5-13

「――ふむ。取りあえず、私が製作した義足は大活躍だったということだな」

「話を端折らんでください、先生」


 ニコラスの抗議を傲然と無視したアンドレイ医師は、取り外され完全分解された義足に夢中だ。

 各部品ごとに計器やパソコンと接続し、その数値を逐一書き留めている。


「しかしまあ、大活躍だったというのはあながち間違いでもあるまい?」


 アンドレイ医師はペンで診察室角に設置されたテレビを指し示す。


 テレビでは、まさにミチピシの一件についてが報じられていた。


 《――速報です。五大マフィアの一つ『ミチピシ一家』が政府に対し、自領を〈部族政府自治区〉として認定要請を出した件について、政府から公式見解が発表されました。3日前の10月30日、チピシ一家現当主カレタカ・オーハンゼーが、自領を政府直轄地に明け渡す代わりに、自領を〈部族政府自治区〉として認定するよう交渉を呼びかけました。これに対し大統領行政府(ホワイトハウス)は、「アメリカは犯罪組織に決して屈しない。しかし、今回の交渉は特区に巣食う犯罪組織撲滅の大きな一歩となる可能性がある。今後は慎重に交渉を進めていきたい」とのことです。一方、野党からは反対の声が相次いでおり――》


「ほお。悪くないじゃないか」

「…………ここからが本番ですよ」


 画面が切り替わり、オーハンゼーが映った。


 ミチピシ本部前に設置された演壇に立ち、民間報道陣を前に老人は堂々たる風体で声を張り上げていた。


 《――我々の目標は政府管理下の自治区ではない。われわれ先住民と、我が領にやってきた移民たちの自主独立を実現し、民主主義に基づく統治を実現する。そのための第一歩である。ミチピシ領はもはや暗黒街ではなくなった。だがこの街に巣食う悪は未だ蔓延っている。ここにお集まりの救済連合の諸君! 我々と諸君らの目的は合致した。これからは手を取り合い、共に闘おうではないか――!》


 流石だな。


 画面端でざわめく集団を見やったニコラスは、オーハンゼーの老獪さに舌を巻いた。


 あの夜ニコラスが提案したのは、ミチピシを部族自治区として政府に認定要請を出すこと、その一点のみだ。


 3日前のあの日、オーハンゼーではなくニコラスが南瓜頭の少年を処断したのも、のちのち政府と交渉するうえで、ミチピシに汚点を残さぬための配慮だった。


 そしてミチピシ内で救済連合が我が物顔をしていられたのは、特区という無法地帯ゆえのことだ。

 本当の意味で政府直轄の自治区となれば、当然、合衆国憲法に縛られることとなる。そうなれば、救済連合の勝手にできまいとの判断だった。


 しかしオーハンゼーは、たった一つの演説で、救済連合から大義と活動場所の双方を取り上げてみせた。


 救済連合に、もはやミチピシ領で活動する理由はない。

 彼らが本当に「民間人を五大マフィアから救済する」ことを目的としているなら、彼らはミチピシ領を出て他一家の領内にいかねばならない。


 そして彼らに、それほどの気概があるとは思えなかった。


「政府は、承諾しますかね」

「するとも。現時点では、そうせざるを得ない。五大からようやく出た親米派だ。奪われた特区を取り返すためにも、必ず乗ってくる。FBIや合衆国安全保障局USSAも嫌とは言えまい。これでミチピシ領を橋頭保に、五大マフィア摘発に乗り出せるからな」


 それが心配なんですよ。


 USSAという名に、ニコラスはそっと奥歯を噛み締める。

 一応手は打ってはいるが、相手は長年世界を相手に権謀術策を巡らせてきた組織だ。


 自分のような素人で、どこまで太刀打ちできるか。


「――ふむ。やはり排熱処理と耐久性に課題があるか。まあ初号機としては、まずまずといったとことか」


 医師の独り言に我に返ったニコラスは、眉間に深くしわを刻んだ。


「そういえば先生、義足になに仕込んだんです?」

「ん? ああ、従来通りの空圧駆動では面白みがないのでね。少しアレンジを加えてみたんだ」

「俺は普通のをと頼んだはずですが」

「だが製作者は私だ。格安でつくっているんだ。多少のことには目をつむってもいいと思うがね」

「目をつぶるレベルで済まなかったから言ってるんです。ズボンは焦げるし、義足は勝手に動くしで散々だったんですよ? なんか義足の中に変なもん入ってるし」

「隠し武器はロマンがあるだろう?」

「ひと蹴りで人間が数メートル吹っ飛ぶのもロマンですか」

「素晴らしい性能じゃないか」


 どこがだ。打ちどころが悪かったらあれ死んでるぞ。


 しかし、その義足のお陰で南瓜頭の自爆を防げたのは事実なので、ニコラスは嘆息するだけに留めた。


 ともかく普通の義足に戻してくれ、と、頼もうとした時。医師がおもむろに口を開く。


「とはいえ、ズボンが焦げるようでは困るな。ラジエーターを空冷式から水冷式に替えるか……ううん、やはり『ハイブリッド空圧式膝継手』の実用化は厳しいか」

「ええ、早急に――ん?」


 スルーしかけて思いとどまる。


 今この医者、なんつった?


