1-7 転生者現る②

 ズドォオオオン


 翌日、朝食をとっていると外で轟音がした。あれ? 轟音って、まさか。すぐさま衛兵が入ってくる。


「城の西にある勇者の像が破壊されました! 粉微塵になったとのこと! 」


 あれ? 昨日とほとんど同じ台詞だな。さてはあのダヴィド・キースとかいうのがまた来たのか! 


 するとまた、強力な転移魔法の中から男が現れた、俺の朝食を吹き飛ばしながら。


 そして、例によってそこから男があらわれた。若い男だ、昨日の珍妙な格好の奴と違っている。この制服は魔法学校の者か?


「あれ? 転移場所を間違ったみたいだ! とほほ・・・まあいいや。あ、おはようございます、すいません、お食事を邪魔してしまったみたいで。」


 この惨事を“すみません”の一言で片付けるつもりか! こいつは! 薙刀を向けるアベリアに武器を下げさせて、怒りを押し殺しながら質問した。


「お前は誰だ? 」


「おっと、名前を聞くときは自分から、でしょ? 」


 こんな無礼な奴から礼儀の説教を受けるとは、ああ、張り倒したい。


「……余はこの国の王、ラムレス3世だ」


「僕はクロード・マイクと言います。この世界とは違う、異世界から転生しました」


 こいつも異世界から来たのか、昨日やつとは関係があるのか? 


「クロード、ずいぶん急な訪問だが、どういった用件か聞かせてくれないか」


「いやー、間違えてここに飛んできてしまったんですよ。山向こうのマーナル皇国から転移魔法で飛んできました」


 俺は驚いた。


「山の向こうから⁉︎ 距離が近い転移魔法だけでも魔力を大幅に消費するのに、大陸を半分横断してきたのか! 」


 ん? なんだ、この感覚は、言わなくてはいけないような、誰かに言わされているような。


「はい、あれ? これってもしかしてすごいんですか? 」


 なんだか腹の立つやつだな。しかしすごい魔力の持ち主もいたものだ。どうであれこいつは害が無さそうだから、丁重にお引き取りいただこう。


「そうか、では気をつけて帰るのだぞ、これから外の騒ぎを調べに行かなくては」


「あ、すいません。あの大理石の像を壊したのも僕なんです。試しに魔法の練習をしたら、あんな事になってしまって…」


 ……頭が痛い、またこの手の者か。


 なんなのだ、異世界から来たら大理石の像を破壊する決まりでもあるのか。だいたい、魔法の練習をするにしても公共物を練習台にするというのも神経を疑う。無害そうな顔をしているのに行動が突飛で不気味だ。


 色々聞きたいことはあるが、事を荒立てるのは良くない。ここは穏便に。


「そうか、まあ、わざとで無いのなら仕方あるまい。とにかく魔法のコントロールができるようになるまであまり魔法は使わないほうが良いな。では、出口に案内しよう。おい、誰か」


 早く出て行ってもらおう。こいつがいると調子が狂う。


「すいません。ボクのほかに異世界から来た友達を探しているんです。ユキヒトというんですけど。その。どこにいるか知りませんか?」


 ……帰れと言ったつもりだったのだか、伝わらなかったようだ。もしかして言葉が通じないのか、こいつは。もっと直接的に言わなければ伝わらないか。


「そうか、もし見つけたらお前に連絡をしよう。それじゃあな。気をつけてな、元気でな」


「ありがとうございます!また来ますね!」


 もう来るな! と心に念じて追い出した。しかし困ったぞ。ほかにも異世界から来た厄介者がこの国にいるとは。そうだ、まず数を把握せねば。すぐ黒に調査させよう。

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