未来からの英華
鮭川のフレーク
第1期
1話 プロローグ 〜化け物になった日のこと〜
僕が今まで読んできた物語の始まりはいつも、主人公である誰かが幸せになって終わる。
僕の人生もそんなふうに終わるのか。
そんなの未来の自分に聞いてみないと分からない。
でも、今の僕にはそんな未来がある存在する知らなくてもいいと思う。
ただ、オメガという第3の性にこの先全ての人生を台無しにされた。
ただ、"オメガバース"だという存在でいるだけで虐待され身体中に傷が増えて、心もあの女の言葉がハンマーで何百回も殴られたみたいに響いてた、精神面も不安定でいつも首をつった時みたいに息苦しい生活を続けていた。
学校では、おしとやかで可愛くて、なんにも知らない純粋な女装男子の"紅月桜"として、生活しているけど大人の汚い言い訳、くだらない理由で傷つけられた全てが、徐々に作り上げた理想の
人前で言う本当の「私」なんて、家の中じゃ夢見た自分とは程遠い「僕」に変わり、生まれたことを常に恨み続けてきてるばかり。
息をするだけでさえも、毒を吸っているみたいに肺が重く痛く感じて、また虐げられて地獄みたいな未来に怯えていた。
あの女がいる生活に耐えきれない。
本当のお母さんに会いたい。
その意思が、僕を動かした。
ここから出ていくためには、お金が必要。
地獄にいてもまた暴言と暴力の日々なら出て言ってしまおうとその勢いで出て行った。
とはいえ、バレれば殴り殺されるかもしれない。
だから、何も言わず、夜中に家を飛び出た。
この時の僕には人を殺してお金を得るなんて犯罪行為をすることも、とにかくなんでもいいから売り飛ばして、お金を手にするなんてことも出来なかった。
犯罪はしたくないのに夜の仕事に歩きよって、それこそ夢を見た姿とかけはなれていくけど、それでもお金が必要だ。本物の感情を殺して風俗でバイトをするために面接を受けたけど余裕だった。
こんな見た目していたせいなのか、すぐに入ることが決まって、入った。けどやっぱり男が男を抱くなんてしたくない男の方が多かった。「男をだくなんて無理。」なんて言い出すやつもいたけど、それでもその少しの中に「男でもいい」なんて思って寄ってくる色んなおっさんに抱かれて気持ち悪い思いばっかり。
可愛い見た目してるから、すぐよってくる。
少しはにかめば、客がつくから余裕だった。
変なおっさんが僕の体を拘束して、時間が過ぎるまでずっと犯し続けて、気持ちよくないのにわざと
それから高校生になり、たくさんの仲間と出会った。
出会ってきて、唯一の心の救いがなんでも部だった。
けど、なんでも部のみんなには本当のことを話せていない。
こんなことをやっていると知ればみんな僕から離れていくから。
でも、まぁ高校生にしてはそこそこだと思う。
泊まる場所も、そのバイトで仲良くなった男の人の家に泊まってるから困ることは無い。
ただ、困ることと言ったらその男の人が夜な夜な襲ってくることそれだけ。
腕力がないからそれに抵抗しようとするとその男たちに果てるまで犯される。
「やめて」って叫んだらそこで気に食わないから外に追い出される。
そのおかげか、常に僕のLINEにはそういう目的で追加させてくる男ばかりが増えていった。
このままずっと、泥の中で先の見えない道を歩かされるのかな。
また今日も、誰かに家泊めてもらわなきゃ。
今日に限って、泊めてくれる人がいない。
さらに、風邪っぽい?いや、風邪と言うより喘息っぽくて、かなりしんどい。
せめて泊めてくれる人いないのかな。
頭もぼんやりする。
今回は、…仕方ない。
SNSで、誰か泊めてくれる人を募集してどうにかしないと。
募集をかけると驚いた。
絶対やりもくと言わんばかりの男たちがいっせいに声をかけてきて、これを見るとますますま呆れた。
呆れたって言っても、こんなことをしている自分のこの姿にもね。
僕が、みんなの知らない裏でこんなことしてて、バレたら見放されそう。
と思っていると、後ろから「ねーー、お姉さん。今暇っしょ!」とまたチャラチャラとした口調の男の人の怖がらせないためか優しげな声ではなしかけるこえがした。
「はい、そうです…けど。
どうかしました?」
ニッコリ笑い、理想の僕を表で演じてみせる。
そうして後ろを振り返ると、背が高い金髪のシルバー色の瞳をした服装もまさにパリピの人みたいな雰囲気。
こういう人ばかりは、今まで泊めてくれた人に限ってやる気満々なの丸見え。
「これから、遊びに行かねぇ〜?
