第82話 14才の夫婦

外はいつの間にか暗くなっていた。


「泊まっていきなされ」


おじいさんが私に言った。友梨もぜひ、と勧めた。私はバイトなので、隊の方では管理外だったので、外泊しても特に問題なかった。私は泊めてもらうことにした。


私は台所で、友梨と、さっき解体したイノシンの肉を細かく切り、鍋にするのを手伝った。もう一人の家族、謎の家族は、海に漁に出ていて、そろそろ帰ってくる時間という。


ガラガラと音がして、家の玄関の扉が開き、男の子が入ってきた。手に30cmくらいの魚を持っていた。ドカドカドカっと座敷に上がってくると、夕食何?と言いながら、台所に来た。彼女が私を紹介した。彼は私を見て急に静かになり、魚を台所に置くと、すぐに居間へ出ていった。


私は、彼は彼女の弟と思った。


鍋が出来て、居間のちゃぶ台へ持っていった。ご飯は薪で炊いて、釜をかまどから取り出し、居間に運んだ。


4人でちゃぶ台を囲んで、食べ始めた。友梨が私のことを色々、その男の子に話した。彼の名は錬太と言った。年は13で、彼女より一つ下だった。彼は物静かに、むしろ無愛想に、何のコメントもなく、彼女の話を聞いていた。


少し離れた所に敷いてある布団で寝ていた赤ちゃんの一人が泣き始めた。


錬太がすぐに近寄ってあやした。そのあやし方がとてもうまくて、とても人の子をあやしているようには見えなかった。私はつい、誰の子?と聞いてしまった。


「言ってないの?」


彼は友梨の方を見た。一応言ったけど、と彼女は答えた。


「俺達の」


彼は屈託なく、そう言った。


赤ちゃんが泣き止まないので、友梨が来た。彼女は赤ちゃんを抱くと、自分の服のボタンを開け、胸を出した。赤ちゃんはすぐに乳首に吸い付き、母乳を飲み始めた。


私は聞きたいことを質問して良いのか迷った。この辺りでは、このくらいの歳で子供を産むのが普通なのだろうか?それとも、この夫婦が珍しいのか?その前に夫婦なのだろうか?年齢的に籍は入れられないから、一緒に暮らしているだけ?知り合ったきっかけは?


赤ちゃんは母乳を飲んで満足すると、また寝てしまった。彼女は胸をしまうと、錬太とのことを話し始めた。


彼らは同じ小学校で、一年違いの幼馴染だった。家が隣なので、小さい頃からよく一緒に遊んだ、隣と言っても100mくらい離れていたが。


友梨が中学に上がり二人はあまり会わなくなり、友梨は新しい環境でなじむのに苦労していて、錬太は友梨に会えず寂しかった。ある日、久しぶりに学校帰りに会い、神社の境内裏で話し込んでいるうちに、お互い寂しさと久々に会ったうれしさで、つい一線を越えてしまった。ちょっと試しに挑戦してみようという位の気持ちだった。


でも、たった1回で、友梨は妊娠してしまい、中2の夏休みの終わりに三つ子を出産した。


友梨の家の裏の畑の作物を食べたり、錬太の父が漁師なのでとれた魚を持ってきてくれたりしていた。錬太は父子家庭だったが、その後父が漁に出て帰らず、それ以来友梨の家で、友梨の祖父と6人暮らしをしている。父が帰らなかった日の前後に大きなサメが近海を泳いでいるのが目撃されたため、サメに襲撃されたという噂だった。

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