「先生、そのハイブリッドなんちゃらって」

「ハイブリッド空圧式膝継手だ。私が考案した最新の膝継手でね。急速な負荷がかかると――」

「いや、そっちじゃなく。実用化がどうのこうのって」

「言ったね」

「……つまり?」

「この義足はまだ実用化されていない試験的なものということだよ。ずっと試してみたくてね。おめでとう、軍曹。君が記念すべき被検体第一号だ」


 朗らかに宣う医師に、ニコラスは絶句した。


 この医者、俺をモルモットにしやがった……!


 しかし、この医師ときたら。


「説明を続けてよいかね?」


 話を聞く気ゼロである。

 モルモットの泣き言なぞ、眼中にないというわけか。


 ショックのあまり閉口するしかないニコラスをよそに、アンドレイ医師は嬉々として解説を始めた。


「このハイブリッド空圧式膝継手は私の発明品でね。常時は一般の空圧式義足と同じなんだが、急速な負荷がかかると内燃機関に切り替わる。駆動時、妙な吸引音と発熱があったろう? あれは義足内に内蔵されている水素燃料エンジンによるものだ。義足内の小型タンクから水素がシリンダー内に注入され、それを燃料として一時的に強力なパワーを発揮する。タンクが小さいぶん、連続で五分しか使用できないのが難点だがね」

「………………はあ」

「む。覇気のない返答だな。言っておくが私の発明はこれだけじゃない。君の切断痕内に埋め込んだ人工受容体もそうだぞ」

「はあ!?」


 ニコラスは目を剥いた。


 なんつーもんを埋め込んでんだ。そんなの聞いてないぞ。


「ああ、安心したまえ。人工受容体は単なる補助装置だ。万が一の非情装置というやつさ。君の血中アドレナリン濃度が一定値を超えると、人工受容体が電気信号を発し、義足内の水素燃料エンジンが起動する。君が例の爆弾魔騒動で、突然義足が起動したのはそのせいさ」


 「な、役に立っただろう?」と胸を張る医師に、ニコラスは頭を抱えるしかない。



「……今から義足の変更とかは」

「構わないが棒義足になるぞ」

「一番最初のと二番目のがあったでしょう。あれ修理して使えませんか」

「修理も何も、すでにこの義足に組み込まれている。特区じゃ部品ですら易々とは手に入らんからな。分解して再利用させてもらった」

「…………つまりもうない?」

「ないね」


 Holy shit.(なんてこった)


