第67話 カーチェイス

しばらく進むと、横の狭い通りからパトカーがサイレンを鳴らしながら走ってきた。


「あっ、パトカーが追いかけてくる」


福山さんが後ろを振り返って、言った。


もちろん私たちの車は赤信号無視、スピード違反、その他危険な運転をしているが、それはこの地域を中国軍から開放するためであって、地元の警察に追われるのは納得いかなかった。車は再び少し大きめの通りへ出た。


市内はところどころに車が走っており、それらは赤信号で止まるため、交差点前は車が数台止まっていることが多かった。そんな時、龍峰さんは反対車線を逆走した。


交差点で逆走した時、横から来た車と接触し、ハンドルを取られた。クルクルクルっとスピンし、横っ腹がガードレールにぶつかり、相手の車は交差点前の店に頭から突っ込んだ。私たちの車のボディーの横は大きく凹んだが、車の走行機能には問題なかった。龍峰さんはすぐに車を発車させた。


だんだん郊外に出て、周囲の家が少くなり、再び山道を進み始めた。パトカーはまだサイレンを鳴らしながら、追いかけてきた。


福山さんが、警察だけなら事情を説明すれば見逃してくれるかも、と言い出した。私にはその辺の判断は分からない。でも、龍峰さんは反対した。警察は直属の上の命令で動いており、ここではそれは中国軍だから、期待できないと。


私たちの車は狭い山道をどんどん登っていった。パトカーは相変わらず追いかけてきていた。見通しの悪い、1車線の山道で、山の峰に沿って急カーブが続いていた。乗用車なら交差できるが、大型トラックだったら対向車と交差できないくらいの狭さなので、時々待避所が設けてあった。道の片側は山肌で、反対側は斜面になっており、木は生えているものの、ガードレールがなかった。


パトカーの方がエンジンが馬力があるせいか、だんだん車間を詰めてきた。後ろからパトカーが、ドンッとぶつかってきた。さすがに日本の警察だけあって、発砲はしなかった。


「ゲリラの支配地域に入れば、大丈夫なはずだ」


龍峰さんはそこまで逃げ切るつもりのようだ。


”急カーブ注意”の看板が見え、道の先が見えないカーブが迫ってきた。私たちの車がカーブを曲がった瞬間、目の前にダンプカーのボンネットが迫った。


龍峰さんは急ブレーキと急ハンドルで、正面衝突を避けようとしたが、私たちの車は道から外れ、斜面に飛び出した。車が宙に浮いた感じがした。


そのまま車は横から着地し、横転した。横転して止まるかと思ったら、更に横転の速度が上がって、また横転し、斜面を回転しながら落ちていった。


私はシートベルトをしていたけど、上半身がグラグラと車内であちこちにぶつかるので、運転席のヘッドの部分にしがみついて、体を固定した。

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