その代わりに家に泊めてってあげるからさー?」
でも今は泊まるところがどこにもないから仕方ない。
犯されようと我慢するしかない。
頷いて、その男の人が「じゃー、着いてきてよー!」って笑う。
このまま僕は、この人に犯されるのかな。
なんて思いながら、今ままで来たことがないお店の裏通りを、2人で歩く。
ここに来るまでこのチャラチャラとしてて、喋り口調がチャラい男の人とは一切話していない。
そこで違和感を覚えた。
ほんとにこの人について行ってもいいのかな。
もしかしたらものすごく悪い人で、変なところに今から連れて行ってるってわけじゃないよね?
「あ、あの。
私これからどこに行くんですか?」
「そーだねーー。
これから俺っちの家だけど?」
「家……に向かう道にしては、こんなところ…通りますか?
それに…人気も少なくなって…」
そういうとピタリと、男の人の足が止まった。
「知ってる?
あんたみたいに易々と着いてきてくれる人めっちゃ助かるんだよねー!
食人種にとっちゃね?」
男の人がニヤリと笑って、僕を見つめる。
その一瞬がまるで時を停められたように全ての思考が止まった。
目がさっきまでのシルバー色が黒い目に瞳がギラギラと光ってとらが小動物をかるような目だった。。
そういえば、テレビでやってたな。
家出少女を狙う食人種が現れてるって。
単なる連続殺人鬼がそういう子達を狙った殺人かと思ってたけど夢とかじゃなかったのか。
やだまだ死にたくない、僕はお母さんに会うって決めたのにこんなところで食い殺されて、死にたくない。
でも、あまりの怖さに体を動かせない。
「えぇ〜、君逃げないの?
まじ〜?」
怖くて頭は全身の危険反応だから逃げろって叫び続けてたのに動けなかった。
おもちゃで遊ぶ男の子みたいにニヤリと笑うその男を目を見開いてガタガタと震えていた。
本当は逃げないと死ぬ。だけど逃げられない、だって男の人が見つめる目が小さかった時とトラウマとなっていて虐待してきた女の目と同じだったから。
あの時の恐怖が動画を再生するみたいに、頭の中を駆け回る。
見つめてほしくない僕の体が目をそらそうとした。
けど、もし目を逸らしたら僕はそのすきに殺されるんじゃないかと思って、できない。
怖いものから逃げることさえできない。
「つーまんなー。
マジで逃げろよ。その恐怖にまみれた顔したまま殺すの楽しいのに。」
つまんなそうな顔して僕に近寄る。
「なら、生きたまま食って殺すか。
あんた、そこらの男に体売って金稼いでんのになんでそんなつまんないリアクションしかできないの?」
筋肉の着いた男の腕が首に伸びる。
グッと首をつかまれ力が入り、呼吸も出来なくなってく。
僕のこと、誰も心配してくれないんだから死んだって誰も悲しまない。
バッと昔のことがフラッシュバックした。
小さい頃、僕が風邪を引いた時あの女は、僕が風邪を引いたことで移されたくないなんて言う理由で、1週間もの間監禁した。
ストレスが全部僕にサンドバックのように暴力として暴言として向いた。
トラウマが形になって首をしてめている。
ギュウギュウと締め付けられていく手に悲しみを感じた。
その記憶から悪い記憶が走馬灯のように走ってく。
学校での嫌なこと、家での誰も僕の味方になってくれないこと、オメガであるせいでたくさんの傷ができたこと。
息が苦しくなって、意識が遠のいていく。
「せめて、僕に味方がいてくれればよかったのに。」
死ぬ直前に思ったこと。
それを素直に口にしてた。
もうすぐ意識が飛んで、死ぬってところでずるんと下へと落ちていく。
「ゲホッ……ゲホッゴホッ、、、」
一瞬になって、息が吸える。
何があったのかさえ周りを見ることができなかったが「可愛そな子だねー。親にまで捨てられちったんだ。」面白がりながら言う。
「ゲホッゴホッ……それがっ、ゴホゴホッ、なんだって言うんですか。」
睨みつけた。
「いや特に?