 ニコラスは顔を覆って俯いた。


 一方の医師は、ニコラスの丸まった肩を上機嫌に叩く。


「安心したまえ。今回得たデータは実に有益なものだ。必ずや次回に生かして見せよう。期待したまえ」


 なにも安心できない。


 こうして、ニコラスは悪徳医師の魔の手から逃れそこなったのである。




 ***




 結局、アンドレイ印の第一試作機を装着したニコラスは、ぶすくれた表情でカフェ『BROWNIE』へと戻った。


 またも新調した端末でメール返信をしながら歩いていると、甲高いクラクションに呼び止められた。


「ギャレット」

「よお兄弟。しけた面してんな。ナンパ失敗か?」


 相変わらずサングラスをかけた大男は、路側帯に停めた大型バイクにもたれ、飄々とこちらに手を振った。


「生憎うちの通院先に口説けるような女はいねえよ」

「病院帰りか。そりゃしけた面にもなるわな」


 ひょうきんに肩をすくめるギャレットの背後で、彼の手下がバイクの荷台から降ろした郵便物やら小荷物を運んでいる。


「もうすっかり馴染んだな」

「おうとも。正直、ヤクの方が稼げるが、この街じゃご法度ってんなら仕方がねえ」


 新参者はそう言って肩をすくめた。


 ギャレットたちが27番地に移住したいという旨の申し出は、ミチピシが政府に打診したその日のうちに通達された。

 オーハンゼー直々の要望であった。


「我々の要請を政府が受諾すれば、少なからず住みづらくなる者もいよう。永住させよとは言わぬ。ただ他領に移住するのであれば、便宜を取り計らってはくれんか?」


 わざわざ店へ出向いて丁寧に頼み込むオーハンゼーに、ハウンド並びに27番地商業組合は快諾した。


 こうしてギャレット率いる『ブラック・ヘキサグラム』は、一時的ではあるが27番地住民となった。

 そして現在、生活のため配達業に勤しんでいるというわけだ。


 27番地としても、ギャレットたちのような二輪車などの車両運用に長けた人材は貴重だ。


 ハウンドもさっそく自分のバイク整備を依頼してたし、商業組合長のクロードなんかに至っては「騎兵大隊の結成だ!」なんて大はしゃぎだった。

 ギャレットたちもノリノリで聞いていた辺り、存外この街を気に入ってくれたようだ。


 ギャレットたちと話していたハウンドを思い出し、ニコラスは暗く沈んだ気持ちになった。


 ――ギャレットたちには話しかけるんだよなぁ。


「それはそうと。兄弟」


 呼びかけられて振り返れば、目と鼻の先に凄まじく分厚いレターサイズ封筒が差し出された。


「アレサからだ。今回の報酬だとさ」


 受け取り、中身を確認してほおっと息をつく。


 先住民に関する資料が詰まっていた。

 書籍リストまで同封されており、読みたいものがあれば貸し出す手配まで済ませてくれている。


 急ぎまとめてくれたのだろう。

 同封された書類は、どれも分かりやすく読みやすかった。


「これだけじゃないぜ。他にもこれが段ボール一箱分ある」

「最高だな」


 ニコラスは心からそう思った。


 これだ。これが欲しかった。

 これらの情報集があれば、あの絵本の謎を解けるかもしれない。


 ギャレットは思い切り苦笑した。


「金よりこんなのがいいのか。欲がないねえ。……その地図なんだ? なんかごちゃごちゃした線が書かれてるが」

「これはチェロキー族が強制移住させられた足跡だな。『涙の旅路』とも言われてる」

「はあー、こんな距離を歩かされたのか。そりゃ恨むわ。これじゃあ地上絵描かされてるみてえじゃねえか」

「そうだな。それよりあれからアレサの様子はどうだ? 少しは立ち直ったか?」


 ニコラスは封筒内に入っていた封蝋付きの封筒を手に取りつつ、それとなく聞いてみる。


 別れ際、憔悴しきったアレサは、見るからに自責の念に囚われていた。

 いくら爆弾魔が彼女のメンバーに紛れ込んでいたとはいえ、それは彼女のせいではない。あまり気に病まないでほしいと思うのだが。


 ギャレットは首を振った。


「やることがある方が気が紛れるんだと。ま、今のミチピシじゃしばらく休めそうになさげだし、ぶっ倒れるようなら宅配ピザ片手に見舞いにでも行ってやるさ。てかその小洒落た封筒――」


