第102話 空の宿
私は宿の前に原チャリを止めると、表玄関に向かった。宿は明かりが点いておらず、真っ暗だった。
そっと玄関の扉を押した。施錠されておらず、すーっと扉は音もなく開いた。
「すみませーん」
声をかけてみたが、物音一つしなかった。私は扉をもう少し開け、建物の中に入った。
「すみませーん」
いないのかな?
でも、宿屋なので休みということはないだろうし、玄関の施錠がしていないというのも変な気がした。
室内は真っ暗で、よく見えなかった。3日前は裏口から出入りしたから、表ロビーの様子を薄っすらと見ても、何か以前と違いがあるか分からなかった。裏口やまかない部屋を探しに、建物の奥に進んだ。
ロビーから小さな通路のようなところへ進んだ時、急に後ろから体を押さえられ、同時に口と鼻に強烈な匂いのするハンカチを押し付けられた。息を止めてその匂いを吸い込まないようにしばらく抵抗したけれど、押さえつけられたまま身動きできず、苦しくなりついちょっとだけ吸い込んでしまった。急にめまいがして意識を失った。
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