第70話 『匠たより』

 『匠』とは母の通っている施設の名称である。毎月、請求書と一緒に『匠たより』が送られてくる。『匠たより』とは時々行われる施設内のイベントやリクレーション等と共に利用者さんの施設での様子を収めた数々のコメント入りの写真がカラーで裏表に印刷されたA3サイズのたよりである。毎月、母が何処に写っているか探しながら施設での様子を窺う事ができ、私はこれをとても楽しみにしている。


 毎月、その月の誕生日の利用者さんは誕生日プレゼントや色紙などと一緒ににこやかに写真に写りクローズアップされている。『匠たより』が届くと母と一緒に見ながら「こんな事があったんじゃね」とか『○○さん、何歳になっちゃったんだね』とか話が弾む。「すずちゃん、どこに写ってるかね」なんて言いながら探したりする。

 毎日通ってるわけではないのでたまには写っていない月もあるが、もしも家にずっといたら写真なんか頻繁に撮る事もないなと思うのでこのたよりは有難い事だと思っている。利用し始めてからずっとファイルに綴っていてそのファイルも5冊目となった。

 これからもずっとこのファイルが増え続ける事を願っている。

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