 と、ギャレットが口をつぐんだ。


 見ると、向こうの交差点から3両からなる車列が曲がってきた。

 GAZ-2330ティーグル装輪装甲車が、中央のダークシルバーのポルシェを挟んでいる。


「おい兄弟。あれ」

「ああ。ここに居ててくれ」


 ニコラスは警戒を強めるギャレット置いて車列に向かって歩き始める。


 車列はニコラスを囲むようにして停車した。


 ポルシェから降り立ったのは、よれよれのスーツを身にまとった細身の美青年、セルゲイである。


「で? 話って何よ。俺ちゃん今日オフなんだけど」


 腕を組んだセルゲイはむすっとこちらを睨んだ。

 以前のお茶らけた雰囲気は欠片もない。


「『手帳』の情報が欲しいと言っていただろう。そのことで呼んだ」


 途端セルゲイは顔をしかめ、背後の護衛2人以外を下がらせた。


「あのさあ、自分がどんな情報扱ってるか自覚ある? 自覚ねえからそうポンポン喋ってんだろうけどさぁ。口が軽い男は嫌われますよ?」

「『双頭の牡鹿』という言葉は聞いたことあるか?」


 無視して直球で尋ねれば、セルゲイは真顔になった。


「知らね。聞いたこともねえ。それが?」

「詳しくは俺も知らん。だがこの名を出した途端、オーハンゼーの顔色が変わった。心当たりはあるか?」

「…………ないね。奴さん、かなーり口硬いから。んで、まさかそれだけ?」

「それだけだな」


 そう返すとセルゲイは心底失望したと言わんばかりに溜息をついた。


「はぁーあ、ほんっと使えねえなお前。ま、いいや。さっきそこのグラサンから受け取ってた封筒回収させてもらおうか。こんなちんけなネタじゃあ割に合わねえ――」

「今回の一連の爆破事件、組んだのお前だろ」


 またも直球で切り込んだ。セルゲイは表情を消した。

「何のことかさっぱりだねー」

「ずっと不自然だったんだよ。テメエみてえな幹部が、なんで俺たちに協力するのか」


 『手帳』の情報を引き出したいだけなら、自分とだけやりとりすればいい。

 わざわざ27番地に出向いて、ハウンドの目の前であれこれ工作する必要はないはず。


 しかもセルゲイは若いとはいえ一家の幹部だ。

 ニコラスの後方支援をするにしては、階級が上すぎる。


「最初から俺だけじゃなくハウンドも監視対象だったんだろ? 自分たちの計画を邪魔されないために」


 セルゲイは答えない。ただ片目がやや興味深げに見開かれただけだった。


「前回の大暴動でテメエらロバーチは27番地との貿易をのきなみ停止させられた。その程度で参るテメエらじゃねえが、今後も27番地に依存した販売ルートを使い続けるのは問題がある。新たな販売ルートを新設する必要がある。そこで目をつけたのがミチピシ一家だ」


 現にミチピシは今、国内企業の注目の的だ。


 特区と合衆国の境に存在する自治区、事実上の緩衝国である。

 仲介役としてこれ以上うってつけの存在はいまい。


「今回ミチピシの独断に他の四家が文句を言わなかったのは、単純に利益の方がデカいからだ。ミチピシの経済を介せば資金洗浄もできるし、政府公認の相手となれば国内企業への敷居も下がる。よりアメリカ市場に食い込めるようになる。ミチピシに隣接してるロバーチなんかは願ったり叶ったりだ。なにせテメエらは北米での影響力がまだまだ少ないからな」

「すごいねー番犬ちゃんは。ここまでくるとこじつけ通り越して妄想だわ。ウェイターから小説家に転向したら? 売れるかどうかは知らんけど」

「違法セムテックスを南瓜頭に届けたの、お前だろ?」


 そう言って、ニコラスは新調された端末にある画像を表示する。

 セルゲイが閉口した。


 オーハンゼー直属の偵察員が撮影した、航行中のドローンだ。

 下部に何か小包のようなものを抱え込んでいる。


「次からドローン宅配は止めた方がいいだろうな。かなり目立ってたらしいぜ?」


 しばし沈黙を守ったセルゲイは、「で?」とばかりに小首を傾げた。


「色々と勘繰るのは結構だけどさー、実際ミチピシは政府と交渉しちゃってるし? 残り四家もミチピシの独断を黙認した。それが全てっしょ。俺ちゃんは現状に満足してますよ? お前なにがやりたいわけ?」