なんか面白いなーって。」
殺されかけた体が酸素が欲しくて呼吸をさせるためにたくさんの酸素を取り込んでいく。
頭の上で男が笑っていた。
その行動にわ怒りを覚えた。
馬鹿にされることなんていつも、学校でされてばかりだしあの人がいた時なんて馬鹿にされるってレベルの言葉じゃないくらい暴言吐かれてたから嫌ってほどになれる。
なのに、「男のお前が女演じてるのが面白い」ってその男は嘲笑って言った。
なんで
好きな事だから何言われようとやってやるけど、一体なんのために僕こんなかっこしてるんだろうと頭の中こんがらがっていく。
女装して、可愛く着こなして、僕は女の子になりたい。おかしくないって考えてたはずの僕の中で、女装するのは恥ずかしくなっていく。
「じゃあ。僕は一体何が僕なんだよ。」
全てを否定された僕はまた泣いてた。
「そんなのお前が決めることだろ?」
男は言い残すと僕を残して裏通りを、1人歩いていってしまった。
この男の言葉が、壊れていく最初の合図みたいに壊れていった。
___________「おい、紅月。
今日の放課後体育館裏倉庫に来いよ。
来なかったら、どうなるかわかってるよな?」
いじめっ子に呼び出された。
いつものように逆らうことも出来ず頷く。
そしてそのあとは、あいつらのされるがままにボロボロにされる。
痛いな。なんで僕ばっかこんな思いしないといけないんだろうか。
女装をやめた僕にこれ以上ない位の心の傷。
理想の僕の仮面もズタボロになってく。
放課後言われた通りに倉庫に来たと思ったら、いじめっ子の男子達がにやにやしながら僕を見つめる。
またなにかやられるんだ。
「遅れるかと思ったーー!!」
「遅れたら、またあたしたちが教えてあげないといけないしー?
まー良くね?」
「おい、早くこっち来いよ。
話があんだよ。」
話があるとか言ってるけど、入口の前にはカメラが置いてある。
ここに呼び出されたということは、何がする気なんだ。
される前に逃げようとした。
けど、結局逃げられることなんてできず。
翔吾に1発殴られる。
それを合図にみんなが殴ってくる。
殴られ続けて、バランスが崩れて後ろに倒れる。
するとまるで計画通りに進んでいるかのように、奥で意地悪く笑う女子2人。
そして、翔吾がニヤリと笑い僕の来ている制服に手を伸ばす。
「やめ、やめてよ!!!!」
たくさんの男の人の手が僕に手を伸ばす。
ニヤつきながら、暴れる僕を抑える。
服さえ取られたと思ったら、次はカメラを回されながらたくさんの翔吾にレイプされた。
「やめて!!離してよ!!!!嫌だ!!!!」
たくさん泣き叫んで、翔吾のそれが中に挿れられた瞬間に頭の中が真っ白になってぼーっとしだして、意識が飛んだ。
動画が、勝手に公開された。
それと同時に僕の精神は崩壊を迎えた。
レイプされたことを先生に相談してもまともに取り合って貰うことすら出来ず、むしろ僕が悪いと言われ、もうダメなんだ。
それから、学校という存在が嫌いになった。
家も、僕は嫌い。
こんな僕も大嫌いになった。
なんで誰も僕の声を聞いてくれないの。
苦しんでる僕の悲鳴を、苦しむ声を。
レイプされた帰り道、1人フラフラとした足取りで家だった場所まで1人帰ってきてた。
すると、家の前であの女が見知らぬ男と2人で幸せそうにしている姿をこの目で見た。
僕の存在なんてまるでなかったみたいに。
それからわかりたくないのに悟ってしまった。
"僕が帰る場所はもうどこにもない。"
すると、どうしてだろうか。
笑えてきた。
それと同時に殺意まで湧き上がった。
犯罪者になってもいい。
あいつを殺したい。
「どうしてお前だけ幸せなんだよ。
僕が今までどれだけお前に何回何百日心を殺されてきたか……」
全てが真っ黒く染まってく。
嫌だった記憶とともに
狂った笑い声を上げながら、あの女の目の前に立つ。
「なぁ、この子は一体誰だ?」
「知らないわ。
あなた、一体……どな」
「お前が死ねばよかった。
お前もお前の全てが壊れればいいだ。」
そういった…だけだったのに。
あの女を見ながら不思議そうな顔をしてた男が、「あっ、、、あぁぁぅ!!あ!?!」と悲鳴をあげて、目の前で体のあちこちが爆発してぐちゃぐちゃな肉片に変わった。
その血があの女、僕にもかかった。
「ひぃぃ!!!!」
「お前がこんな僕に変えたんだ。
全部、お前のせいだ。」
冷たい声で言う。
女は「違う、違う!!!」と発狂しながら僕に掴みかかり叫ぶ。
「わ、、私のせいじゃない!!!
