第142話 空輸

私達はそのまま、コザの繁華街の方へ歩き、安そうな服屋で服を買い、着替えた。自治体連合軍の作戦で、こんなドンパチしたのは一度もない。いかに戦闘を避けて、目的を達するかが重要で、戦闘をすれば、一定の割合で戦力を消耗するからだ。


もうこれで懲りて、真栄田さんも私を開放してくれるだろう。


でも、その目論見は甘かった。ちょっと休憩に入ったカフェで、真栄田さんはぶつぶつ独り言を言っていた。私は恐怖からの独り言かと思ったら、突然


「よし、これで行こう。次は失敗しない」


と言い放ち、まだ諦めていないということが分かった。


私は付き合いきれないので、さきに親戚の家に送ってほしいと言った。親戚の家の住所はと聞かれて、分からなかった。おおよそこの辺かなという検討は付いているので、着いてから探すつもりだった。そう言うと、時間がないと言われた。


でも、私はもうこんな事するのは嫌だった。そう言うと、彼はある提案した。


「俺だけでやるから、あんたは安全な所で見ててくれ。その後で親戚の家に連れてってやる」


まあ、悪くない提案だ。私は待っているだけで良く、真栄田さんがうまく行けば親戚の家まで送ってもらえるし、失敗すればバスか何かで親戚の家を探せばよい。晴れて子ブタの代金も請求されないし。そして、見ている最中にバックレるということが頭に浮かんだが、その案はすぐに消えた。私は今所持金が0だ。まあ、最悪歩いて探すという方法もあるが、沖縄の距離感覚が全然分からないし、空腹に耐えられるか自信もない。


とりあえず、この真栄田さんしか頼る人がいなかった。


真栄田さんとタクシーで那覇中心街へ行った。この辺りに昔の仕事仲間がいるという。雑居ビルのような所に彼は入っていって、すぐに首を振って出てきた。知り合いはいなかったらしい。何度か別の場所に移動して同じことの繰り返しだった。


何回転職してるんだ?それに毎回知り合いはいないし、人望ないなー


私はふと、心のなかでこの真栄田さんを思いっきり罵倒している自分に気がついた。今まで人にこんな気持ちを抱いたことはなかった。いつも怒られないかビクビクし、自分が悪く人が正しくて、いかに自分を相手に合わせるか、そればかり考えていた。


自分の変わりように、ちょっと意外だった。


ある雑居ビルで、真栄田さんは入ったきりしばらく出てこなかった。私は退屈に道の端にしゃがんで待った。結構待たされた挙げ句に、やっと出てきた。


「空輸だ」


私は特に気にもせず、彼についてタクシーに乗り、那覇空港へ行った。空港は閉鎖されていてガランとしていた。空港建物から離れてフェンス沿いに歩くと、滑走路への扉が開放されていて、トラックがひっきりなしに出入りしていた。

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