 ニコラスは報酬に同封されていた、封蝋付き封筒をちらつかせた。

 封蝋の紋は、『茨をまとう白頭鷲』。


「オーハンゼーからの密書だ。ロバーチの仲介を進んで行う代わりに、抗争仲介料をチャラにしろとさ。ついでに今回の一件も黙ってやるとのことだ。どうする?」


 その時に至り、セルゲイの余裕がようやく崩れた。辛うじてポーカーフェイスを保ったものの、少し傾いた胴体が動揺を隠しきれていない。


 ニコラスは素早く襟元を鷲掴み、頭突き寸前まで引き寄せた。

 そして至近距離からねめつける。


「てめえら五大の思惑なんぞ知ったこっちゃねえが、巻き込むなら話は別だ。とっととうちから出ていけ。二度とハウンドあの子に近づくな」

「…………あの子、ねえ」


 瞬間、ニコラスの両脇に銃口が押し当てられる。

 回り込んでいたセルゲイの護衛だ。


「その話、ちょーっと聞きたいねえ。ご同行願おうか」


 背後で見守っていたギャレットたちが色めき立つ。


 だがニコラスは慌てることなく上を見た。


 人影が降ってきていた。


 人影はセルゲイ背後にあったポルシェのルーフ上に着地、傷一つなかったポルシェが盛大に音を立ててへこむ。


 車体上に仁王立ちした男は、憤怒の形相で真っ直ぐセルゲイを睥睨した。


「見つけたぞこの転売ヤーめ!! よくも俺の愛車とゲーム盗みやがったな!?」

「へっ、ペンギン警官……!?」


 困惑するセルゲイを待たず、ケータは持っていた木刀を振り上げて襲い掛かった。


 すぐさま護衛が迎撃するが、当たらない。

 残像を残す勢いで間合いに滑り込み、あっという間に護衛二人をのしてしまった。


 ミネウチというやつだろう。


 ニコラスは満足げに腕を組んだ。

 うん。やっぱりケータを呼んでおいて正解だった。


「えっちょっ、ちょいちょい待った何コイツ!? こんな強いなんて話きいてねえ!」

「うるせえ大人しく首を差し出せっ!! 警察署前に晒してくれる!!」

「ひょわ!? ちょっ、ふぁああああああああああああああああああああ!?」


 奇声を発しながら逃げ惑うセルゲイをケータが追い駆ける。

 木刀ゆえに死にはしないだろうが、威力を見るにわりと殺る気満々かもしれない。


 あまりの展開に護衛が呆然と立ち尽くした。


 その隙にニコラスが一人を前三角締めで締め落とし、駆け付けたギャレットがボディスラムで投げ飛ばす。

 さらに残ったもう一人を、二人がかりのエルボーでガードレールに叩きつけた。


 互いに無言で拳を突き合わせて。


「……なあ兄弟、アレなんだ?」


 ギャレットが先に質問した。ニコラスは神妙に頷く。


「愛車とゲーム機を盗まれて怒り狂う日本人の図だ。ケータは日系だけど」

「盗まれたぁ?」

「3年前、ケータの愛車が盗まれてな。しかもたまたま車内に置いてあったニンテンドーの……なんだっけ」

「DSか」

「そうそう、それ。それも盗まれたらしくてな。んで怒り狂ったケータが代行屋うちに駆け込んできたんだと。ハウンド曰く、ケータとはその頃からの付き合いだそうだ。んで、盗んだのがあれ」

「マフィアの幹部が車泥棒やったってのか?」

「当主がハウンドと会談中で暇してたんだと」

「暇つぶしで車パクるなよ……てかさっきあの兄ちゃん、転売がどうのこうのって言ってなかったか?」

「ナズドラチェンコの馬鹿がケータのDSを転売したんだよ。しかも5年かけて攻略したゲームデータを初期化して消しちまったんだと」

「あー……」


 ギャレットが同情の眼差しでケータを見やった。

 ニコラスも擁護不能な暴挙に憤然と腕を組む。


 ニコラスはゲームをやらないのでピンとこないが、ゲーマーにとってデータの無断消去は禁忌だ。

 場合によっては友情崩壊や離婚もあり得る。


 実際ニコラスが所属していた第37偵察小隊でも、親友のフレッドがうっかりコードに足を引っかけてテレビゲームを強制終了させてしまった結果、血みどろの喧嘩騒動に発展したことがある。


 ゲーマーの執念、恐るべしである。


「しっかしまあ、あの虫も殺せなさそうな兄ちゃんが、マフィア幹部にこうもキレるとはねえ。日本人ってのは割と大人しいって聞いてたが」

「聞いた話じゃ、日本人は基本温厚だが、転売屋とゴキブリに対しては凄まじい殺意を見せるらしいぞ」

「……マジ?」

「マジ」


 ニコラスたちは2人を見やった。


 ついにケータにとっ捕まったセルゲイは、逆エビ固めを極められてアスファルトを必死にタップしている。


 ニコラスはさてと手を払った。


「んじゃ交渉再開するか」

「お、意外とあくどいねえ」


 ククッと喉奥で笑うギャレットを残し、ニコラスはセルゲイとの交渉を再開した。


 結果は非常に満足のいくものだった。




 ***




 這う這うの体で逃げかえるセルゲイと、ものすごくすっきりした表情で汗をぬぐったケータと別れ、今度こそニコラスはカフェ『BROWNIE』に帰還した。


 玄関前の階段を上がり、取っ手に指を引っかければ、軋んだ蝶番と涼やかな鈴の音が――。


「今だっ、ひっ捕らえろ!」


 出迎えたのは、威勢のいい掛け声と視界いっぱいに広がる麻布だった。


 突然頭に麻袋を被せられ、仰天したニコラスは慌てて取ろうともがく。

 しかし、足にロープを撒かれる方が早かった。


「ターゲット確保!」

「よーし運べェ!」


 大混乱のニコラスはあれよあれよという間に俵担ぎで運ばれていった。


 椅子に座らされ、麻布を取られた先は2階の会議室。

 周囲を見渡せば、馴染みの顔がそろいにそろっていた。


「やあニコラス。お帰り」

「た、ただいま帰還しました……」


 会議室議長席についたカフェ『BROWNIE』店長は、机上に手を組んだまま実ににこやかに話しかけてきた。

 ニコラスは本気で戸惑った。


「実は折り入って相談があってね」


 ニコラスはごくりと生唾を飲み込んだ。


 店長はゆっくりと口を開いた。


「君、ハウンドと喧嘩した?」

「…………はい?」


 あまりに突飛な質問に素っ頓狂な声を上げ、すぐさま気まずげに口をつぐんだ。


 思い当たる節がかなりあるのだ。


 実は先日のミチピシの一件から、ハウンドに避けられている。


 絡んでこなければにこりともしない。あれほど止めろと言っても聞かなかった悪戯も、今はぱったりとなくなっている。会話しても業務内容のみで、以前のような雑談は一切ない。