お前のせいだ、、お前が、、!!けいくんを!!」
あの女の手を掴んで、大きく見開いて発狂している声をかき消すくらいに大きな声で、叫んでやった。
「しらないよ!!!
僕が殺したんじゃない!!お前が!!、この人を!!、殺したんだろ!?」
発狂しながら僕を睨見ながらあの女は「嘘だあああああああああ!!!」叫び返して、泣き叫んでた。
いつか、何もかもが壊れるなら今壊してしまおう。
狂い、壊れて僕は暴れた。
「なんであんたが、その目を持ってんのよ!!??
椛にはなかったのにぃ!!!!!」
「訳の分からないことほざいてんじゃねぇよくそばばあ。」
ストレスがかかりすぎたのだろうか。黒い霧の幻覚がついにあの女に覆い被さる。
消えろ、憎い。
「あああああああああああぁぁぁ!?!!痛いぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
僕の高笑いにあの女の声はかき消された。
霧が晴れたと思うと、目の前には女だったはずのあちこちが溶けて人間とは程遠いくらい原型を留めていない。
その死体に手を伸ばした。こいつの幸せなんて死んでも祈りたくないけど、一応親なんだ。
ぐちゃぐちゃだったからそばに置くのには時間がかかった。けれど、静かに男だった死体に近づけて置いてやった。
こんな女でも、あんな幸せな顔ができたんだ。
僕のことを除け者にしてでもなりたかったんだろうね。
こんなことホントなら死んでもしたくない。
けど、自身の本能がそうしてやらないといけない気がした。
そうして、白かった彼の髪はたちまち血の色で黒く染まり、泣いていた顔には血で染まり、狂った。
「次はだぁれにしようかな♪」
笑っていたその瞳には、涙が浮かんでおり何を望んでいたんだろう。歩いていった。
その背後には、原型を留めていない死体が2つ。
寄り添っているように、そばに置かれていた。
この事件を後に〖純特殊能力者の異型化による殺人事件〗と呼ばれるようになった。
_____________
なぜ、私がここを警備しないといけないんだ。
確かに春汰がいるから、死ぬという気配はないがこいつが仕事をまともにするはずもない。
「ねーー、メアリーちーん。
あそこ、女の子倒れてるよ。」
春汰が、ひょうきんに指を指しご機嫌に言う。
「なんだ?女の子?」言われるがまま春汰の指さす方を見た。
そこにはゴミ捨て場に寄りかかって、眠りっている。
身体中血だらけで、頭にまで血が被って真っ黒い。
体は、ご飯は食べているのか不安になるくらいに細く、小柄だ。
目の下は、赤く腫れ上がっておりまるで泣いたあとのようだった。
さらに首には、オメガだと思われるボロボロな首輪……
これを見る限りまず放置はまずいと思った。
ずっと見つめたまんまの春汰に声をかけようとした、だが、表情が驚きに満ちていた。まるで見覚えのあるような顔をしていた。
こいつには後で少し聞かないといけないと考える。
考えるのはあとにして、そこに寝たまんまの女を起こさないように、抱き抱えると、「今すぐ、ボスに連絡入れとけ。
女の子がゴミ捨て場に寝てたとな。」という。
すると春汰は、「メアリーっちん、その子は男だよ。」と返事を返す。
そんなことがあってたまるか。
こんな見た目した男いるもんなのか?
