中国

第64話 解放ゲリラ



自治体連合は、関西の次は、中国地方を統合することを考えていた。


中国地方は、海田市の第13旅団本部は中国軍の配下になっていたが、岡山や兵庫中心に中国軍に反対する動きが大きくなり、中国軍や13旅団の活動に対して、様々な妨害工作を行っていた。彼らは解放ゲリラと自称していた。


自治体連合は、自らの戦闘被害を抑えるために、解放ゲリラを支援し、解放ゲリラに中国軍を掃討させようとしていた。


しかし、解放ゲリラと中国軍の小競り合いは長引き、なかなか決着がつかなかった。


一方、呉の海上自衛隊基地は、中国地方で唯一自治体連合に付くことを宣言したが、そのために、中国軍やその指揮下の13旅団の攻撃を受けることになった。呉基地はなかなか落ちず、中国側は韓国に援軍を要請し、韓国は受けた。


韓国も首都ソウルが中国からの核攻撃を受けて壊滅状態であり、とても国外に介入している余地はなかったが、日本を占領するチャンスに飛びついた。


自治体連合は、韓国軍が島根に上陸したとの情報を得て、呉を守るために、解放ゲリラと共同作戦を取るために、急遽工作員を解放ゲリラに送ることになした。



私は大宮駐屯地の厨房で、バイトを続けていた。


ある日、小隊長に呼ばれて、会議室に通された。この小隊長は、偵察衛星の奪還作戦を私に伝えた人であり、私はまた何か任務を与えられるのではないかと不安になった。


もう、あんな危険な目には遭いたくなかった。


「水崎3曹を覚えているかい?」


私は突然、関係ない話題を振られ驚いたが、すぐに彼のことを思い出した。白川郷で川に飛び込んだ際に、はぐれてしまった人だ。その作戦班でも、彼のことは死んだものとして扱っていた。私はうんと答えた。


「彼が生きていると情報を得た。そして、中国地方で反中国軍のゲリラを指揮しているらしい」


小隊長は、中国地方の状況を私に説明し始めた。自治体連合軍は、東京攻略のため、戦力の過半を関東に集中しており、中国地方と接する関西地方の部隊は手薄であり、中国地方への侵攻は時間がかかること。広島の呉の海上自衛隊基地は、中国地方で唯一、中国軍の配下に入らず抵抗を続けており、その防衛を巡って膠着状態であること。呉基地を中国軍に占領されると、瀬戸内海の制海権を中国軍が得ることになり、大阪が危険にさらされること。中国軍は中国本土の混乱で、本土からの援軍を期待できないから、韓国に呉攻略の援軍を依頼し、韓国の承諾したこと。その韓国軍が島根に上陸したこと。つまり、呉基地が危ない、よって大阪が危ない。


自治体連合軍の主力部隊を呉防衛に向けるにはとても時間が足りないので、水崎3曹指揮するゲリラ部隊に韓国軍の妨害を依頼することになった。


「君は水崎3曹と顔なじみだから、君がいると話が進みやすいと推薦を受けた」


いや、私のような無力な者が行っても対して変わらない。それに、白川郷で川に流されて、私たちは4人で先に進んでしまった。結果的に水崎さんを見捨てた形だ。場合によっては、恨んでいるかもしれないから、逆効果だと思った。


私はその様に言った。彼は少し考えたが、口を開いた。


「ゲリラの活動地域は、第13旅団の警備領域で、中国軍の支配地域だ。だから、家族連れを装ってゲリラに接触する計画だ。そのため、若い人がいた方が家族っぽく見えるという理由もある」


私に選択権は無いようだ。



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