第30話 母のこだわり
退院後も何とか家での生活は出来たが入院前に比べると認知力が落ちてきたように思う。
以前よりも更に言語障害が酷くなり身近な人の名前や物の名前が出てこなくなってきた。文章を書くのも難しくなり一年前は箇条書き程度だが日記らしきものもボチボチ書いていたが今は全く書こうとしない。
すぐに思い出せないと言って施設の職員さんや利用者さんの名前を書いたメモをカバンに入れていて、話をしていて思い出せない時はそのメモを見て施設での様子を話すようになった。
「前には出来よったのに日に日につまらんようになった」と落ち込む事も多くなった。
又、施設でみんなと一緒に計算したり漢字を書いたりした時「みんなスラスラ出来るのに自分は全然出来んかった」とショックを受けていた。
秋祭りの準備で色紙を使ってポンポン飾りを作った時も「何べん説明されても分からんかった」と言うので家でも色紙を買ってきて実際一緒にやってみたが一緒にやりながら何度説明しても「分からん、分からん」と言うのだ。
本当に簡単な作業なのに目の前でやりながら説明しても理解出来なくなってきたのかと私の方がショックを受けてしまった。
排便もスムーズにいかないと言う。
乳酸菌を服用するようになってからはほぼ毎日排便があるにも関わらず残便感がありスッキリしないと一日中気にかけてその事が頭から離れないようだ。
おまけにお腹の周りのゴムがキツイと言ってはパンツやズボンのゴムを抜いてしまうのだ。
私はその都度ユルユルに直すのだがそれでも尚ゴムがキツイと言っては抜いてしまう。歩くとずれ下がっているにも関わらずだ。
最近、認知度が落ちてきた母には説明しても理解してもらえず本当に困ってしまう。
毎日がこの繰り返しである。又、異常なほど寒がりで冬は五、六枚服を重ね着してしまう。
ベッドに寝ていても風がスウスウして寒いと言うのでベッドの周りをひざ掛け等でぐるりと囲ってみるがそれでも風が入って来るといつも言うのだ。
色々な面で母のこだわりが強くなったように思う。
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