九州
第110話 外交船撃破
日本に戻って、私は以前と同じように、また厨房でバイトを続けた。
ロシアから天然ガスと原油が安定して供給されるようになり、自治体連合内の燃料不足は徐々に解消されつつあった。停電もほとんど起こらなくなり、社会は安定を取り戻しつつあった。
ただ、過去の日本の形からはほど遠かった。北海道、九州、沖縄は自治体連合にくみしていなかった。北海道は旧日本政府が統治しており、沖縄は中国軍の占領下にあった。九州は最初は中国軍に占領されていたが、地元の有志が反乱を起こし、一部の都市で中国軍を撃退。その後、自衛隊の西部方面隊を掌握し、九州全土から中国軍の排除に成功していた。その地元の有志とは、ある建設会社であり、その社長が事実上の九州の支配者であった。
自治体連合は北海道と九州に対して統合を提案していたが、交渉は難航していた。北海道の旧日本政府は自分こそが正統な政府であると主張していたが、自治体連合から見ると、旧日本政府は東京を捨ててさっさと北海道に逃げ、日本統一の何の努力もしていないため、到底正統な政府とは認められなかった。
一方、九州も頑なに自治体連合との統合を拒否していた。自治体連合軍が関門海峡を渡ろうとすると、砲撃を受けた。九州の人達の今後の感情を考え、自治体連合軍は進行を中止し、関門海峡を挟んで、両軍がにらみあっていた。
非公式の交渉は続いていたが、遂に自治体連合側は最終判断を下すべく、副知事を九州に派遣し、最終通蝶を突き付けることになった。
そして、なぜか、また、私が同行に指定された。今までの実績からという理由らしいが、それらは全部たまたまであって、私の成果ではないが、上の方の人達はその辺が理解出来ていないようだった。
私は呉まで行き、そこから、副知事と一緒に護衛の一員として、特務艇に乗り、博多港を目指した。途中、関門海峡を通る時、両岸に戦車が対峙しているのが見えた。
北九州市の沖合を少し超えた辺りに出た時、左舷の海中に一筋の白い線がこっちに向かってくるのが見えた。誰かが魚雷だーと叫んだが、気付くのが遅かった。魚雷は左舷の中腹で爆発した。付近にいた人は爆風で吹き飛んで、同時に船が右に大きく傾いた。
私はその時、船の前の方にいたけど、爆音と爆風で吹き飛ばされそうになり、近くの手すりにつかまり、かろうじて海へ転落せずに済んだ。でも、船の中腹に大きな穴が開き、みるみるうちに船は沈み始めた。よく見ると、船の後ろ半分は大破して原型を留めていない。何人か海に投げ出された人がすでに海に浮いていた。私はどうして良いか分からず、身近の救命ボートや浮き輪を探したが、見当たらなかった。そうしているうちに、火が燃料タンクに引火し、再度爆発が起こった。私はその衝撃で海に吹き飛ばされ、意識を失った。
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