第86話 航行不能
今日、錬太がどの辺りで漁をしていたかを聞き、私を乗せて、再びその辺りへ行ってくれないかと、何人かの漁師に頼んだ。
でも、漁船を出してくれる人は一人もいなかった。周囲を見渡すと、漁港の端に倉庫があり、その中にジェットスキーが台車の上に乗せてあった。近くに水中銃があったので、それも手に取った。
私は勝手にその台車を引いて、水際までジェットスキーを運ぶと、水上に下ろし、乗った。
エンジンを掛け、片手に水中銃を持ちそのまま出発した。
聞いた場所付近を目指し、しばらく進むと、だだっ広い海上にポツンっと小さな点が見えた。近づくと漁船だと分かった。さらに近づくと、船上に人影が一つあり、それは錬太だった。
私は減速して、漁船に接岸しようとしたら、漁船が傾いているのに気付いた。
「どうしたの?」
彼はマストにしがみついていた。
「スクリューに編みが絡んで、動けない。それに」
彼がそこまで言いかけた時、ジェットスキーがガクンと揺れて、私は海に落っこちそうになった。かろうじてバランスを取って転落を免れたが、海面を見ると三角の背びれが悠々と泳いでいた。
錬太は、そのサメは頭が良く、網をわざとスクリューに巻きつけて走行不能にして、船の網を引っ張り横転させるつもりだと言った。
ジェットスキーから離れたサメは、再び漁船に向かい網を引っ張り、更に漁船を傾けた。網を引っ張るだけではなく、漁船本体に体当たりもしていた。
漁船はかろうじて横転していないが、浸水し始めていた。漁港で見た他の船よりも、喫水が深くなっていた。
ジェットスキーで漁船を引っ張って、港まで帰るのは無理っぽい。私は錬太だけをジェットスキーに乗せて、帰ろうと思った。
「こっちに飛び移って」
私はもう一度漁船に接岸しようと近付いて、錬太へ手を伸ばした。すると、サメはそれを見ていたかのように、ジェットスキーと漁船の間に大きな口を開けて割り込んできた。
確かに頭のいいサメだ。
私は、水中銃に銛をセットし、海中を泳いでいるサメの背中に向けて発射した。銛は刺さらず、背中の皮で跳ね返された。
サメの皮はとても硬いようで、この水中銃では貫通できない。
水中銃が効かないとなると、逃げるしか方法はない。サメの気が他に向いている時に、錬太をこちらに乗せよう。
もう一度漁船に近付いて、手を伸ばした。錬太と手を握った。彼をジェットスキーの方へ引っ張り寄せて、ぽんっとジャンプして、ジェットスキーに乗せた時、サメがジェットスキーに体当りしてきた。私は海へ投げ出されてしまった。錬太はジェットスキーに掴まって無事だった。
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