第119話 恋敵



数日後、ノリにバイクでアパートに送ってもらうと、同じ年くらいの男子が階段前に立っていた。


「お前、ノリとどういう関係だ?」


彼はケンカ腰で、今にも私に殴りかかって来そうだった。


私が連合から来たから敵意を持っているのかと思った。


「止めて。そういう関係じゃないから」


ノリが彼を一生懸命制止したが、彼は私に体当たりしようとこっちに向かってきた。ノリが間に入り、彼を止めた。


「早く家に入って」


ノリがそう言って、私がアパートの階段を昇ろうとすると、彼が叫んだ。


「やっぱ連合は情けねーなー。敵陣に来て女遊びかよ」


ここで言われるままにこの場を去ったら、認めたことになる。この九州で皆が私に興味を持つのは連合から来たということが大きい。だから、連合のイメージを下げるようなことはしたくなかった。それに、彼は根本的なところで勘違いをしているから、誤解が解ければ、この争いはすぐに終わると思えた。ただ、その勘違いを正せないのがどうしようもない点なのだが。


私は立ち止まって振り返った。とりあえず、ノリとは捕虜と監視役の関係だと言った。彼は全く信じなかった。よく考えてみると、この年代の男子とはあまり接したことがなかった。バイトではもっと歳上ばかりだった。彼らは基本的に話が通じるが、この年代の若い男子は感情的で、私は苦手だ。


「俺と勝負しろ」


彼は言った。えっ、と思ったが、こちらの反論を言う前に、彼は場所と時間を指定した。


「明日の午前10時に、河川敷だ。逃げたら、今後ノリには関わるな」


それだけ言うと、彼はノリに待ってろよ、と肩を叩き、去って行った。



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