第5話 銃撃戦

二人の男性がいた。浜田さんが話し、第6師団から派遣された人たちだと分かった。私は浜田さんの後について、本殿に入って、挨拶した。彼らは1士の岡本さんで25才、 同じく1士の佐田倉さんで25才だった。

二人は私が若いのに驚いていた。

自己紹介をして、アルバイトだということを言った。

しばらくすると、もう二人が中に入ってきた。30才くらいの男性と、20才くらいの女性だ。男性の方は恰幅のいいいかにも自衛官という感じだった。女性の方はとても背が高く180cmくらいありそうだった。彼らは自己紹介し、12旅団の新発田から来たと言った。男性は水崎3曹と名乗り、女性は張本2士と名乗った。女性は無愛想だった。

今後の作戦を話し合っていると、境内の前に、数台の車が音を立てて止まり、各車両から数人の武装した兵士が降りてきた。制服から中国軍のようだ。彼らは境内に入ってくると、まず拝殿に発煙弾を入れ、内部を捜索した。

明らかに、私達を探しているようだ。

「まずい、逃げろ」

次に、中国兵は本殿に向かってきた。発煙弾が窓から打ち込まれて、床に転がり、もうもうと煙を撒き散らした。

私は服の袖で口を覆い、腰を低くして、煙を避けた。中国兵が入り口から入ってこようとしたので、こちらの隊員がすかさず小銃で応戦した。

中国兵は本殿に私達が潜んでいると分かり、後退りし、木製の扉に向かって、一斉に機銃掃射してきた。こちらの隊員も、機銃を準備し、応戦し、しばし機銃の撃ち合いになった。

しばらくすると、向こうの機銃が一旦止んだ。どうしたのだろうと、岡本さんが窓の隙間から外を覗いた。

「迫撃砲だ、後ろに下がれ」

私は銃の撃ち方を知らないので、先に本殿内部の左後ろに下がっていたが、全員が後ろに下がってきた。

その後、すぐに扉が吹っ飛び、右後ろで大きな爆発があった。その近くにいた岡本さんが血まみれで倒れていた。

私はたしかに怖かった。でも、副知事救出の際や、仙台での集団発狂で、何人かひどいけが人や血を見てきたので、足が震えて動けないということはなくなっていた。ただ、このままでは全滅だろうということは予想がついた。

「後ろも囲まれてる」

水崎さんがそう言った。ほんの一瞬、全員の間に降伏しようかという空気が流れた。ただ、中国軍に降伏して、ただではすまないだろうな。

多分、殺されるだろう。運が良ければその場で、運が悪ければ拷問後に。

私は急に自分の置かれている立場が、どうしようもなくすでに死に瀕していると悟った。初めて死にたくないという感情が強烈に沸き起こってきた。

再び、中国軍からの銃撃が始まり、以前にも増して強まった。再度、迫撃砲を打ち込まれたら、もう終わりだろう。

私達は、じわじわと後退りながら、迎撃をした。が、押され気味なのは変わりなかった。

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