第118話 モテ期
食事は大抵炊き出しで食べるようになった。自分と全くかかわり合いが無い人達と思うと、なぜか周囲の視線が気にならなかった。
私が連合から来ているということが、段々広がったようで、別の炊き出しの箇所でも、よく人に話しかけられるようになり、その度に私の周りに人だかりができた。最初は九州以外の話を知りたがるが、話しているうちに私の個人的な話になり、いつの間にか私に付き合っている人がいるかという話題になった。そして、その話題になるとノリの機嫌が悪くなった。
ある時、ある子が私に聞いた。
「典子さんと付き合っているの?」
典子さんとはだれかと聞くと、いつも一緒にバイクに乗っている人だと答えた。ノリのことらしい。
彼女と付き合っている?
私は捕虜の身で、彼女は私の監視役で、ただそれだけだ。いつも一緒にいるから、事情を知らない人にはそう見えるかもしれないけど、私は無理矢理に彼女と一緒にいるだけだ。
否定したが、信じていないようだ。それに、ノリの方も私に好意を持っているような素振りは全くなかった。
「いないんだったら、私と付き合わない?」
その子は続けた。私はびっくりした。今まで人から付き合って、って言われたことがなかったし、それにこんなに軽い感じで告白?することに。
私はここでは男の子の振りをしているから、男子と思われている。だから、女子から告白されるのは、性別としては合っているが、それ以前に、私は性格に難がある。人として、付き合って楽しくないだろう。時間的にそんな余裕ないし、もし付き合ったとしても、すぐに性格のボロが出るのは確実な気がした。
本能的に、私は断った。
「残念だなぁー、気が向いたら教えて」
彼女はそう言って、全く残念そうな顔をせず、クルッと向きを変えると、どこかへ歩いて行った。
他の炊き出しや、場所でも、良く話しかけられた。みな、私ともっと仲良くなりたいようだった。今までそんな経験がなかったから、最初はなぜか分からなかった。男子として、見た目が良いのか?それとも、いずれ別れる前提で接しているから、そのさっぱり感が受けるのか?
あと数日で別れる訳だから、特にメリットを感じなかったけど、悪い気もしなかった。
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