第147話 面会再開

 十二月十一日(日)まで、面会が中止となっていたが、十二日(月)から面会ができるようになった。

前回同様、三名までで十五分間の制限はあるが、久々に母に面会できるとあって私も嬉しかった。


 そこで早速、十三日(火)に母の面会に行った。

なんと二ヶ月振りである。

施設で十月の半ばからノロウイルスが流行り、それが収まるや否や、今度は十一月にコロナが流行り始め、十二月になってやっと面会出来ると思いきや、施設の大イベントである八朔狩りの行事が順調に行くように、その行事が終了するまでは、面会が中止となったからだ。


 本当に長い間、面会できなくて私は母の様子がとても気になっていた。

何しろ母は十月にノロウイルスにかかり、十一月にはコロナに感染、更に十一月の下旬頃に圧迫骨折をしてしまったからだ。

その間一度も会えることなく、職員さんから母の様子を聞くのみだった。

相当弱っているのではないかと心配だった。


 約束の時間に面会に行くと、母は車椅子に乗って部屋で待っていてくれた。

見た感じは以前とあまり変わらないようだった。

圧迫骨折の痛みは幾分和らいだのか、痛みの訴えがないので痛み止めの薬も今は服用していないとのことだった。

痛みが和らいでいるなら良かった、とホッとする。


 「来たよ。誰かわかる?」と聞いてみたが、あまり反応はなく前のように独語もない。

以前は話しかけると、それの答えにはなっていないけど、何か喋ってくれていた。

会話になっていなくても、何やら言ってくれていたので、それなりに私も母の声が聞けて良かった。

今は「ふん、ふん」みたいなよく分からない言葉を発するだけだ。

それでも、思ったよりは元気そうで安心する。

食欲もだいぶ戻ってきたようだ。

いつものように私が一方的に母に話しかけながら、手や足をマッサージした。

母の足は浮腫んでいて、私が足の裏を抑えると痛そうな顔をする。

「痛い?」と聞くと、痛いとは言わないが、「うん、うん」と頷いている。

「じゃあ、優しくするね」と言いながらマッサージしていく。

それから手のひらもマッサージしていく。

母の手は柔らかく綺麗な手をしている。

今は畑仕事もしないので、私の手より綺麗だ。

前はゴツゴツした働き者の手だった。

そう言えば、母が元気な頃は、朝から晩まで休みなく体を動かしていて、横になってる姿なんか一度も見たことがなかった。

本当によく働いていたなぁと、昔の母を思って泣けてきた。

「すずちゃん、ありがとう」とハグをして、面会を終了した。


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