第42話 寂しい人

食後、屋敷から散歩に出て、島を一周してみた。南方の気配のある、のどかな島だった。ヤシの木が生え、海岸の砂は真っ白できれいだった。



屋敷に帰ると、使用人がヘリの準備ができていると伝えた。


私は会長と一緒にヘリで東京に帰った。


彼のペントハウスから、大宮の自宅までは、車で送ってくれることになった。彼とはペントハウスの玄関で別れた。彼は、また私に会いたがった。私は返事をうやむやにした。


彼と今後も会っても、私には何のメリットもないと思えた。その気配を彼は感じ取ったようで、少し寂しそうにした。


私の家に向かう車の中で、私は、物質的に恵まれても、幸せとは関係ないと思った。

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