　ドアを開けると優しげな声に迎えられた。彼はピンク色のフリルのついたエプロンを身に着けて、笑みを浮かべている。

「さ、早く入って」

　驚いて動けない私に、彼は私の腕を掴んで部屋へと招き入れる。リビングのテーブルには料理が所狭しと並んでいた。どれも私の大好物ばかりだ。

「大変だったね。あの口煩い部長に捕まってたんでしょ？」

　彼の言葉通り私は今日、部長に仕事のことで呼び止められてお説教を受けていたのだ。ようやく帰れると思っていた最悪のタイミングで。確かに部長はいつも口煩いが、今はそんな話をしている場合ではない。私は腕を強く振り払った。

「……あなた、誰なの？」

　きょとん、と目を丸くした男は笑みを深めた。

「やだなあ、忘れたの？君の恋人だよ」

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