第2話 新たな神器
僕はギクリとした。
自宅のポストに見覚えのある茶封筒がはさまっていたからだ。
「まさか……」
生唾を飲み込む音がはっきりと聞こえる。
辺りを伺いながら封筒を引き出し、震えながら裏面を確認した。
『あなたの夢を実現しましょう』って、この文言……あぁ、間違いない、これはハッピーペンが入っていた茶封筒だ……。
そう確信した瞬間、歓喜が全身を貫くのを感じた。
僕は茶封筒を抱えながら小走りに自宅に入り、自室に入ると廊下をのぞき込みながら隠れるようにドアを閉めた。
呼吸を整えながら腕を組む、視線の先には茶封筒があった。
「あなたの夢を実現する? 前回は思いを叶えるって書かれてたような気がするが……」
僕は興奮気味に茶封筒を開いた。
「あれ? ペンが入っていない!」
中身はペンではなくドクロがプリントされた袋が入っていた。
――またドクロだと?
思わず顔が歪む。当然ながらメーカー名などは見当たらず、透けた本体からは不思議な光を放つ何かがが蠢いているように見えた。ヤバイい感じが、どんよりと伝わってくる。
説明書のカードにはこう書かれてあった。
『これは夢を実現する枕カバー! これでひと眠りすれば非現実が目の前に! 使用回数は無制限! いまこそ諦めていた夢を実現しましょう!』
この枕カバーで夢を実現?
これで寝れば夢が実現だなんてありえるのか?
僕はドクロな包みからそっと枕カバーを取り出し机の上に広げた。
あやしげなオーラが悶々と漂い、編み込まれた繊維は生物のようにピクピクと脈動している。
「うそだろ、ここに頭をうずめて寝るのか……」
そう想像しただけで背筋が凍るのを感じた。
同時に失望感も感じてもいた。中身を確認するまでハッピーペンのつもりでいたからだ。
しかしハッピーペンといい何で僕にこんなものが送られてくるんだ。
だが、不信感はあっても興味がないわけではない、すでにカバーに枕をつめベットの上に置いてある。準備万端おまちどう後は寝るだけだ。
僕はベットに座りゆっくりと身を傾けた。
枕カバーが頭にふれる。
同時に枕はピンク色に輝き部屋全体を染めた。
僕は思わず悲鳴を上げ飛び起きる。なんだこれ、なんで寝るのに光るんだよ普通逆だろ。
疑惑に満ちた視線が枕をつついた。
まてまて、使う前によく考えろ、説明書には夢を実現と書いてある。回数制限もなく、なんのリスクもない、それでポンと夢が実現されるものなのか、これで夢がかなうなら人生イージーすぎるだろう。ん、まて、夢が叶う、夢が実現、叶うと実現の違いは……。
僕は頭を抱えて膝をついた。
説明書に夢が叶うと書いていない、書いてあるのは実現だ。これってマズイ夢も実現されるってことじゃないのか……つまり死ぬ夢を見たら……死ぬってこと? これってとんでもないリスクじゃないか、制限がないのはそういうことだからかって、ひっひぃぃぃぃぃぃぃ。
僕は枕カバーをはぎ取り、指でつまんでゴミ箱に捨てた。
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