「そんな男いるのか……」
「クオリティー高いよねー。」
なんでそんな子がこんなところで血まみれになっているのか。
ふと、脳裏に異型化を起こした能力者がたくさんの人間を殺したという事件を思い出した。
異型化を起こした人物の特徴がどこまでも真っ白い髪だった。
考えたくはないが異型化(ゴールディー化)した長い白い髪の女の子が、会場でたくさんの人間を殺した様子の動画はこの目で確かに見た。
もしこの子がそうなのだとしたら、一体なぜそしてなんのためにしたんだ。
疑問はたくさんあるが、これは本人に聞いてからの方がよっぽど良さそうだ。
「よし、巡回はこれまでだ。
アジトに戻るぞ。」
「へいへーい。
ボスに連絡入れとくよん。」
彼女を背負うと、ブツブツと呟いているのが聞こえた。
「生まれて……来てごめんなさい
僕はいらない子です。」
と呟いており、世の中とは本当に冷たいものなのだな。こんな人間さえ救えない、人の言うヒーローと一体なんなんだろうか。
_________ひとつの夢を見た。
本当の僕を見て、嫌われ誰からも愛されなくなりみんな僕から離れていって追いかけようとすると無数の黒い手が逃がさないとばかりに、足を掴んで底に沈めていこうとする。
1人になりたくないのに、その黒い手は、少しづつ沼の中に引きずり込んでくる。どれだけもがいても底へと沈んでいく。
そして、「オイデ オイデ」と僕を呼ぶ。
そこに引きずり込まれたら僕が僕じゃ無くなると思って暴れてもがいて、助けてって叫んでも誰も助けてくれない。
悪魔みたいな夢に僕はパチッと目が覚めた。
「大丈夫か、君ずっと寝てたぞ?」
知らない女の人が僕の顔を見て笑いかけた。
なんでだろうからここにいると安心する。あの地獄みたいな場所と違ってここはあの女のいる怖い場所でもなんでもないせいか、安心してウトウトとしている。
「寝起きで申し訳ないのだが、私は、メアリーという。
君の名前は、なんて言うんだ?」
「……」
寝起きで全く頭が働かず、声の主であるメアリーと名乗る女性は、闇みたいに真っ黒な瞳に藍色の髪をなびかせながら僕を見つめた。
僕は何も考えられずに何も言わず見つめる。
ようやく思考が追いついたときに名前を聞かれているんだ。と気づいた。
答えないと。
あれ、僕の名前ってなんだっけ。
名前が思い出せない。
なんで、名前も思い出せないんだろ。
そしたら悲しくなって泣いちゃってた。
名前さえも思い出せなくなってるんだ僕は。
「ごめん、、、なさい。
思い出せ、、、なくて。」
「そう……か。
じゃあ、君…、どこまで覚えてるか言ってみて貰えないか。」
急に言ってくるものだから、出来事を振り返るみたいにポツポツと言う。
僕は、虐待されていたこと。それが嫌で風俗をやってたこと。学校での酷いいじめ。感情に任せて、あの女に死ねって言ったら目の前であの女とその一緒にいた恋人さんらしき人まで一緒に死んでしまっていたこと。
それで何人もの人を殺したこと。
それから気づいたら、ここにいたことも。
最初言うのは苦しかった、泣きながら語ったけど時徐々に、心の中に溜まった全ての悪い感情が消えていくような感じがした。
「うむ、そうだったんだな。
お前も、大変だな。」
顔色一切変えないメアリーさんは、僕の頭に手を伸ばして「ありがとう、よく言ってくれた。」と撫でてくれた。
それが愛を知らない僕にとっては、嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
「じゃー、俺っちのこと覚えてねぇーえ?」
と聞き覚えのある声を耳にした。
この声は、あの時僕を食い殺そうとした……男の人。
「ひっ、、、」
力なくベットで寝てたせいでいきなり聞こえた声には恐怖を覚えた。
また、殺される。 この人も殺される。
僕のせいで。
必死に呼吸を整えようと息を吸おうとしても吸えない。
過呼吸になった途端。
メアリーさんが、ため息をついてその男の人を見る。
「お前、今度は異型化起こした奴を食おうとしたのか。」
呆れながらぎっと睨みつけたせいか、その男の人なんでだよ、と言わんばかりに「ごめんってー。」と言った。
「こいつが怖い思いをさせて済まないな。
大丈夫か?ほら、私の声に合わせて呼吸を整えられるか?」
背中をさすって、耳元で言ってくれた。
苦しい、どうやって呼吸整えればいいか分からない僕を必死に呼吸を整えさせようと手伝ってくれてる。
「ひっ、、、ヒュゴッ……ひゅっヒュウ……」
「上手いぞ、その調子だ。」
「ひゅっ……ひゅっ……」
そしたら、息をするのが苦しくなくなった。
後ろに力が抜け、パタッと布団の中に倒れていく。
「よく頑張った。
しばらく寝ていて大丈夫だぞ。
私は少しこの場を離れるが、しばらく寝てて大丈夫だ。」
「春汰、彼に何かしたら許さないからな?
