第17話 父の突然の死
床に就きうつらうつらしていると午前三時半頃携帯が鳴った。八千代病院からだった。「お父さんの様子が急変したので来て下さい」との連絡だった。急いで母を起こし身支度をしてすぐに病院に向かった。病院に向かう途中再び携帯が鳴った。八千代病院からだったので嫌な予感がした。電話の向こうで「先程、午前四時二十五分、亡くなられました」と言われ「…そうですか。分かりました」と言うのがやっとだった。間に合わなかった。「ごめんね。お父ちゃん」と心の中で詫びた。こんなに早く逝ってしまうなんて。こんな事なら一晩中傍にいれば良かった。
病院に着くとすぐに病室に駆け付けた。酸素マスクは外されて只眠っているようだった。身体に触れるとまだ温かかった。人が死ぬってなんてあっけないんだろう。まるで夢を見ているようだった。暫くすると看護師さんが身体をきれいにするので一旦病室から出るように言われた。
病室の外に出ると現実に引き戻された。みんなに知らせなきゃ、葬儀屋にもお寺にも連絡しなくては等々、頭の中は混乱していた。悲しんでる暇などなかった。明け方まで待ってまず葬儀屋に連絡した。次はお寺に。それから、姉達、子供達、親戚、近所等々連絡を取るだけで随分時間がかかった。幸い母が元気だった頃、万が一の時の手順や連絡先等一通り作成していてくれた。しかも母からいつも聞かされていたので私はその手順通り淡々とこなしていった。遺影も生前用意しておいてくれた。お陰であまり戸惑う事なく一人でもスムーズに手配できた。
父は葬儀屋さんに一旦家に連れて帰ってもらった。入院してからは一度も家に連れて帰ってあげられなかったからだ。家の中や仏壇は、報恩講法要が二日後にある予定だったのできれいに掃除しており仏壇の花も新しく活けたばかりだった。近所の人がすぐにお悔やみに駆け付けられても慌てずに済んだ。しかも通夜も葬儀の日も晴天に恵まれた。
父が亡くなった事は思いがけず悲しい出来事だったが色々な事が良いタイミングだったように思う。葬儀、初七日、四十九日、一周忌、三周忌法要とあっという間だったように思う。父は亡くなってしまったけれど父との思い出は私の中でいつまでも生き続けている。
(二〇十六年、十二月十八日、父、享年九十一歳)
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