 というか、こちらが近寄ろうとすると、途端にハウンドが回れ右で去っていくのである。


 あまりに露骨というか、嫌われることはしたので仕方のないことだが、正直かなり堪えている。

 それでもこちらが用意する飯は、きちんと完食して皿も洗ってくれるのだが……。


 こちらの表情で察したのか、店長は苦笑した。


「いや実は私らに、ハウンドから相談があってね。『君を怒らせてしまった、どうしたらいい?』って。珍しく、随分と弱り果てていてね」

「――え?」


 ニコラスは耳を疑った。


「ハウンドが? 俺に怒ってるんじゃなくて?」


 途端、会議室に集った住民が一斉に溜息をついた。


 あちこちから「やっぱり」とか「これだから朴念仁は」などと声が聞こえる。


 一方の店長は大笑いした。


「ふふっ、ごめんごめん。何となくそうじゃないかと思ってたよ。君もハウンドも似たところがあるから、互いに遠慮してるんじゃないかと思ってたが、案の定そうだったみたいだね」


 ニコラスは気まずげに視線を彷徨わせた。


 どこを向いても生暖かい目で見つめる住民がいるので逃げ場がない。

 大変いたたまれない。


 縮こまっていると店長はますます笑った。


「仕方がない。内気な不器用さんたちのために私が一肌脱いであげよう」


 店長が二拍手を叩くと、住民の中から一人の愛らしい少女が現れた。


 ヴィクトリア朝時代を思わせる上品なメイド服に身を包んだ、我が職場の最年少従業員のジェーンだ。

 両手に大きなバスケットを抱えている。


「どうぞ!」

「これは……?」

「なか直りのためのひみつ兵器です!」


 中身を覗くなり、ニコラスは目を見開いた。店長が笑みを深くした。


「さっき私が焼いたハウンドの大好物さ。さあ行っておいで。仲直りは早いに越したことはないからね」




 ***




 どうしよう。今日もニコと話せなかった。


 ハウンドはソファーに心身ともに沈み込んでいた。


 ――殺せばよかった。


 3日前のことを思い出し、ハウンドは毛布代わりのコートに顔をうずめる。


 抱え込んだ枕から香るニコラスの匂いが、余計に気分を沈ませていた。


 ハウンドは自爆犯というものをよく知っている。


 連中は基本、目標を定めたらもう止まらない。

 対話に応じることもなければ立ち止まることもしない。


 特に起爆装置を他人に握られた人間はまず喋らない。対話で説得されることを恐れて、起爆役が脅迫するからだ。

 家族を人質に取られるか、入念に洗脳されるか。


 そうして止まることのない、生きた爆弾が出来上がるのだ。


 だから対話を始めた時点で少年が起爆装置を握っていることも、恐怖と焦燥の濃い汗の臭いから死にたくないことも分かった。


 その時点で殺しておくべきだった。


 大した距離ではなかったし、子供を殺すなど今さらだ。

 銃、銃剣どちらでも殺せた。


 それでも殺せなかったのは彼が目の前にいたからだ。


 結局、自分が殺せなかったせいで、彼が汚名を被ることになった。


 自分が躊躇したせいだ。とっとと首を刎ねておけばよかったのに。


 ――何を、今さら。


 ハウンドはコートに包まったまま身を丸める。


 嫌われる覚悟などとうにできていた。憎まれる対象だと分かっていたはず。


 むしろ嫌われた方が動きやすくなっていいとすら思っていたのに。


 なのに、鳩尾の辺りが痛くて堪らない。


 なぜこんなに息苦しいのか。

 なぜ彼と話せなかっただけで、こうも気分が沈むのか。


 この痛みは一体なんだろう。


 馬鹿馬鹿しい。

 そう思った時、玄関のロックが解除される音がした。


 びくりと肩を跳ね上げたが、漂ってきた香ばしいバターと焼けた小麦の香りに、ほっと安堵する。


 なんだ、店長か。

 そう言えば昼飯を要らないと答えたら、おやつを持っていくと言っていたな。


 ――あの人もわりとお節介だな。


 そう思い、ハウンドは寝たふりでやり過ごすことにした。




 ***




 寝て、る……?


 ニコラスはバスケットをキッチンに置き、寝室に向かおうとして、困惑した。


 自分の寝床のソファーに、何やらモスグリーン色に包まれた塊がある。


 毛布は必ず朝きちんと畳んで端に寄せている。なので、ソファー上に物が広がっている理由など、一つしかない。


「ハウンド……?」


 ニコラスは恐る恐る近づいた。


 なぜハウンドが寝室ではなく自分の寝床で寝ているのか。

 しかも、よくよく見れば、自分が枕がわりに使っているクッションに顔を押し付けて、自分のミリタリーコートを毛布代わりにして寝ている。


 息苦しくないのだろうか。

 というか、臭くないか? 


