第123話 告白



翌日の午後、ノリに公園に呼ばれた。


私は社長暗殺の計画がバレたのかと、少しドキドキしていた。


私は公園の木の幹を後ろに立ち、彼女は少し前の池の方を向き、私に背を向けていた。


彼女はなかなか口を開かなかった。しばらくして、やっと彼女は声を出した。


「私達の味方になって」


私は予想もしなかった発言に、言葉を失った。


「明日、連合の総攻撃が始まる。そうなると、みんなはあなたを憎み、殺そうとする。だから、今のうちに、私達に寝返って。そうすれば、私はあなたを守ることができる」


「なんで、私を助けてくれるの?敵なのに」


ノリはじっと下を見たまま黙っていたが、やがて決心したように言った。


「あなたを失いたくない」


私は今ひとつ理解できずにいた。


「あなたが好きだから」


ノリの言葉に、私はびっくりした。まさか彼女がそんな風に私を思っているとは思わなかった。


彼女が言うには、連合に忍び込んでいる九州側のスパイから、明日、自治体連合軍が九州に上陸するという情報を得たという。


連合軍が上陸すれば、九州の西部方面隊が反撃し、戦闘が起こるのは避けられない。そうすれば大勢の人が死ぬし、身内が亡くなった人たちは連合に敵意を持ち、私も当然今までのように快く迎え入れてもらいなくなる、いや、むしろ、復讐の対象になる、そういう話だった。


その辺の事情は、私も連合のスパイから聞いていたから知っていた。むしろ、私がびっくりしたのは、ノリが私に好きだと言ったことだ。


「いつから?」


私は恐る恐る聞いてみた。


ノリは、すぐに私の質問の意味を理解した。


「初めて会った時から」


意外だった。私はてっきり嫌われているのかと思っていた。


でも、私は本当は女だし、ノリは私を男だと、誤解している。その前提で好きだと言われているわけで、本来なら誤解を解かなければいけないけど、誤解を解くと、今度は私の身が危なくなるかもしれない。


私はやんわりと断った。


「そんな急に言われても」


ノリも、それが断りだと分かったようだ。


「そうだよね。もし、寝返るのが嫌だったら、私と一緒に二人で、どこかここから遠い所へ逃げよう」


それも出来ない相談だった。私は今晩の壮行会で社長を暗殺後、連合のスパイと一緒に船で本州に戻るつもりだった。


私は返事ができず、もぞもぞとしていた。


すると、ノリは私の方へ近づいてきて、顔がすぐにでもぶつかりそうな程まで近づいた。


ノリは目に涙を溜めていた。近くで見ると、ノリは普通の女の子なんだな、と思った。


私は返事できなかった。


ノリは更に近づいてきて、私の胸に頭を埋めた。彼女が私にもたれ掛かってきたので、私はついバランスを崩して、後ろへ倒れてしまった。ノリも一緒に倒れ、私の上に覆いかぶさるような形になった。


ノリは退かなかった。そのまま仰向けに倒れた私の上で泣いていた。


どうしよう?でも、ノリの希望は叶えられないから、彼女には悪いけど、ちゃんと断らないと。


そう思っていた時、突然、ノリが泣くのを止めた。


あれっ、どうしたんだろう?


と不思議に思っていると、彼女は片脚をなぜかモゾモゾさせていた。


何しているのかな?


彼女は片手を私の背中から抜くと、私の股間を軽くタッチした。


あっ、しまった。


彼女の片脚は私の股間の上にもろに接していた。そして、当然私は女だから、男ならあるべきものが無い。


彼女は胸に埋めていた顔を持ち上げると、目をまん丸にして私を呆然と見た。そして、次に彼女の顔は段々赤くなり、真赤になった。


彼女は私の上から立ち上がると、両手を口に当て、走り去った。


なんか、ずっと騙していたようで悪いことしたなあー。


もっと早く言ってくれれば、良い友達になれたかもしれない。


でも、ノリや他の九州の人達を助けるためには戦闘を避ける必要があり、そのためには社長の暗殺が必要だ。


私は作戦のことを考えることにした。

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