第31話 四回目の八朔狩り

 「今年はもうよう行かんじゃろう」と母は八朔狩りに行く事があまり乗る気ではなかった。私も無理強いは出来ないので施設には参加の申し込みをしておいて様子を見る事にしていた。一週間前になって再度確認してみると「前回、帰る時車酔いして気分が悪くなってしんどかったので行かない」と言う。忘れる事の多い母はこういった嫌な体験はよく覚えているのだ。急にキャンセルして施設に迷惑をかけてはいけないので、一応施設には行けないかもしれないと事前に説明しておいてキリキリまで待って頂くことになった。すると二日前になって「やっぱり行かんにゃいけんじゃろう」と言い出した。施設の方では酔い止め薬を用意しておくのでと快く対応して下さった。私も「来年は行けるかどうか分からないので行ける時には行こう。行こう」と勧めた。


 こうして四回目の八朔狩りに母と二人で参加させて頂くことが出来た。毎回、今年が最後かもしれないからと思いながらも四回も参加させて頂いたことに感謝でいっぱいになる。母はいつも施設の行事の参加を渋るけど私は個人的に外出を好まない母を連れて出かける事がないのでこうした施設の行事は大変有難く楽しみにしている。行く前は気乗りのしない母も行ったら結構楽しんでいるのだ。足が痛いのも忘れて八朔狩りに夢中になっている。行き帰りの車の中でも海が見えた時などは喜んでいた。又、来年も母と行ける事を祈っている。

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