第88話 未熟の自覚
桟橋に、友梨が見えた。錬太を見ると目に涙を浮かべた。錬太は桟橋に上がると、彼女の前でうつむいて、少し会話したようだった。私からは遠くて何を話しているか聞き取れなかった。
私はジェットスキーを陸に上げて、倉庫に戻した。錬太の所に他の漁師たちが集まってきて、話していた。私は友梨のところへ行った。
「錬太、やっぱりここに残るって」
少し嬉しそうに彼女は言った。まだまだ自分が未熟だと気づいたからだという。
私のやったことで、二人がうまく行ってよかった。今までどこへ行っても後味の悪い思い出しか残らなかったけど、四国で初めていい思い出が出来た。
私は友梨に、さよなら、とお別れの言葉を言った。
「錬太が、あなたが誰か知りたがっていた。勇気があるって」
私は、二人の話を私が聞くばかりで、彼らにあまり自分のことを話していなかった。私はただの通りすがりだよ、と答えた。
私は、昨日給水作業をしていた場所に戻って、事情を話した。給水作業はそれから数日で終わり、私は久しぶりに大宮に帰った。今までずっと一人でいることが当たり前だったけど、誰かと一緒にいるというのも悪くないかも、と思った。
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