 ニコラスは頭を掻いた。


 ちゃんと枕もコートも定期的に洗ってはいるものの、アラサー男の体臭が染みついた衣類なぞ、汗やら皮脂やらでかなり臭いだろう。


 なのに、なぜハウンドはそんなものに埋もれて寝ているのか。


「ハウンド」


 もう一度呼んでみる。ハウンドは静かに寝息を立てるだけだった。


 そっと手を伸ばして肩を突いてみる。

 一瞬ぴくっと動いたが、ハウンドの寝息に変化はなかった。


 ――こりゃ完全に寝てるな。


 仕方なく立ち上がったニコラスは、ケトルをコンロに仕掛けた。

 どうせ起こすなら、盛り付けが終わってからでも――。


 ドタドタドタドタ――ッ!


 ぎょっとして振り返れば、凄まじい勢いで洗面台のドアが閉ざされた。


 数秒ほどガタガタと物音を立てて、沈黙。

 再びドアが開く。


 そこには珍しくちゃんと服を着て、洗顔で水の滴る前髪をかき上げた仏頂面のハウンドが立っていた。


「…‥おはよう」


 おはよう以外の返答は許さんと言わんばかりの謎の気迫に気圧され、ニコラスも「おはよう」と返すしかなかった。


 沸騰を知らせるケトルの警笛が茶化すように鳴り響いていた。


 数分後。


「ん。できたぞ」


 どこか沈んだ様子のハウンドの前に、ニコラスは盛り付けた菓子の皿を差し出した。


 絵本ご飯23ページ、『仲直りのバンディ・アミール湖』――物語の終盤、子狼の父親と5頭の大型犬が仲直りする場面に登場する湖だ。


 ハウンドは気付いただろうか。

 これは彼女の故郷、アフガニスタンの湖だ。


 青い釉薬で塗装された皿底を湖に見立て、その周囲を生クリームで直立させたショートブレッドで岸壁を、広大な岩盤を林檎のコンポートで表現した。秋に相応しいデザートだ。


 ちなみにこの盛り付けは、店長が考案したものである。

 洒落こんでいるのに運んでも崩れない盛り付けなので実にありがたい。


 皿を置いた途端、ハウンドは目を真ん丸に見開いた。


 頬が見る見るうちに紅潮し、漆黒の双眸が期待で煌めく。


 しかし、なぜか手を付けようとしない。


「どうした。食欲ないのか?」

「いや。そうじゃないんだけど」


 ハウンドはいろんな角度からデザートを眺めてはほうっと溜息をつき、なかなか手を出そうとはしない。

 崩すのが勿体ないようだ。


 しばらく眺めを楽しんでから、ようやく落ち着いて、ちらっとこちらを見上げる。

 食べていいかと問うように。


「どうぞ」


 召し上がれ、と内心で呟くと、ハウンドは恐々とショートブレッドに手を伸ばした。


 生クリームがたっぷり乗ったそれを一口齧り、目を見開く。

 さらに二口、三口と、あっという間に一本目を平らげてしまう。


 ぺろりと口元を舌で拭い、二本目にはコンポートも乗せて齧り付く。


「……!」


 一気に顔がほころんだ。

 それを見てニコラスもようやく一息つく。


 やっと表情が明るくなった。あとは食べ終わるのを待って、話を切り出せばいい。


『話し合いはお腹がいっぱいになってから』、店長からの助言である。


 ふとハウンドが、マグカップしかないこちらを見やった。


「ニコの分は?」

「俺はいい」

「えっ……」


 ハウンドが硬直し、ショートブレッドに乗っていたコンポートがぽとりと落ちる。


 ニコラスは慌てて弁明した。


「いや。俺は甘いもん苦手だから。ほら、好きなだけ食え」

「……じゃあもう要らない」


 ハウンドは皿を押し返し、両手をテーブル下にしまい込んでしまった。


 ニコラスは困った。

 どうしたのだろうか。いつもなら脇目もふらず完食してしまうのに。



『『君を怒らせてしまった、どうしたらいい?』って。随分と弱り果てていたんだよ』



 店長の言葉を思い出し、改めてハウンドに向き直る。


 むすっとそっぽを向くハウンドの横顔は眉尻が下がり、背と肩がしゅんと丸まっている。視線もどこか俯きがちだ。


 まるで約束を破った親に腹を立てるような、寂しさとやるせなさが入り混じった不貞腐れ顔だった。


 ニコラスは即座に作戦を修正した。


「一口だけもらっていいか?」


 途端、ハウンドの表情がぱっと輝く。


 ニコラスは安堵した。

 まあ一口くらいならと皿に手を伸ばした瞬間、ハウンドに引っ込められる。


 えっと思うのも束の間、残り一本のショートブレッドに生クリームとコンポートをこれでもかと乗せたハウンドは。


「はい、あーん!」


 満面の笑みで差し出した。


 ニコラスは作戦失敗を悟った。


「……取りあえず皿に置いてくれ。ガキじゃねえんだから」

「でも置いたら崩れるもん。ほら早く。クリーム垂れちゃうよ」


 ハウンドは大真面目な顔のままずいっと差し出す。


 これは確実に素だ。


 目の前に突き出された違法建築ショートブレッドは、今にも崩壊しかかっている。


 仕方なくニコラスは首を伸ばして齧りついた。


 が、やや大口をかけたせいか、ハウンドの指先に唇が触れてしまった。


 ――やっべ……!


