第99話 護衛全滅

知事の周りの職員が知事を避難させるために、知事を隣の部屋に誘導した。市庁舎は中央に通路があり、その両側にそれぞれ部屋がある作りになっているが、中央の通路を通らなくても、部屋から部屋へ扉があり、隣の部屋には移動できた。


スーツを着た職員は実は民間人の振りをした自衛官だったが、彼ら二人は知事と本物の職員を連れて4人で隣の部屋に移動した。今いる部屋は表通路に堂々と、日本代表団控室と看板が出ていて、危険だった。


私も一緒に隣の部屋に行った。


この階の各部屋は、昨日までの準備の段階で、事前に見ていた。


隣の部屋も同じくらいの大きさで、何もない会議室のような部屋だった。私たちがその部屋に入ると、直前までいた部屋との間の扉の鍵を締めた。私たちは更に奥の、もう一つ隣の部屋に移動した。そこは来訪者へのロシアの歴史を説明するための展示室になっていた。その奥に、小さな倉庫があり、知事をそこへ避難させる計画だった。


隣の隣、元の控室で銃撃音がした。市庁舎内の他の階のロシアの警察は、まだ5Fに到着していなかったので、知事を守るのは日本の護衛だけだった。


元の控室での銃撃音が静まり、隣の部屋の扉を打ち破る音が聞こえた。隣の部屋は誰もいないので、その後、中央通路をこちらの部屋に走ってくる足音がした。


その時、5Fのエレベータの到着の音がして、中央通路で激しい銃撃戦が始まった。私と護衛二人と知事の間に、少し安堵の雰囲気がただよった。しかし、それもつかの間だった。


私たちの部屋の扉の鍵に対して、数回銃撃がされて、扉の鍵の周辺が凸凹になった。護衛が知事に奥の小さな倉庫のような部屋に隠れるように指示した。


「申し訳ない」


そう言って、知事だけがその小さな倉庫に入った。


私と護衛二人は展示室に取り残され、私は呆然とした。護衛は武器を持っているけど、私は何もない。私は扉近くの騎士の鎧の後ろに隠れた。護衛二人は扉の真正面で銃を構えた。


通路での銃撃戦が止んだ。どっちが勝ったか分からない。次の瞬間、再度、扉を撃つ音が聞こえ、扉が乱暴に開けられた。少なくとも、警官隊は侵入した賊の排除には成功していない。


半分空いた扉から機関銃の先が見えて、室内に向けて乱射した。2名の護衛はちょうどその真向かいにいた。そしてかつ一瞬発砲の判断が遅れた。二人の護衛は数発発射したが、すぐにばさっと倒れた。

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