殺しでもしたら、……どうなるか分かるな?」
「ハイハイ…わかってますよー」
ウトウトしていたせいで言葉が鮮明に聞こえない。
うっすら聞こえた。
メアリーさんの背中を横になりながら見送る。
また戻ってきてくれるから、それを待つように……静かに何も言わず待つ。
そうしてメアリーさんが出ていくと、僕と春汰と呼ばれていた男の人と2人っきり。
それから、2人っきり。静かになった。
「あんたも、こんなになってまで生きてるとかよーく頑張ったんじゃなーい?」
先に口を開いた春汰さん。
それから2人で部屋にいて何分たっただろうか。
この人はそう口にした。
褒めているつもりなのか、貶してるのかどっちか分からない。
けど、どこか僕を褒めてくれてるような気がして、心地よかった気はした。
「あの時、どうして殺さなかったんですか。」
僕も何をかんがえてそういったのか分からなかったけど、今会えたから聞いてみることにした。
「だって、生きてればもしかしたら、いい事あるかもじゃん。」
彼も頭を撫でてくれながら言う。
この先にいいことなんてあるのか、僕には一生真っ暗な気しかしない。
だから「僕がこの先生きてたって、いい事なんて一生あるわけない。」ぽつりと呟いた。
すると、それを聞いたのか、春汰さんが、「同じ思いしてる俺っちが言うけどそう思ってるからじゃね?」とベットの横に座って、小さく笑い言った。
確かにそうかもしれない。
けど、僕にはこの先そんな未来があるなんて思えない。
「もうそんなに思い詰めることなんてないよ。なんなら俺も似たようなこと過去に思ってたことあったさ。
そういえば、俺っちも報告書を書かないとー。ほんとめんどくさ、、、」
そう言いながら椅子から立ちがあって、春汰さんは僕から離れていく。
僕に背中を向けて歩いていく姿に、夢で見た1人になってく時にの感覚が蘇って、辛い体を無理矢理起き上がらせてベットから落ちていきながらも春汰さんに手を伸ばした。
痛みには気づかなかったけど…気づいたら、春汰さんの服の裾を握っていた。
「行かないで……僕を……ひとりにしないで……」
「え?ちょ、大丈夫??
わかった、やめるから一旦落ち着きな。」
そう言って、落ちていったのに震えている僕を見るなり行くのをやめて、僕をベットに連れていき寝かせた。
その手は暖かくて、食人種とは思えないくらい優しかった。
僕が寝てから何時間だったのだろうか。
数時間もの間寝ていたせいか、すごくぼーっとしていた。
すると、勢いよく扉が開いて見たことがないくらい怖い顔をした男の人がうたた寝していた春汰に叫びつける。
「おい春汰!!!!ここに
こちらに引き渡してもらおうか!」
「ど真面目おっさんじゃん。
おっさん…あんまでかい声で叫んでると血圧上がって死ぬよー?」
あんまりいいひとそうには見えない明秀という人は、僕を見るなり鬼みたいな形相で、睨みつけてから春汰さんに舌打ちすると、また口を開く。
「おい、こいつ異型化起こしてるくせになんの対処もしてねぇじゃねぇか!!」
あまりのうるささに耳を塞いでしまった。"
どういう意味かすらわかっていない中、メアリーさんが帰ってきた。
「まー、待て待て。
明秀殿、血圧上がってまた寝込むぞ。」
「なぁぁにが、血圧上がって死ぬだ!!
こっちはなぁ!?
お前らのせいで血圧上がってんだぞ?!」
また響く大きくて怖い声。
怖くてとっさに耳を塞いだ僕をメアリーさんは見ると、「おい、お前もうちょっと小さな声で喋れないのか。彼が怖がってるじゃないか。」と言った。
「そんなの知るかぁ!!!
お前のところのボスに呼び出されたかと思ったら今度はなんの処置もされてない
化け物、その一言になにがなんだかわからない。
僕は化け物じゃない。
だって、僕は殺されかけた側なのにどうしてそんなことを言うんだろうか。
「おいおい、お前…本人の前でそう騒ぐな。
ほら怯えてるじゃないか。」
メアリーさんが近寄っていく"あきひで"という男の人をなだめているのが視界に入る。
一向に怒りが収まる様子もなく騒ぎ続けて、鬼みたいな形相でぼくを見つめ睨む。
何が何だかわかっていないけど今僕の身に起こってること、僕が少しづつ化け物になりかけているということなんだそうだ。
ひとりぼっちだった僕はついにみんなに恐れられる化け物になってもう二度と雲ひとつもない空を見ることが出来なくなるのかな。
未来からの英華 鮭川のフレーク @Alice_andf28dks
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