家へと直行した。エリは帰宅後すぐ1階のおばちゃんのもとへと噂の詳細を聞きに行った。エリは朝早くにゴミ出しに行く際によくおばちゃんと話すためにおばちゃんと話し慣れているのだが、俺はあまり会うことがなく会話もほとんどしたことがないため、噂を聞きだすのはエリ1人に任せたのだった。やがて、噂の詳細を聞いてきたエリが俺の家へとやってきた。


「で、どうだった?」

「うん、噂の詳細なんだけど、まずおばちゃんが自分で見たことではないみたい。」


 おばちゃんが噂を流しているって時点で信憑性が薄かったのにさらに伝え聞きの話だったとなるとさらに信じていいのか怪しくなってきた。


「廃教会に入っていく人を見たってのはこの近くに住んでいるサラリーマンの人で、会社帰りに廃教会の前を通ったんだって。そこで廃教会に入っていく人影をみたらしいの。背格好からして男性だったって言ってるそうなの。」

「ちなみに時間は?」

「午前3時頃だったらしいよ。」


 その時間に会社から帰ってきているほうが問題な気がする。とんでもないブラック企業じゃないか。社会の闇を見てしまった。


「その時間帯に廃教会付近で張り込みしてみよう。もちろん補導されないように警察には注意だな。」

「あんぱんと牛乳もいるわね!」


 エリは形から入るタイプだった。

 こうして作戦会議は終了し、翌日が休日となる金曜日を待ってから作戦は決行された。両親が寝静まった後にお互い部屋を抜け出して教会へと向かった。エリは本当にあんぱんと牛乳を持ってきていた。

 廃教会と道路を挟んだところに駐車場があり、何台かの車が停まっている。その車の影に隠れて教会の前を見張る。現在時刻は午前2時を少し過ぎた頃だった。


「はたして、噂は本当かどうか......。とりあえず4時までは粘ってみよう。」

「はい、カイの分のあんぱんと牛乳。」

「え、俺の分も?あ、ありがとう。」


 まさかの2人分だった。もらったあんぱんを食べながら待ち続けて時刻は午前3時を過ぎた。


「噂通りならそろそろか。」

「あ、誰か来たわ。」


 スーツ姿の男が廃教会を通り過ぎた。ブラック企業勤めの近所のサラリーマンだった。


「ほんとにこんな時間まで仕事を......。」


 廃教会への侵入者よりもこっちのほうがよっぽど事件だった。歩き方からして見るからに疲労を感じさせた。廃教会へ入っていく男というのはあのサラリーマンが仕事疲れから見えてしまった幻覚なんじゃないかと疑い始めた頃、もう1人男が現れて廃教会へと入っていった。

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