第79話 姉達集合

 十月十八日の夕方、一番上の姉夫婦が我が家にやって来た。約一年三ヶ月振りである。翌日はお昼前にすぐ上の姉がやって来た。三姉妹が揃いたちまち賑やかになった。久々に揃ったので地元の道の駅のレストランで昼食を摂ることにした。幸い込んでおらずスムーズに席に着くことができ、各々食べたいものを注文して暫くは母の近況など話しながら過ごした。


 母は最初、姉を見ても「どこの娘さんかいのう」と言っていたがその内「私が産んだ娘かぁ」と言って笑顔になりとても嬉しそうだった。名前はすぐに出てこないが名前の最初の一文字を言うと姉達の名前も思い出してくれ「覚えていてくれた」と姉達も喜んでいた。昼食後、義兄は大阪へと帰って行ったが、姉は十日間、すぐ上の姉は仕事があり三日間滞在した。その間は夜は私が今まで通り母と一緒に寝たが昼間は母の相手をしてくれお風呂の介助も手伝ってくれたり母の散髪に連れて行くのに同行してくれたりと色々な事を手助けしてくれるので私はとても助かった。


 姉達がいる間、母の介護はいつもと変わりなく続いていたがその間私は一度もイラっとする事がなく楽しい毎日を過ごすことが出来た。一人でする介護は大変だが誰か一人でも協力者がいるとこんなにも余裕をもって介護できるのかと驚いた。あぁ、姉達が近くにいてくれたらどんなに良かっただろうとしみじみ思ったものだ。

 相変わらず母の腹痛の訴えはあったがそんな中でも姉達と会えたことはこの上なく嬉しかったようだ。母の元気なうちにこうして姉妹が揃い母に会う事が出来て良かった。姉達の滞在はあっという間に過ぎていった。すぐ上の姉が帰る時も一番上の姉が帰る時も母は名残惜しそうにして涙ぐんでいた。そして姉達が帰った後はいつまでもいつまでも淋しくなったと呟いていた。


 姉は帰り際に私に封筒を渡してくれた。中には手紙とお金が入っていた。手紙には私への労いと感謝の言葉が綴られ、最後にこれからも母の事をよろしくお願いしますと書かれていた。私は読みながら涙が溢れた。姉達に母の介護を託された私の負担が少し軽くなった気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る