 ニコラスは容量オーバーの口内物を無理やり咀嚼しつつ、大急ぎで台拭きを取った。


 そして今まさに指先についたクリームを舐めとろうとしているハウンドの手首を掴み、素早くぬぐう。


「あっ何すんの勿体ない」


 そういう問題じゃねえんだよ、この能天気娘め。


 ニコラスがもごもご咀嚼しながらじろりと睨むと、ハウンドは吹き出した。


「ふはっ、ちょっとニコ。リスみたいになってるよ」


 誰のせいだ、誰の。


 ケラケラ笑うハウンドを横目に、ようやく嚥下して嘆息する。


 まったく、今日のハウンドはよく表情が動く。


 ――まあ、いつもの胡散臭い笑み張り付けてるよりはマシか。


 ニコラスは立ち上がり、お替りの紅茶を入れに席を立った。

 口の中の甘さが気になってしょうがない。


 キッチンに立ち、ケトルをまた火にかけながら、茶葉の準備をする。


 直後、背中にトンと軽い衝撃が走った。


「ハウンド?」


 返答はない。だがハウンドが己の背に額をつけていることと、背中のシャツをぎゅっと掴んでいることは分かった。


 ニコラスは辛抱強く待った。


 十数秒の沈黙の末、ハウンドは肺を絞ったような声音で呟いた。


 声は震え、先ほどの陽気な雰囲気はとっくに霧散していた。


「………………ごめん、ニコ。嫌な思いさせて、ごめん」


 しばし間を置き、ニコラスは首を振った。


「俺が選んだことだ。お前のせいじゃない」

「でも、私が捜査協力を受け入れたのが原因だから。……こんなことになるぐらいなら、最初から協力しなけりゃよかった」


 そう呟くハウンドに、ニコラスは苦笑する。


「それじゃあケータもオーハンゼーも困ったと思うぞ」

「いいよ、別に。ニコが傷つくぐらいなら」


 コイツも大概嘘つきだな。そう内心でぼやく。


 本当にどうでもいいと思っているなら、ミチピシの抗争仲裁のために奔走したりせず、自分だけを呼び戻せばよかったのに。


 だがそれを、ハウンドはしなかった。


「いんんだよ、俺は。これでいいんだ。俺の方こそ悪かった。怖がらせたな」


 背を掴んでいた手が腹に回った。


「別に。怖いなんて思ったことないもん」


 拗ねるようにぎゅうぎゅうとしがみつく少女に苦笑する。


 ふと目を落とし、腹に回った手に目を落とす。


 ――デカくなったな。


 もう包めないだろうなと思い、手を触れる寸前で覆ってみる。


 案の定、手のひらからはみ出したが、すっぽり覆えるその小ささは子供の頃と変わらなくて、手の甲のきめ細やかな皮膚は触れるのを躊躇うほど女の色が滲んでいた。




 ***




「いつまで不貞腐れてるんだい」


 店長の呆れた視線の先には、27番地大人代表のクロードと、子供代表のルカがぶすっと腕を組んでいた。


「別に不満があるってわけじゃァねえさ」

「そうそう。不満はないんだよ。さっきちょっと仕返しできたし」


 そう言いつつも、そろって唇を尖らせる2人に店長は溜息をつく。


「その割には納得しているようには見えないけど。何が気に食わないんだい?」

「だってさあ」


 ルカが尖らせた唇をへの字に曲げた。


「やっとハウンドが僕らを頼ってくれたのに、その願い事がニコラスと仲直りってどうなの?」

「そうだよ! 俺たちゃどこぞの朴念仁のご機嫌取りなんぞより、お嬢の願いを叶えてんだよっ」


 ぶーぶーと文句を垂れる2人に、周囲の男どもがそうだそうだと追随する。


 一方、ルカ率いる少年団の少女らは冷めた目で溜息をついている。


 そんな住民らを静観していたギャレットは、瓶ビール片手にふてぶてしげに眉を吊り上げた。


「なんだ。あの2人、そういう関係なのか?」

「さて、どうだろうね」


 そう言って店長は音もなくカップを傾ける。


 墓守犬が帰還した墓場は、色めき立つ亡者で賑やかだった。

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